第15話 地上 龍華神社 監視
何時間ぶりの地上だろうか。
朝っぱらから行われていた満開祭は日が沈み始めたにもかかわらず人でいっぱいだ。
そこからずーっと離れた龍華神社の鳥居が歪み、そこからいきなり人が6人も出てきた。
それに驚いた神主と巫女だが、すぐに命に姿を見てその場に膝をついた。
「これはこれは桜華命龍姫さま!お帰りになられたのですね」
「龍姫様。一緒に出てきたそちらの方々は…?」
それは当たり前の質問だった。いくら何でも神がこの人数を連れてきたのは初めてだったし、驚きを隠せない。
命は「うむ」と笑顔になり二人にこたえた。
「儂の客じゃ。すまぬがこやつらを泊めてやる場所を用意してくれぬか?それと…この間来た親娘らしき人物がおるじゃろ。2人が今おる場所に案内してくれんか。ちと急用があっての」
「かしこまりました。直ちに準備させます。親娘の方はこちらに。ご案内します」
神主はアイコンタクトで巫女に家の準備をさせ、すぐに歩き出した。
皆はそれについて行く。
本当は怒りで気持ちがいっぱいなのだろうに、命は普段通りの振る舞いをする。
信者である人々を怯えさせたくないからだ。
その姿を見て誉は凄いなと感心した。
恐らく誉ならそんな状態になれば少なくとも大暴れしないと気が済まない。
緑と知識の国、コネサンスでも改革があった。
勿論そうなったのは誉が絵を描いたからだ。だが改革の前には革命への反乱が起こる。そうなった理由は誉が怒りのあまり大暴れし始めたものだから国民が力を合わせ国を叩いたのだ。
誉はエレンだった時から普段滅多に怒らないものの、いざ頭に血が昇ると大暴れしないと気が済まない性格だ。エレンだったことは怒りのあまり山を丸ごと消し去ったほどだ。これに関しては夜中にやったため一晩にして山が消えたと世界中で大騒ぎになったほどだ。
いざという時に感情を…怒りをコントロールできないのは自分自身でも本当に悪い癖だと自覚している。
自分とは違う、見た目は完全に彼女の方が幼く見えるがやはり年齢というものは裏切らない。彼女の方がよっぽど大人に見えた。
龍華神社の周りには縁を描くように家が点々と建っている。
神社と比べれば立派なものではないが、人が暮らしていける程度の家だ。
聞けばこれは命が作ったものらしく、彼女の信者たちが住んでいる。
親娘は集落の最南端にある家に住んでいるらしい。なんでも親がそれを望んだからだそうだ。
「多分、監視魔術の効果範囲外がそこなんだろ」
「監視魔術?」
誉の呟きに影冥が反応した。
だがそちらの方は見ずに顎に指を当て、頷いた。
「僕は本からの知識だから曖昧だけど、ブランカならはっきりしてるんじゃないかい?」
「はい。監視魔術は闇属性の応用です。恐らく影冥さんの実力なら少し練習すれば使えるかと。監視魔術に範囲には限界があります。それは魔力量が関わっており、例えとして、魔力量を1〜100として考えてみます。1の人が使えば範囲は精々10mほどでしょう。次に10の人が使えば範囲は50mほど。50になれば100mになります。100…最大値であれば精々50kmほどでしょうか。コネサンスの研究では世界最高量を持っていたフォーチュンリングの魔術師でも世界最小面積の国であるこの桜舞の全体に監視魔術を張ることは出来なかったと論文で発表されています。なので…この集落届くほどの監視魔術は、世界最高量の魔力と同等のものを持っていると思われます」
すらすらとブランカは噛むことなく説明を終える。
流石の知識量と言えるだろう。
だが残念ながら誉の周りにはこれ以上の知識を持つ猛者がいる。少なくともその本の、何ページ何行目何文字目の文字を当ててもらうとしよう。それを考えることなく一発で当てられる奴がいるのだ。
誉は「さすがだな」と一言言った後にすぐに本題に戻った。
「恐らく、国民の動きを見るだけでなく、龍華神社に人々や桜舞君主が逃げ出さないようにと張ったものだろう。結界の中心位置は桜舞の城。その距離から考えれば最南端が範囲外なんだろう。でもこれは僕の予想だ。もしこの予想が合っているのなら…」
ザッと誉の足が止まる。
いつのまにか神主はここですと言わんばかりに家の前に立ち命に道を譲っていた。
瓦屋根に漆喰の壁。引き戸には桜の木が使われている。
人が住んでいる気配はないが、ここがその家だというのなら間違い無いだろう。
「ここに、桜舞君主とその姪っ子がいるはずだ」
命は頷きトントントンと3回、扉をたたいた。
だがすぐに出てくることはなく、何秒か沈黙があった。
そして中から「誰ですか」と幼い声がした。
「龍華神社の命じゃ。お主らに聞きたいことがあるんじゃが、開けてもらえないだろうか?」
そしてまた少しの間沈黙が続いた
まぁ、警戒しないわけがないだろう。
こんな大人数で出てきてしまっているのだから。
だれもぐうの音をあげずじっと待っている。
そこから1分ほど経ってからだろうか。ガラッと引き戸が開いた。
そこからひょこっと顔を出してきたのは、ブランカやあられが言っていた容姿と一致する少女だった。
桜色の髪色にさくらんぼのような瞳。
命より少し大きいくらいの身長。
この少女こそが、現桜舞当主の姪っ子。
幽閉の姫、邑楽桜咲だ
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