第14話 二人の関係 予想
「つまり、その角生えたちぃさい子が神の娘で、龍昇桜は神の亡骸。そして桜舞君主とその姪か。こりゃぁ今回も大作になるんとちゃう?先生。コネサンスで暴れ回ったばっかやっちゅうのにそれ以上の大騒動を起こすつもりか?」
全ての成り行きを聞いた翠雨とあられ。
翠雨は理解しているがあられはやはり理解し難いのだろう。
「あのさ、翠雨さん。いつも僕がやらかしてるみたいに言わないでくれる?僕は絵を描くためにこうやって真実を解き明かしてるんだよ。別に大暴れしてやろうって気はないんだ」
「いーや、毎回絵を描くたんびに大事になっとるやないか。よっぽどストレスが溜まっとるんやろ。どれ、今度食事にでも招待してあげるわ」
「じゃぁその時は
「ちゃっかり高いとこ望んでくるやん」
誉と翠雨は話した通り元々、依頼主と専属配達員の関係だ。
その分仲もいいし、よく一緒に食事もする。
影冥の目の前で愚痴も言う。
誉が誰かのことを「さん」と呼ぶのは基本的に初対面の人か彼女のことだけだ。
誉も影冥もとにかく口が悪い。
基本的にブランカの教育上悪いかと思い普段は控えているが本当は口が悪い。
だが彼女はそれ以上に口が悪いし、何より方言が出て余計にそう見える。
だが根はそこまで悪くないし怖い人物ではない。
本当は優しいし、頼れる上司。会社内では怒ることはないし、怒ったとすれば、それは影冥とその両親に対してだけだろう。そのせいで怖いイメージがあるらしい。
ちなみに摩多羅堂全社員に対して行われた『上司にしたい人は誰?!全社員アンケート!』では堂々の一位。(ちなみに影冥は優秀すぎで殿堂入り)
何も言わなくても仕事をするし、困っていたらすぐに助けてくれる。社長よりも信頼度の高い人物だ。
「とにかく、今から邑楽桜咲に会いに行くってことだろう?なら早く行ったほうがいいんやないか?」
「そうなんだけど、あの雰囲気を壊すことは僕にでもできませんよ」
「ん?あぁ、あれはあたしにも無理やな」
2人のことをほったらかしにして4人は4人で何やら話で盛り上がっていたようだ。
暖かい雰囲気のあの場を崩そうものならすぐさま殺してやると言わんばかりにチルベがこちらを見ている。
なんとも恐ろしい猫だ。
だがなんとしてでも今日中に桜舞当主と思われる人物には会わなければならない。
「それより、先生。銀葉ちゃんから伝言預かってるんやけど、聞く?」
「どうせ『桜舞に行くと言うのなら事前に連絡してください』だろ」
「よぉわかっとるやん。何で連絡したらへんねん。この間まで別の場所におったのにいきなりいいひんくなるから困るっていっとったで?あんまり銀葉ちゃんいじめたらんときぃや?」
「虐めてるつもりはないんですよ。ただ、何と言うか、彼女はいじりがいがあると言うか、何と言うか…」
そう、現在誉の絵をオークションに出したり、彼の今まで描いた絵を冊子にしたりとしているのが担当の
自由奔放な誉は気づくともう別の場所に向けて足を進めている。そんな彼が今どうしているかを確認するためにいつも次の行き先を連絡するように頼んでいるのだが、連絡が来るのはたったの30%ほど。そのためいつもそこらじゅうを駆け回っているのだ。
影冥にもいじられることはあるが、銀葉は影冥に文句や説教を言える摩多羅堂にいる2人のうちの1人のため逆に説教で返すこともある。
翠雨は誉の頭に軽くチョップをかまし、苦笑いで「やめてやれ」と言う。
それに誉も苦笑して、すぐに表情が暗くなった。
そして真剣な眼差しで『鱗月の湖』を見つめ、裸足でジャブンと水に入り、桜のたつ陸地に向かってある水に隠れた道を歩く。
「…人には、魔力が存在します。ですがそれは2属性まで。ですがその国のトップやその家族には3属性以上現れる。その中でも現桜舞君主は水、風、光、闇の4属性を操る天才とも呼ばれています。そのうち水、風、闇を使えば束縛魔術の上位互換、封印魔術を使うことが可能と聞いたことがあるんです。恐らく、その魔術が水龍神の魂を束縛しているしめ縄に込められているんだと思います。でも、それだけで命が『ドス黒いの』と言うはずがないんです。じゃぁそれは何かと考えてみたんです。僕は魔術が使えません。先ほどまでは人がなせる上での『予想』ですが、ここからは完全に人がやってはならないことを踏まえた『予測』になります」
「…その予想ってのはなんなんや?まさか錬金術か?」
だがそれには普段の顔に戻って否定した
「錬金術ではそこまでできませんよ。錬金術は創造ですから…錬金術が蘇生を禁忌としているように魔術でも使ってはならない、やってはならない黒魔術というものが存在しますよね?そしてその黒魔術は闇属性を持っているものにしか使用は出来ません。本で読んだ限り、黒魔術は自身の血を使いその魔術の効果を高め、支配することができる。ではもし桜舞君主がこの黒魔術を使い、束縛・封印魔術の効果を高め、水龍神の魂をその場に留めるよう支配している…もしかしたらその魂を意図的に怨念を持つようにさせている…となれば、僕としては完全にこの事の裏には家臣どもが何かを企んでいるのかと確信できます」
「そうなりゃ、その家臣どもが何を企んでいるのか、予想はできてるっちゅう事やろ?」
誉は木の下に着くと、翠雨の方を振り返り、こう言った。
「家臣どもは、水龍神を『祟り神』にしようとしているんですよ。わざと、ね」
「父上をわざと『祟り神』にするじゃと?!そんなこと許されるはずがないじゃろう!桜舞が滅び、この地には永遠に人が住めなくなる!そんなもの、あってはならない!」
話を聞いていた命が怒りに満ち、目に涙を浮かべながら誉にどんどん近づき、叫んだ。
命の言うことはごもっともだ。
『祟り神』になれば自身の恨みを晴らそうと全てを闇で覆い尽くし、全ての命を喰らい尽くす。最悪の場合には桜舞だけでなく他国にも影響が出てしまうだろう。
誉は頷き、命に言う。
「だがこれは僕のただの予想に過ぎない。全ては、桜舞君主に直接聞きに行こうじゃないか」
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