アミーラの救出
第57話.火竜の鱗亭①
ルイスたちがイーリスの研究施設で
ルイスとティト。それからアルフレッドとカテリーナの4人はジリンガムにある火竜の鱗亭という宿屋を訪れていた。
あれから一旦フォートミズに戻った4人だが、リカードの館を訪れると執事のオズワルトから、リカードは既にジリンガムへと向かったと告げられた。
オズワルトによれば、リカード達は火竜の鱗亭という宿屋を拠点にしてシュテルナー公爵の館を調べているという話だった。
そういうことならと、4人もすぐにジリンガムの火竜の鱗亭へと向かった。
4人が火竜の鱗亭に到着すると、主人のハンスが出てきて、1階の奥の部屋へと通される。
アルフレッドとリリアーナは、イーリスを追って旅をしていた時に、一度ここを訪れているので、ハンスも二人の顔は覚えていた。
1階の奥の部屋は、その時アルフレッドとリリアーナが泊めてもらった部屋だ。
「やあ、アル。待っていたよ」
部屋に入るなり、リカードの声がアルフレッドを迎える。
部屋にはリカードの他に、ランドルフにダニエル、それからエミリアとココの姿があった。4人ともリカードが各地を冒険していた時の仲間だ。今も行動を共にしている。
「リカード様、ありがとうございます」
リカードの姿を見るなり、アルフレッドは片膝をついてリカードに頭を下げる。ルイスとティトも、それに
「気にしないでくれ。アルの友達なら僕の仲間みたいなものだ。それに、魔族が関わっているかもしれないからね。放っておくわけにはいかないのさ。それで、首尾はどうだい?」
「
「なっ!? セーレだと?」
セーレの名前を聞いた途端、リカードの顔が険しくなる。
「魔族に会って、よく無事だったな。よかった……。それでセーレはどうした?」
「かなり苦戦しましたがなんとか4人で倒すことが出来ました」
「は? 倒した?」
「はい」
信じられないという顔で、口をあけたままあっけにとられるリカードに、アルフレッドは少しだけ誇らしげに頷いて見せた。
「そうか、あの空間を渡る魔族を……。アルが倒したのか。そうか、そうか。ずいぶんと成長したな」
「いえ、4人いたから勝てたようなものです。誰か一人でも欠けていたら勝てなかったと思います」
感慨深そうに目を細めるリカードに、アルフレッドは、少し照れたようにはにかみながら、後ろにいる仲間達を振り返った。
「アル。君もいい仲間を持ったようだな」
「はい!」
リカードのその言葉に、アルフレッドは嬉しそうに返事を返した。
「リカード様、あまりのんびり構えているわけには……」
「おっと、そうだった」
ランドルフがリカードのそばに来てそっと小声で伝えると、リカードは思い出したように手を打った。
「懸念した通りシュテルナーのやつ、かなり怪しいな。ちょっと調べてみたが、公爵邸に出入りしている者たちが、ここ半年間で何人も行方不明になっている。さらに、最近では屋敷内で魔物を飼っているとか、地下から不気味な叫び声が聞こえるとか、不穏な噂が絶えないらしい。ただの噂かもしれないが、火の無いところに何とやらだ」
「では、やはり?」
「ああ、魔族が関与している可能性は高いと思う。それに
リカードは眉間に皺を寄せながら、沈痛な面持ちでそう口にした。
そしてルイスのほうへと視線を向ける。
「そこで、ルイス君。君たちに頼みがある。これから、
「それは構いませんが、でもどうやって? 俺たちが無事出て来られれば教えますが……」
中に入るつもりだが、今のところ出て来られる自信は無い。
「そうか、言ってなかったね。こちらには、離れた場所でも念話で話ができる魔法道具があるんだ。それを使えば、君たちが館に入った後も、こちらとは連絡が取れるはずだ」
「そんな便利な魔法道具があるんですか?」
ルイスの代わりに、ティトが興味深そうに話しに入って来た。
「これが、その魔法道具だよ。この大きさなら不自然に見えることもないだろうし、つけたまま館に入れるだろう」
リカードはそう言いながら、長さ7センチほどの銀色のバングルを取りだすと、ティトに手渡した。
ティトは、それを受け取ると、興味深そうに観察する。
「すごいですね。こんなに小さいのに」
「最近、やっと小型化に成功したんだ。もっとも、あまり遠くまでは届かないが、この街の中くらいの範囲ならどこにいても話が出来る」
感心するティトに、少し自慢げな
「そんな広い範囲で使えるんですね。いったいどんな仕組みになっているんですか?」
「それはな……」
「ティト、そういう話は後にしろ。今は、もっと重要な話がある。そうですよね? リカード様、先をお話しください」
「あ……ああ。そうだな」
ティトは、バングルを手で回転させながら刻まれた魔術式に目を走らせている。そして、リカードが嬉しそうに説明しようとしたところで、ルイスが口を挟んだ。
リカードは、開きかけた口をぱくぱくと動かしたあと口ごもる。だが、すぐに何事も無かったように真顔になって、話を続けた。
「そういうわけで、その魔法道具があれば我々とはいつでも連絡が取れる。先に入ってもらう君たちの危険は変わらないが何かあれば連絡してくれ。すぐにでも駆けつける。人数は少ないが、ここにいる者たちは皆、一騎当千の
「分かりました。ありがとうございます」
後ろに控える4人に視線を向けながら、リカードは説明を続けた。ランドルフをはじめとして、味方なら頼りになる面々だ。
ルイスは、深々とリカードに頭を下げた。
「それで、俺たちはいつ行けばいいのでしょう?」
「急いだほうがいいと思う。どうにもあの館はきな臭い。こっちはいつでも大丈夫だ。あとは君達次第だが」
「俺たちもいつでも行けます」
「そうか。では、この後ということにしよう。もっとも、魔法道具の使い方を覚えてもらってからだけどね」
しばらく、魔法道具の使い方や細かい作戦の話をしてから、それぞればらばらに火竜の鱗亭を出て行った。
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