第5話 オケアニスの聖女
ノアの加護の儀を受けるためにオケアニスへとやってきた魔女たち。通された部屋にやってきたのは、15歳くらいの若い聖女と修道服を着た老婆だった。
「あんたもしかしてアルミスかい?すっかり老けちゃって。あの頃のかわいらしい美人ちゃんの面影も薄れちゃってるねぇ。」
「そりゃあ最後にあったのは50年近く前だからね。あの頃はピチピチの20歳だったけど今はもう70だよ。それだけたてばこんな老婆にもなるよ。」
「もうそんなにたったのね。」
「あの~先代様。そちらの方は先代様のお知り合いですか?旧知の仲のようにお見受けられますが、それにしては随分とお若く見えるのですが。」
聖女が申し訳なさそうに手をあげながら質問してきた。
「ん?あぁ、この魔女はあたしが聖女になりたて位からの知り合いだよ。こんな若々しい見た目だけど実年齢で言ったらあたしより何倍も年上。自分で作った失敗作の薬を飲んで姿が止まって不老不死になったドジっ子だよ。」
「そうなんですね。それでは一応自己紹介させていただきます。私は、10代目聖女のアナテと申します。以後お見知りおきを。」
「アナテね。宜しくね。早速で悪いけどこの子の加護の儀をお願いしてもいい?」
「はい大丈夫ですよ。それではその子を一旦お預かりしますね。」
聖女は魔女からノアを預かり、女神像の前にある椅子に座れせた。
「魔女様。この子の名前を教えてもらってもいいですか?」
「ノアよ。」
「ノア君ですね。それでは、加護の儀を始めます。」
聖女はノアの両手を優しく包み込み祈りを始めた。
「それにしてもあなたの後継者があんな感じの子だとは意外だったわ。あなたは、規律を重視するタイプだったのに。」
「なんだ気づいたのかい。あんな感じの見た目だからなかなか気づけれないんだけどね。」
「伊達に長生きしてないわよ。あの子聖女を名乗っているけど性別は男でしょ。」
アルミスは静かに頷いた。
「歴代聖女はあなたを含めて女性にしかいなかった。なぜなら、聖女の行う祈り。正確には聖女が扱う神聖魔法は選ばれた女性にしか扱うことができなかったから。仮に、魔法適性があってとしても魔力量が一定量に達していないと弱い効果でしか使えず、使用者自身にも悪影響を及ぼす。この世で最も希少性の高い魔法。」
魔力とは、誰しもが生まれながら持っている力。だが、魔力を持っているからといて誰もが魔法を使えるとは限らない。魔法を使う為には、魔法適性があり且つ、少なくとも5年の修行をしないと使うことができない。
「魔法を使う人ですら少ないのに、あんな若い子がね。しかも、最も希少性の高い神聖魔法を男がね。」
「確かにアナテは若いし男だけど、魔力総量は常人の数倍はあるし努力も欠かさない。あの子と同じくらいの年齢のあたしと比べたら、よっぽどあの子の方が聖女に向いてるしなるべくしてなってるよ。」
「へぇ~あのあんたをね。」
「なによ。」
「いいえ何も。あの最年少で聖女になって歴代で1番の神聖魔法の使い手で天才とも言われていたあんたがそこまで言うなんてって思っただけよ。それに、聖女が女だろうが男だろうが私は気にしないし。アナテがいい聖女っていうのは、街とか大聖堂の様子と人を見たらわかるわよ。」
「そう。それより、あなたいつ子どもなんか授かったんだ?あなたずっと山奥に籠って薬しか作ってこなかったじゃない。それに、子育ては大丈夫なのかい?ノアに変なもの食わせてないだろうね。あなた薬以外はからっきしなんだから。」
アルミスは杖の先端を魔女に向けた。
「杖の先端を向けるんじゃないよ。危ないから。ちゃんと説明するから。」
魔女はノアを拾ったこと日のことからすべてを話した。
「というわけで。ノアは私の子じゃなくて拾い子で町の人に協力してもらいながら子育てしているの。」
「そういうことね。」
「魔女様終わりましたよ。」
そうこうしていると、加護の儀が終了した。聖女はノアを抱きかかえて魔女の元まで駆け寄った。
「無事に終了しました。これで、物心つくまではよっぽどのことがない限りは不幸に見舞われないと思います。」
「そう。ありがとう。」
ノアは魔女を見つけると抱っこしてほしそうに手を伸ばした。
「はいはい。おいで~。」
「せっかくだ。お茶でも飲んでゆっくりしていきな。」
「いいのかい?忙しいんじゃ。」
「大丈夫ですよ。今日の分のお祈りは済んでいますし、私も魔女様のお話を聞いてみたので。」
「それじゃあ。お邪魔しようかね。ねぇコムギ。」
「ワン!」
「それでは、奥の応接室へどうぞ。案内いたしますね。」
魔女たちは聖女に連れられ応接室へ通された。
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