第7話 町長 喫煙開始

魔女がノアをオケアニスに連れて行った日から3日後の昼、魔女たちはヘルメースに帰ってきていた。魔女は家に帰る前にミサのお店へと足を運んだ。


 「ミサ~いるかい?」


 「あら、魔女様帰ってきたのかい。おかえり。」


 「えぇさっき帰ってきたのよ。それより聞いてよミサ。ノアが遂に私の事ママって呼んでくれたの。最近まであ~う~しか言えなかったのに。この子は、天才かもしれないわ。」


 「魔女様の親バカ具合が順調に進んでて嬉しい限りよ。見た感じノアの楽しかったようね。あぁ、それと魔女様は聖女様をみて驚いたんじゃない?ずっとこの町から出てなかったから変わってたのも知らなかっただろうし。」


 「そうなのよ。アルがまだ聖女しているかと思ってたけど、別の子がしていてびっくりしたわ。」


 「まぁこれを機に引き籠ってないでいろんな場所に出かけなさいね。それと、町長が会いたがってたわよ。出来ればノアと一緒にだって。」


 「え~。私、あのじいさん暑苦しくて苦手なんだけど。」


 「そういわずに行ってきな。荷物とコムギは一旦家で預かるから。」


 「なんでコムギも?」


 「忘れたのかい?町長は犬アレルギーでしょ。もうおじいちゃんなんだから今アレルギー症状が出たら大変なことになるんだから。ほら、せっかく町にいるんだから家に帰る前にちゃちゃっと行ってきな。」


 「はいはい。じゃあコムギをお願いね。行ってきます。」


魔女は、コムギと荷物を一旦ミサに預けて渋々町はずれの丘の上に建っている町長の家へ向かった。


 「はぁ~やっと着いた。地味に町から遠いのよねこの家。じいさ~ん。来てあげたわよ~。」


魔女は町長の家に声をかけ呼び鈴も鳴らしたが、反応がなかった。


 「いないのかしら?呼んどいてそれはないわよねノア。」


 「う~。」


 「あっ確か、最近町長家庭菜園にハマってるってミサが言ってたわね。ってことは裏庭かしら。80過ぎたじいさんがよくやるわね。」


魔女が町長の家の裏に回ると、そこには汗だくになりながら楽しそうに桑で土を耕している町長の姿があった。


 「いや~やっぱり汗をかくのは気持ちがいいのぉ。作物も作れて健康にもなれる。まさに、一石二鳥ってやつじゃのぉ。ガハハハ。」


 「いるなら返事しなさいよ。脳筋じいさん。」


魔女は、農作業していた町長の後ろから後頭部めがけて手刀をした。


 「痛いのぉ。ってまーちゃんじゃないか。で、そっちが噂のノアか。よく来たな。」


 「まーちゃんって呼ぶなって言ってるでしょ。それに、よく来たなじゃないわよ。呼んだなら家の中にいるか返事しなさいよ。」


 「悪い悪い。農作業が楽しくてついな。まぁせっかく来たんだから茶でも飲んでいきなさい。」


 「まぁ、せっかく来たんだしそうするわ。」


魔女と町長は家へと入り一緒にお茶を嗜んだ。


 「じいさん、お茶入れるのうまくなったわね。前は苦みしかないお茶しか入れられなかったのに。」


 「前っていつの話をしとるんだ。妻に先立たれて10年たつ。それだけたてばお茶を入れるのうまくなるどころか農業まで始めるわい。」


 「それもそうね。それより、今日呼んだのはノアに会いたかったから?」


 「そうじゃ。だって、ミサからまーちゃんが子供を拾って子育て始めたって聞いてどんな子なのか会いたかったけど、まーちゃんの家に行くのは山の中で流石にきついしいつか会わせに来てくれると思ってたのに一向に来る気配がなかったからミサに頼んで呼んだんじゃよ。」


 「悪かったわよ。いろいろとそれどころじゃなかったし。」


 「まぁこうして会いに来てくれたからいいわい。なぁ、ノアって人見知りはしないのか?人見知りしないなら抱っこさせてくれないか?」


 「大丈夫と思うわよ。他の人に抱っこされた泣いているところ見たことないし。」


町長はノアを抱っこするために魔女のもとへ行き、手を伸ばした。だが、ノアは魔女の服を掴んで話そうとしなかった。


 「あれ?ノアく~ん。おじちゃんに抱っこさせておくれ。」


村長がさらにノアに近づくと遂にノアは泣き出してしまった。


 「どうしたの?抱っこ拒否どころか泣く事も珍しい。」


魔女がノアをあやしていると、町長から香ってきた香りをかいであることを察した。


 「じいさん。あんたまたタバコ吸ったでしょ。しかも、1時間前くらいに。」


 「いや~あの~・・・。なんでわかった?」


 「あたしが何年薬草とか植物に触れあってきたと思ってるの?タバコの匂いくらい簡単に嗅ぎ分けられるわよ。何年前にタバコはやめなさいって医者に言われてるんでしょ。それに、赤ん坊に会う前に吸ってんじゃないわよ。」


 「すみません。畑仕事の合間に1本吸いました。」


町長は申し訳なさそうに椅子に座りなおした。


 「もぉ~ノアを抱っこしたいならタバコ辞めなさい。ノア、タバコとかの匂いが強いもの苦手なんだから。」


 「そうじゃな。ノアを抱っこできずに死ぬのは嫌じゃからな。よし!今日から禁煙じゃ。」


 「うんうん。そうしなさい。それじゃあ。」


魔女は町長に向かって掌を上に向けて差し出した。


 「なんじゃ?この腕?」


 「何ってまだ持ってるでしょタバコ。このまま持ってたらじいさんの性格上また我慢できずに吸い出すからこっちで処分しとくわ。」


町長はその場で5分くらい葛藤し、魔女にタバコと煙管を渡した。


 「ノアを抱っこするためじゃ。後悔はない。」


 「その意気よ。まぁでも、最初のうちはつらいだろうからはいこれ。」


魔女はノアを一旦ソファの上に寝かせ町長に何かが入った小さな麻袋を渡した。


 「なんじゃこれ?」


麻袋の中には棒の付いた飴玉が入っていた。


 「最近、じいさんみたいに禁煙したいけど続かないからどうにかできないかって相談されたの。それで、その対策で作ってみた飴よ。タバコを吸いたくなったらその飴を舐めなさい。リラックス効果のある物質が入ってるから喫煙欲を抑えられると思うわ。」


 「ほぉ、すごいな。何個でも舐めていいのか?」


 「たくさん舐めても人体に影響はないけど、目安は1日3個までね。っていうかミントとか使ってすっきりさせるような味にしてるからそう何回も食べられないと思うわよ。とりあえず、1か月想定分渡しておくわ。1か月もたばこの匂いも薄れてノアを抱っこすることができると思うし1か月後に新しい飴を渡すから感想聞かせて。」


 「そうか。ありがとう。試させてもらうよ。」


 「えぇ、頑張って。それじゃあ帰るわね。ノアも寝ちゃったし。私も帰ってきたばっかりだから疲れたわ。」


 「悪かったのぉ。じゃあまたの。」


 「またね。お茶ごちそうさま。美味しかったわ。」


魔女たちは町長の家を後にして、ミサのもとへコムギと荷物を受け取り家へ帰っていった。


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不器用魔女の子育て記 ゆうさん @kjasdbfcluink

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