第6話 初めてのママ
加護の儀が終わった魔女たちは大聖堂の応接室で一息ついていた。
「そういえば、アナテって今いくつでいつ聖女になったの?」
「あっ言ってなかったですね。私は今年で17になります。聖女には15歳の頃になりました。それまでは、先代様に神聖魔法を教わりながらシスターをしていました。」
「成程ね。若いのにしっかりしてるわ。気にしてたら申し訳ないけど、なんで髪を伸ばしているの?男性で長髪ってあまりいないし邪魔に感じない?」
「あぁこれですか?確かに最初は邪魔に感じましたが、シスターたちが綺麗だから切らない方がいいって言われまして。それに、毎日楽しそうに私の髪を梳いたり結ったりするのを見たら切れなくて。」
「そう。」
「それにしても、ノア君ってすごいですね。」
「ノア?」
「はい。気づいてないんですか?ノア君の魔力量ですよ。ノア君の魔力量私と同等かそれ以上ありますよ。自分で言うのもなんですが相当多いと思います。」
「へぇ~そうなのね。じゃあ将来はそっち系の職業に就くのもいいかもね。まぁ、育てている身としては元気に育ってくれることが一番の願いなんだけどね。」
魔女は腕の中で寝ているノアの頬を優しくなでた。その後、少しの間雑談に花を咲かせた。
「魔女様は本当に何でも知ってるんですね。知識量がすごい。」
「まぁ何百年も生きれば自然とね。」
「あなたたち今日はどうするんだ。すぐに帰るのかい?」
「いや、明日の朝にこっちを出ようかなって。初めての遠出だしノアにとっていい刺激になるかもだしね。それに、コムギも一回思いっきり遊ばせてあげたいし。」
「そう。それなら町の北の方にドッグラン付きの広場があるから行ってみな。遊具もいっぱいあるし、コムギも喜ぶでしょ。」
「ありがとう。そうするわ。じゃあねアル、アナテ。色々と大変だろうけど頑張ってね。」
「はい!またいつでもいらしてください。」
魔女とアナテは握手を交わし、魔女はその場を後にした。
大聖堂を後にして数十分町中を散歩した後、魔女たちはアルミスが言っていた広場にやってきた。
「結構広いのね。まずはドッグランに行こうか。」
「ワン!」
コムギは取れそうな勢いで尻尾を振り、気持ち速足でドッグランへ向かった。
「そんなに急がなくてもドッグランは逃げないわよ。」
ドッグランに着くと、コムギは走りたそうに魔女のほうを見つめた。
「はいはい。本当に走るのが好きだねぇ。今外すからちょっと待てね。」
魔女がコムギのリードを外した瞬間、コムギは全力で走り出した。
魔女は、近くのベンチに腰掛けて広場を眺めていた。ノアは、近くで飛んでいた鳥に興味津々で指をさしながらじっと見つめていた。
「あ~あ~。」
「どうしたのノア?あ~あの鳥が見たいのね。ちょっと待ってね。」
魔女は指笛を吹いた。すると、近くを飛んでいた鮮やかな青色をした全長15㎝程度の水鳥が魔女の指に止まった。
「この鳥は、ミナモドリって言って綺麗な水があるところにしか生息しない鳥よ。小さいし成鳥になったばかりかしらね。」
「あ~。」
ノアはミナモドリを食い入るように見ていた。少しして、ミナモドリが魔女の指から飛び立つとノアはキャッキャッと嬉しそうに手を叩いた。
そこから魔女とノアは、広場にいる動物観察を楽しんだ。30分後、ドッグランから満足そうな顔をしたコムギが帰ってきた。
「お帰りコムギ。楽しかったかい?」
「ワン!」
「それはよかった。それじゃあ帰ろうかね。」
魔女は外していたコムギのリードを付けるため一度ノアをベンチに座らせた。座らせた瞬間、ノアは泣き出しそうな顔をして魔女のほうに手を伸ばして小さな声で喋りだした。
「あ~う~。マ~マ~。」
突然のことで魔女は驚いてノアの方を振り返った。
「ノア。あなた今ママって。ママって言った?」
「マ~マ~。」
魔女はノアが今にも泣きだしそうであったため急いで抱っこした。
「コムギ。もうママって言えるようになるなんてこの子天才かもしれないわ。」
魔女に抱っこしてもらったノアは満面の笑みをしていた。
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