【各論5】ラノベは小書店を救う

最後になるね。本当に最後になるね。たかだか250億程度の市場額でラノベは書店の廃業ラッシュは救えるか。


答えは「救えます」です。もちろん。


もう「各論3」でこれ答え出してるんです。


だって「限界書店地域」の売上は何で成り立ってます? 「各論3」で言ったように学校図書館の配本という官需と参考書・問題集という学需ですよ。でね、学校を敵に回すほど恐ろしいものはないわけ。ラノベというジャンルはね相当な割合で官需を失っているんだよ。


じゃあ聞くがかつて巨大なシェアを誇っていた雑誌は書店を救ったか? 雑誌の売上額はピーク時(1996年)の約3分1です。一時は「コンビニに書店が殺される」なんて記事すらもありましたが今はネットに雑誌そのものが殺されていよいよコンビニから書棚が撤去されようとしています。新聞もそうです。特にキオスクなどで買うタブロイド紙やスポーツ紙ほど。新聞・雑誌はもちろん書店の救世主にならない。


次に漫画・コミックス。これ紙媒体はアウトです。特に少年ジャンプだけでもピーク時は約650万部あったんですよ。今約130万部程度なんですよ。これマガジンやサンデーに至ってはもっと酷いんです。


漫画・コミックスはもちろん書店の救世主じゃない。そもそも漫画・コミックス自体が電子書籍市場に移行しているのだから。


最近の書店見た? 文房具売り場が売り場面積の半分を占めたり、もはや売り上げの主力がカフェになってる書店が山ほどあるわけ。もうそこは実質文房具屋、実質カフェ店であって書店じゃない。カフェ併設タイプ書店に至っては本をインテリア扱いに堕としてる書店さんなんだね。要はほぼただの飾り。あるいは無料試し読みコーナー。カフェ代金に無料試し読み代金が含まれているだけ。最悪な購買層だと試し読みし終わったあとにネットで本を注文する層だったりする。出版業界からは「ショールーム書店」とさえ言われている。こういう書店はもちろんおシャレなBGMが流れ知的な空間でコーヒー飲む私・俺かっけーみたいな層を狙ってる。カフェ併設タイプ書店というのはもう書籍売り上げが副業なのです。しかもこういう店に限ってラノベはシュリンクされていて中身の試し読みが出来ないという。トドメの一撃としてこのような店ではラノベはだいたい隅っこに置かれる。ラノベは知的な本じゃないからカフェの雰囲気を壊すため隔離された児童書・漫画本コーナーのさらに奥の隅っこに置かれるのが定番。カフェ併設タイプ書店はラノベの敵というかラノベ読者層は暗に来るなと言われているに等しい。なぜなのかはラノベの表紙絵を見て自分の頭でよく考えよう。

最近の書店は下手すると書店フロアの2階部分などを潰してトレーディングカード売り場に替えている場合もある。ポケモンカードや遊戯王カードなどを売った方が書店にとって儲かるからだ。残念なことにね。悲しいね。


でも、それが現実なのね。


それでも純粋な書店業を行いたいという書店で一番売れている本とは何か。それが法人向けの学校図書館向け書籍だったりするんです。特に地方の小書店ほど。で、さっき最近の書店は文房具もかなりの売り場スペースで販売していると言ったな。なぜだか分かるか? 学習参考書や問題集との相乗売上効果を狙っているんだ。間違ってもオフィス需要じゃないぞ。オフィスで使う事務用品は事務用品卸会社とかアスクルやカウネットなどから買うのだから。書店に置いている文房具は誰が買っているのかよく考えよう。中高生ほど文房具が必要な層はない。そういう文房具コーナーの近所に学参コーナーがあり、さらに学参コーナーの近所に児童文学コーナーがあるのが定番だ。自分で近所の書店を見てよく確かめよう。小書店のエース級の商品群だ。一番目立つ部分に置かれる。ちょっと離れたところに一般書が置かれる。さて、ラノベは小書店のどこに置かれているのだろう。それが「現実」だ。


で、朝読書運動などで児童文学ジャンルの売上額が過去最高更新なんて話も出たと思う。なんでラノベはこの波に乗れなかったのか。


ずばり答えを出します。


「教師や親を敵に回したから」=「お客様を怒らせたから」


要はラノベの表紙ね。特に過激描写の絵ばかり表紙絵にしてません? こんなの学校の司書教諭さんが買うとか思います? これは公共図書館もそうだけど。

つまりラノベって単に見放されたんじゃない。お客様を敵に回してしまったんだ。こういう時だけ「表現の自由戦士」みたいなの出るだろ? あいつら客だと思う? たぶん客じゃねえぞ? 高確率で無料でWEBで読むだけの層だ。本当の顧客ってどこにいると思う? 子供・学校・親・教師・司書だよ。地方ほどね。


「公共図書館は書店から買ってるんじゃない。『TRC』(筆者注:図書館流通センター)などから買ってるんだ」とかまだ頑張ります? あのね、TRCさんって丸善CHIグループなのよ? つまり大規模書店の資本下の会社さんなのよ。それ、書店から買ってるのと同じ。TRCはTRCMARCの販売やブッカー処理やNDC付与もしてくれる会社であって本自体は実質丸善という会社から買ってるようなもん。紀伊国屋書店さんが大学図書館に強いなんて言われてるのと一緒だね。そうなんだよ。今や大手書店ですらも主要顧客は法人客、要は図書館なんだ。


そもそも図書館の総貸出点数と書店の総売り上げ点数が逆転したのは2011年だしね。もうずいぶん昔だ。購買力が無くなった日本人は本好きほど図書館に頼ってるというのが現実なんだよ。さて、日本中の公共図書館でちゃんとラノベを大量に買ってくれる図書館ってどのくらいあるのでしょう。みなさんでよくお考え下さい。ちょうどまさにこの転換期に「異世界転生バブル」が起きてラノベ界が勘違いしたのが全ての悲劇の始まりである。


そんな状況でラノベが生き残るには。もうさんざんここで答え出したからもう書かなくていいよね。


本物のラノベの顧客はどこに居るのか……ラノベ界はこの点を反省して親や学校や役所に買ってもらえる本づくりしてください。


=終=

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