第2話『前世』 真実

 誉にはいくつか秘密がある


 その中の一つに、彼には『前世』というものが存在し現在は2度目の人生を送っている。


『前世』は雪と氷の国・アブソリュートの大錬金術師だった。

 ある日幼き王女が発令した『錬金術師殺し』にて公開処刑されたのを最後に『前世』の記憶は終わった。

 ギロチンが首に叩きつけられ首が落ちた記憶はある。だが次目が覚めるとそこはもう瑞花誉としての人生が始まっていた。


 そんなこんなで成長した彼は前世の記憶をはっきりと覚えている。


 世界一の実力を持つと言われている大錬金術師だったため各国を飛び回り多くのことを成してきた。

 だからこそだろう。『前世』の彼には大量の情報網があった。

 その頃の知識を活かし『今世』では生活をしている。


 ただ一つ問題があるとすればその情報網は広く深い。

 そのせいか本来一般人が知ってはならない禁忌の話なども入ってくるわけだ。

 それだけを聞けば嘘ではないかと疑うだろうがそんなはずもなく、その話の真偽は『前世』の時に調査済みなのだ。



 多くの人々が龍昇桜に気を取られている中、誉とブランカは人がいない、別の場所に向かっていた。

 地元の人々はほとんど金儲けのために祭り会場に行っている。ここからなら話しても問題ないだろう。


「ブランカ。君の言った間違いではない。だがそれは誰かが意図して広めたフィクションに過ぎない」

「間違いじゃないのにフィクションなんですか?」

「そう。水龍神が神界に昇る。その姿を見て名を決めたというが、肝心の水龍神は今、どこにいる?今もなお、あの社に閉じこもっているのか?そんなはずはない。年に一度神界に行っているのならその姿を見るものは多々いるだろう。だが現実はどうだ?毎年新聞に載ってもいいほどの情報なのに載ることはない。じゃぁもう一度聞くぞ。水龍神は今、どこにいる?」


 ブランカは深く考えた。

 姿を見せない水龍神。

 神界に行く姿は見られていない。

 となればこの国の人々もその姿を見ていない。

 本で見た水龍神は社よりも、龍昇桜よりも大きく美しい。

 薄紫色を帯びた白銀の鱗を纏う水の神…


 ふとブランカは思い出した

 師匠から貰ったカメラの存在を。

 バックから取り出し水色のチェキ。

 これは誉がブランカのためにと特別に作ったチェキだ。

 ただこれはただのチェキではない。

 誉という大錬金術師の生まれ変わりがその知識を使って作った物だ。仕掛けがないわけがない。

 このチェキは撮った物の真実を映し出す。


 ブランカはすぐにチェキを構えて龍昇桜を撮る

 ジーーっとすぐに出てきてすぐにチェキが撮った景色が映し出される。

 それを見た瞬間普段全く表情の変わらないブランカでも驚かずにいられなかった。

 誉はやっぱりという顔で飛んできた花びらを器用に掴み、薄紫のそれを直ぐに飛ばした


「水龍神はすでに死んでいる。あの桜の木はその死骸だ」

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