第4ゲーム 宿泊代は…??
街を歩いていて、分かったことがある。
とにかくこの国は若者が多いこと。それも未成年の。
さすが遊戯の国と言うべきか、わざわざ隣国から来る子供がいるのだ。親もついでについてきてゲームをしている感じでもある。
買い物をする場所はコンビニくらいで、この国に住んでいる人のほとんどはネット注文だ。そのせいか肥満度が高いと言うが…このロリットとロレット姉妹は逆に細すぎた。
握ってみたら折れてしまいそうなほど細い。誉も細い方だが、誉は好物が甘味というだけあってまだ肉はある。
本当に食べているのだろうか?この子達の家族は?家は?なんでこんなところにいるのか…気になることだらけだった。
「旅をしている、と言うことは前はどこの国にいたんですか?」
「桜舞だよ。満開祭に行ってた」
「桜舞って言ったら、最近、画家の、『合歓木』が、現れたって、話題…」
「そうなの?!ね、ね、誉おね…お兄さんは画家なんでしょ?!もしかしてその『合歓木』だったりするの?!」
「そんなはずないだろう。ボクは『合歓木』なんかより平凡だよ」
これは勿論嘘だ。
彼は『合歓木』本人だし、実力は本物だ。
ペンネームなのは存在をできるだけ秘密にするため。
どこでどうやって描いているのかは少数にしか教えない。その少数は基本的に彼の絵に関わっている人たちだけだ。
「『合歓木』は、その容姿も、声も、発表していない。神出鬼没で、いつの間にか現れて、いつのまにか、消えていく。そんな人。そんな人が、そう簡単に、人前に出てくるとは、思わない」
「うーん、確かにそっか。わざわざペンネームで顔を出してないほどの人なんだもんね。そう簡単に会えるはずないか…」
いや、一応2人の後ろを歩いているのが張本人なんだが…
「ねーねー、お三方はどんなゲームをするの?好きなゲームは?」
「私とブランカさんはあまりやりませんが、先生はよくやっておられますよ」
「どちらかといえばアナログゲームだけどね」
「そうなんだ!アナログゲームなら、ロリットが得意だよ!ロリットはアナログゲームランキングぶっちぎりの1位なんだから!」
「な、なんで、ロレットが、自慢げなの…恥ずか、しい…」
「じゃぁ僕なんてお遊び程度だよ。プロゲーマーには勝てないさ」
「と言いながら船上カジノで1億儲けたのは誰ですか」
「1、億メラは…高い…私、の、お給料より、高い」
「アレはイカサマがありきたりだったからできた訳だよ。オリジュールの手だれディーラーだったって効いたから期待してたんだけど…一回やったら簡単に終わっただけだよ」
「相手はオリジュールの手だれだったの?!そんなの、勝てたらすっごく誇って良いのに…いいなぁ、私もオリジュール行ってみたい…」
「ロレット、多分、瑞花さんは、オリジュール行って、ない」
「あ、そっか、私たちよりお兄さんだし、何よりまだ未成年…なのに船上カジノなんかに行っても良かったんですか?」
「…船上カジノは仮面をつけないと入れないから…ははは」
全力で目を逸らし、乾いた笑い声で話も逸らした
「それより、その…『ルフラン』はどこにあるんだい?」
「…『ルフラン』は、私たちの、お家」
「家?ってことはご両親が経営してるってことですか?な、ならさっきぶつかったことを謝らせて下さい!」
「だ、だいじょう、ぶ、です。えっと…」
「私たち、色んな理由で両親はいないんだ。だから、『ルフラン』には住まわせてもらってるの。まぁ、もうプロゲーマーになってお金も貯まるから払えてるしマンションだって一室買えるんだけど…恩返しがしたいからお手伝いしながら住まわせてもらってるの。えっと、場所はあそこ。黒のキングが見えるでしょ?あそこの麓だよ!安心して下さい!オバさんもオジさんも優しいんだよ!ご飯も美味しいし!1人1泊2万円!3食お風呂付き!」
3食お風呂付きでその値段なら全然良い方だろう。
誉とブランカは野宿も慣れているし、ホテルは基本的に値段は気にしていない。泊まれたら問題はない。え?なんでそんな金持ちみたいな発言をするかって?誉が絵で儲けているからだ。
普段絵で稼いだ金は恩人のいる砂漠の国、ロサの再生のために支援金として出している。
余った分で普段角砂糖を買ったりホテル代に使ったり、甘味代にしたり…甘味代にしたり(大切なことなので2回言いました)
ちなみに銀葉も値段は気にしません。
経費で出るからです。
「それは…楽しみだね。ちなみに美味しい甘味はあるかい?」
「ありますよ!オバさんにお願いしたらいくらでもいつでも作ってくれるんですよ!」
「そう…楽しみだね」
「残念ですが師匠。今日はもうダメですよ。糖分摂取量を超えています」
「ははは…知らん」
「全く…」
「ふふ、ブランカさん、と、瑞花さん、は、仲良し」
「ロリットと私も仲良しだよ!」
ぎゅっと後ろからロリットを抱きしめるロレット。
微笑ましく、楽しそうに、微笑み合う2人を見て、誉はどこか懐かしいものを見た。
そして後ろから謎の声が聞こえた
『誉。私はいつでも…一緒にいるからね…』
「!!」
一気に後ろの向いた。
鈴のような小さくて、優しい、でも弱々しい女の子の声
誉はこの声を知っていた。
誰の声を知っていた
でも、そこには誰もいない。
幻か、幻聴か…
「………」
「?先生?どうしました?」
「…いや、なんでもない」
「おーーーーーーーーい!お三方ーーーーーーーーー!」
大きなロレットの声が響いた。
いつのまにか双子は遠くで3人を待っていた。
「…まぁ、今はこの旅を続けよう」
3人は、ゆっくりと双子を追いかけて行った
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