第25話 怪しい影 旅の再開

「『桜舞新君主誕生日!神と人が協力しあう国づくり』『5500億で落札!新作・龍は桜舞にて父を待つ』うん、桜舞騒動はどうにかなったみたいだね」

「はい。ですが捕まった元老派の家臣と衛兵たち全員が牢獄で殺されていたそうです。何より、あの晴茂という人物がいなくなっていたそうです。多分…」

「うん。偽名な上に姿も偽って。魔術で元老に自身の孫だと誤解させていた。完全に裏があるよなぁ」


 桜舞が元老どもの手から解放された頃、誉とブランカは次の国に向かうために桜舞最大の船に乗っていた。

 次の日に出た新聞に載っていた桜舞の騒動についてと『合歓木』の新作についてを見ていた。

 だがやはり自身の絵がいくらで売れたかなど、どうだっていいようだ。

 あの騒動の後、命からあられを通じて手紙が来た。

 その内容はこうだ。


「なんでお主は何も言わずに出ていくんじゃ!絵が完成したと思ったら父上の空間が消えるのも確認せずに出ていきよって。まったく。して、緊急事態が起きたんじゃ。まぁ、それについてはこちらでなんとかするが、情報が欲しいだけじゃ。お主らは旅をしておるからの。変な情報も手に入れられるじゃろ。

 さて、本題じゃ。元老派の奴ら全員牢獄に閉じ込めたんじゃが全員殺されてもぉた。よりによって晴茂とかいう元老の孫が消えよった。何より戸籍上にやつの名前はなかったし、恐らく偽名じゃ。監視魔術が使えるほどじゃから姿も屈折魔術で変えておるんじゃろ。去った痕跡もない。蛙生翠雨殿にも頼んで調べてもらったけどみっからんかった。一応神同士で通信が取れるから他の神にも注意するように言っておいたから、多分見つかるじゃろ。とにかく何か情報を掴んだら送ってくれ。頼んだぞ。

 それと、今回の件は世話になったの。いつでも来るといい。桜咲嬢も待っておるぞ」


 なんとも面倒くさいことになったものだ。


「こんなことならあの時チルベも一緒に連れて行かせたら良かったぁ…くそぉ」

「過ぎたことはしょうがないです。それよりも、皆さんが無事で良かったです。師匠の絵もしっかり落札されましたし…次はどこにいく予定なんですが?私には何も教えずに船に乗りましたが」

「うーん、決めてない」

「だと思いました」


 誉とブランカの旅は自由気ままだ。

 その時の気分で選ぶ。

 だからこういう船に乗っている時は本当に自由だ。

 でもそれを2人とも楽しんでいたりする。


「ま、自由気ままにいこう。まだまだ時間はあるんだからね」


 うんしょっと備え付けのソファから立ち上がり、部屋の扉に手をかけた。


「次はどんな真実が待っているのか、楽しみじゃないかい?ブランカ」

「勿論です。師匠といれば必ず本の向こう側をしれますから」



 誉とブランカはまた次の真実を明かしに、ゆっくりと旅路を進み始めた。


        龍は桜舞にて父を待つ 完

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