ただ、犬の句

豊島夜一

ただ、犬の句

雪解けてはじめて笑う子犬かな


注射耐え突っ切る犬の風光る


うららかな日和に撫でる犬の腹


ふくらめる時だけ吠える石鹸玉しゃぼんだま


五月晴しなやか伸びる犬の尻


虹の果て見つめる犬の足は泥


夕立に上目遣いの犬と寝る


犬そっぽ金魚掬いのおまけ飼う


くちなわに喧嘩仕掛ける犬を抱き


星月夜ほしづきよ煌煌とする首輪去り


犬じっと野分に乱れた髪見つめ


犬も寝てすることもない夜長かな


天高し集める毛玉換毛期


紅葉濃し群れるはぐれる犬広場


落葉踏む音か匂いか犬駆ける


老犬がじいじを連れて凩吹く


正月やいとこの傍に生える犬


雪だるま鼻突く犬のくしゃみかな


ストーブにカレーを載せて犬逃げる


愛犬の思い出託す花筏はないかだ

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ただ、犬の句 豊島夜一 @toshima_yaichi

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