蛇足 そして同じ星になった

時は流れ。

僕は星解の人々の仕事の手伝いをして日々を消化していた。

農業だったり漁業だったり彼らの手伝いをしてお給料を貰って過ごしていた。

カグヤのお腹には新たな生命が宿っていて僕らはもうすぐ家族になる。

運命の人との間に生まれる子供を楽しみにしつつ日々に追われていた。

そんなある日のこと。

カグヤの陣痛が始まる。

母親に車を運転してもらい病院まで向かった。

僕は付き添いで待合室でその瞬間を待ちわびていた。

体感では数時間が経過したと思っていた所で赤子の泣き声が聞こえてくる。

無事に生まれた我が娘と対面する。

ここから娘はカグヤと同じ目に合うのだと思うと少しだけ複雑な心境だった。

だがしかし彼女もいつの日か運命の相手と惹かれ合うのだ。

それが唯一の救いだと感じながら出産を終えたカグヤと微笑み合うのであった。


忘れてしまった日々から何年経過しただろうか。

僕とカグヤと娘で過ごす日々に慣れてきた頃、カグヤは娘に星解の話を言って聞かせていた。

娘は本能で自分の性質を理解しているようだった。

「ママ。私は大丈夫。一人でも独りじゃないよ」

達観した娘を心強く思うと僕は父親として何が出来るか考えていた。

だが僕に出来ることはそう多くない。

娘は血を強く受け継いだのかカグヤと一緒で星の声が聞こえるらしい。

夜になると庭に出て星を眺めていることが多かった。

そんな娘を可哀想に思わなかった。

孤独を感じていない強い娘を誇りに思うとまた日常に戻っていく。


娘が成人を迎えた頃。

彼女は星解に運命の相手を連れてくる。

事情を知った相手も星解に婿に入るそうだ。

娘にも家族が出来るらしくまた一族が増える。


孫も独り立ちする頃。

僕とカグヤは人生の最期の瞬間を迎えようとしていた。

お互いがベッドに横になり死期を悟った。

もう僕らには言葉は無かったが幸せな人生だったと思える。

運命に導かれて彼女に出会い導かれるように交際を始めた。

多くのものを捨ててきたが、その後に拾ったものはそれよりも多かった。

普通の人生だったとも普通ではない人生だったとも思う。

人生最後の瞬間に振り返っていたのは星解の人々のこと。

何もかもを捨てて、身一つでやってきた僕を迎えてくれた暖かい一族。

彼らを嫌う世界がやはり間違いなのだと最期の瞬間でも思える。

僕はカグヤに、そして一族に支えられてここまで生きてこれたのだ。

感謝の念を抱くと僕らは同時に息を引き取った。


そして二人は同じ星になるのであった。

             完

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クラスのモブメガネ女子に告白されて試しにOKしたんだが…メガネ外したら超絶美少女だった件 ALC @AliceCarp

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