若者のライトノベル離れ 約10年で市場半減のショック

残ったラノベ市場の大半が「アニメノベライズ」作品

　えっ？　これの何がいけないのと思った貴方。これって「公募型ラノベ」の駆逐にほかなりません。アニメノベライズの特徴は新規公募作家を一切使わないこと、基本低年齢向きである事、IPを壊さないように執筆者はプロの作家（本物の児童文学者、脚本家、大衆文学作家）が執筆するという点だ。おかげさまで最近の週間オリコンラノベランキング上位10位内はそこらじゅうアニメノベライズだ。具体的なタイトルは小説版コナン、ハイキュー！！ショウセツバン、小説版ガンダムなどだ。そしてこれらの作品も読者ターゲットはなんと小中学生だ。下手すると高校生すらも入ってこない。

　つまりだ。児童文学に駆逐されて、ライト文芸に駆逐されて、さらに残ったラノベ市場の大半はアニメノベライズに駆逐されたんだよ。もうラノベの公募に応募すること自体が徒労なんだね。やっぱりここでも「ラノベは中高生のもの」ってはっきり分かるんだね。

オリコン週間ライトノベルランキング

2024年04月01日付

（2024年03月18日～2024年03月24日）

１位　お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件9　10575部

２位以下参考

２位　星のカービィ プププ温泉はいい湯だな♪の巻　8713部

３位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅰ　7458部

４位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅶ　7724部

５位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅱ　6331部

６位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅹ　6065部

７位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅷ　6029部

８位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅲ　6016部

９位　ハイキュー!! ショーセツバン!! XI　5869部

10位　ハイキュー!! ショーセツバン!! XII　5854部

どうだ？　これが現実だぞ？　たまたまだって？　ではここから一か月後を見てみようか？

オリコン週間ライトノベルランキング

2024年05月06日付

（2024年04月22日～2024年04月28日）

１位　復刻版 小説 落第忍者乱太郎 ドクタケ忍者隊 最強の軍師　16126部

２位　小説版名探偵コナン 100万ドルの五稜星　12714部

３位　小説 葬送のフリーレン ～前奏～　7825部

４位　薬屋のひとりごと 15　6097部

５位　ひとりぼっちの異世界攻略 life.14 果てなき星へのレクイエム　5126部

６位　チーズ（※三月みどり著）　4958部

７位　天官賜福 3　4097部

８位　灰と幻想のグリムガル level.20 かくて星は落ち時が流れた　3434部

９位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅰ　3048部

10位　ハイキュー!! ショーセツバン!! Ⅶ　3011部

　でだ。オリコン的には忍者乱太郎・コナン・ハイキュー!! ショーセツバン!! は「ライトノベル」らしい。しかしこれは「児童向けアニメノベライズ」であってどっからどうみてもラノベじゃない。星のカービィに至っては児童向けゲームノベライズでしかもレーベルは「つばさ文庫」だ。完璧に児童書だ。もうここでも分かるよね。

　そうだよ、ここでも児童書にラノベは駆逐されたんだ。しかも公共図書館の児童室や小・中学校図書館にも小説版コナンや小説版忍者乱太郎や小説版星のカービィを置くことは容易に想像出来る。こうやってラノベってまたしても駆逐されていくんだね。

　ここは「カク」ヨムだ。書き手も多数いるはずだ。ということは書き手の君はよく書店に行くはずだ。「あれ？　書店って児童書ばかり売れてね？」って事にもういい加減に気が付くべきだと思う。

　なお拙著は「ライトノベル」の定義を「中・高・大学生向け」としているので「幼・小向け」や「小・中学生向け」の本は児童書であると考える。アニメノベライズ本の全てが「ラノベ」なわけがない。私はそういう常識で書いている。違う週ではオリコン週間ライトノベルランキングに「劇場版・小説版ドラえもん」がランクインしたこともある。どう見ても幼児～児童向けの本なのですが。したがって拙著はオリコン様とは違う見解になることをご承知いただきたい。なので、まず小中学生向きのアニメノベライズ作品を無くしてみよう。それでもまだ多いね。そこから本当の意味でのラノベ・アニメノベライズ売上分も引いてみよう。恐ろしい状態ではなかろうか。これが2024年のラノベ市場の現実である。もう公募発の作品は「全部」は言い過ぎだが「かなり」見向きもされていない。それが本物の「プロ作家」と「素人作家」との違いであろう。特にここ２～３年間内に受賞したWEB公募発のラノベ作品は週間オリコンランキングトップ10内にかすりもしない作品が「ほとんど」である。嘘だと思うのならオリコンランキングを定点観測するといい。残念だがそれが現実である。

　さらにここからオリコンランキングの常連作品である「薬屋」シリーズも抜いてみよう。どうだ？　相当絶望的な状況ではないのか？　私はこんな絶望的なラノベ市況なのにラノベの公募に応募できるなっていろんな意味で感心している。

　中年向きのラノベを発行しても売れないって分かるんだね。だって「カテゴリーエラー」でしょうに。今も昔もラノベは「中・高・大学生（大学院生）向け」の本ですよ。25歳以上の読者にラノベは基本的には売れない。そういう当たり前の常識を失ったせいでこんな現象が起きたのでしょうね。アニメノベライズ本だけは「カテゴリーエラー」を起こさずに今まで通り「中・高・大学生向け」に売って来たからこういう売上結果になったのでしょうね。

　で、やっぱりここでも「エロ」は売れないって分かるんだね。そう、これらのアニメノベライズ作品は極力エロを排除してるのが最大の特徴だよね。もう一回言うが特に今の中学生は男子だろうと大半はエロに興味なんて無いんだ。いい加減に書き手は気が付いてくれないかなと。だから「R15・エロ」指定作品は令和のラノベ作品としてもってのほかだったんだね。

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注

１：2023年まではあまり見られない傾向であった。2024年に突如児童系アニメノベライズがラノベの実売数で強くなったのである。とはいえ2023年11月ころからその兆候は既に見られていた。

週間 ライトノベルランキング　オリコン調べ

（2023年11月20日～2023年11月26日）

１位　小説版【推しの子】 ～一番星のスピカ～　12918部

２位　転生したらスライムだった件 21　5577部

３位　魔王と勇者の戦いの裏で 4 ～ゲーム世界に転生したけど友人の勇者が魔王討伐に旅立ったあとの国内お留守番(内政と防衛戦)が俺のお仕事です～　5373部

４位　薬屋のひとりごと 14　4943部

５位　スパイ教室11 《付焼刃》のモニカ　4422部

６位　薬屋のひとりごと　1　4410部

７位　小説 機動戦士ガンダム 水星の魔女(3)　4369部

８位　神達に拾われた男 14　4320部

９位　小説 ブルーピリオド あの日の僕ら　4290部

10位　薬屋のひとりごと 2　4136部

このように「薬屋」と「転スラ」を抜くともうアニメノベライズがかなりを占めるようになっていたのである。

２：「天官賜福」とは中国のWEB小説発のライトノベルの事である

３：この評論部分は元々は「定額制オーディブルノベル」の項目ですがどうも日本市場において失敗だったことと2024年にラノベ市場の質的な動向に大きな変化が見られたことから内容を差し替えています。