第3ゲーム ロレットとロリット

「ロリットったら、こんなところでどうし…てえぇぇぇぇ?!なになに?何があったの?!」


 そう言って近寄って来たのが、先ほどイカサマを疑われていた少女だった。


 薄紫色の美しく、整えられた長い髪。

 広く澄み渡る海のような、クリッとした瞳。

 猫耳のヘッドホンをつけ、そこに赤と青のリボンをつけている。

 灰色のカッターシャツに四角やバツ、丸や三角などの金色の装飾に紫色の紐ネクタイ。

 右は白と青の、左は赤と黒のパーカーを着、短パンは右が黒く、そこには青と赤のラインが入り、左は真っ白。ベルトには小さな鞄とルービックキューブがキーホルダーのようについている。左足には黒い靴下と赤い靴。右は青い靴を履いている。

 どことなく先ほどの少女と似ていた。


「知り合いかい?」

「へ、あ、えっと、はい。私の、妹です…」

「あ、こんにちは。私はロレット。こっちは双子の姉のロリット。異国のお姉さん達、大丈夫ですか?」

「ご、ごめんなさい、私、悪い子…」

「お姉ちゃん自分を責めすぎ!」


 なんとも真逆な双子なこった。

 どう見てもぶつかった方は影が薄いし、後から現れた方は陽だ。

 とにかく、話を進めるとしよう。


「ううん、私も悪かったの。前を見ていなかったから…せっかく買ったご飯が台無しになっちゃったわね。ごめんなさい…」

「い、いえ、私も悪かったので…な、なにか、お詫びを…」

「うんうん、私がお姉ちゃんに頼んだんだもん。1人でいかせちゃった私も悪いの。だから、お詫びさせて欲しいな」

「え…でも…」


 そう言って銀葉はチラッとこっちを見てきた。恐らく助けを求めているんだろう。

 誉は軽くため息をつき、双子の方を見た。


「なら、この国の案内を頼めないだろうか?僕たちは初めてこの国に入ったからね。見た限り、妹さんの方はなかなかの実力者だろう?」

「!もしかして、さっきのゲーム見てた?」

「見てたというか、イカサマを疑う阿呆の声が聞こえたからね」

「へぇぇ、そっか!分かった!国の案内は任せて!私たち、生まれも育ちもこの国だから!えーっと…」

「僕は誉。瑞花誉だ。緑髪のはブランカと猫のチルベ。メガネは銀葉だ」

「ブランカです。よろしくお願いします」

「銀葉です。さっきは本当にごめんなさい。後で食事でも奢らせてね」

「誉お姉さんと、ブランカお姉さん、銀葉お姉さんだね!改めまして、私ロレット!15歳!一応プロゲーマーです」

「私は、ロリット。同じく、15歳、プロゲーマー、です」


 元気に挨拶してくれる。

 だがなぜかブランカと銀葉は誉を見つめ、誉はまたか…という顔で頭に手をやった。それを見て慌てる双子。


「え、どうしたんですか?!私、何か間違えましたか?!」

「言っちゃいけないこと、言った?」

「あぁ、いや、違うんだ。うん、これはボクが悪いから…まず、敬語はいらないよ。少なくとも年齢は近いから」

「へ?誉お姉さんって、いくつなんですか?」

「君たちと一個差」

「ってことは…16歳?!うそ!もっと上かと思った!」

「人は、見た目に、よらない…決めつけちゃ、ダメ、だね…」

「あと、ボクは男だから。お姉さんじゃない」


 そこで完全に2人の口が止まった。

 まぁ、無理もない。

 誉は普段から女性に間違われる。その確率は99%。残り1%は本当に勘が鋭い人くらいだ。

 髪は長く、肌も白く、華奢な体に女性のような声。見た目だけでなく声まで女性のようだともうそれは女性にしか見えなくなってくる。

 今までに何度間違えられたことか。何度もありすぎて数える気もなく、そこまで気にしていないが、ブランカが知っている限りでは、出会った頃はすぐに否定していたが最近はまだ否定するのが遅くなったと思っています。

 そう考えたって信じられそうにない誉の発言に双子は声を出せないままだった。

 はぁっとため息をついて、2人に言った


「僕が本当に男なのか疑問なんだったらこいつらが証言してくれるはずだ。それに、クロスルードゥスじゃぁプレイヤー情報は見れるんだろ?確認したらどうだ」

「あ、そっか!えーっと、プレイヤーステータスオープン!」


 そういうと誉と双子の間に透明かつ小さな電子版が現れた。そこには携帯から出した公開可能情報がまとめられていた。


「ふむふむ、瑞花誉さん、性別…本当だ、男だ。16歳で…職業は旅人兼絵師兼錬金術師?多すぎない?よくこんなに職業持ってるね。で、出身は…アブソリュート観測所?ってことは…誉お兄さんアブソリュート人の純血なの?!」

「別に驚くことなんてないだろ。ただが純血ごとき…」

「驚き、ます…アブソリュート人、ロサのリヤーフの民より、少ない。その上、純血は、もっとレア。ゲームで言えば、UR?LRくらい」

「そうですよ!お二人の言う通りアブソリュートの純血はどこを探してもそうそう見つからないんですから!」


 なぜかその話に銀葉まで乗っかってきてしまった。

 アブソリュートは現在猛吹雪に囲まれ音信不通となった国。現在は巨大な壁に守られ、観測所が建てられている。誉の『前世』である大錬金術師が亡くなってから発生した吹雪にため発生から何年も経っている。そのせいかやはり生き残りは少なく、アブソリュートの純血などそうそういないものだ。驚くのも無理はない。


「へぇぇ!そうなんですね!えへへ、すごい人と知り合えたね、ロリット」

「そう、だね、ロレット」

「まったく。くだらない生まれの話は置いておいて、案内、頼めるか?できれば先に宿泊施設に行きたいんだが…」

「それならお任せくださいませ!とってもいい宿がありますよ!」


 ニコッと2人同時に笑った。

 どうやら期待していいようだ。


「ではお三方、着いてきてください!ホテル『ルフラン』へご案内いたします!」

「…ます」

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