第55話.きゃはっ!⑤
セーレが5本の炎の矢を撃ち出した。
それを合図にルイスは床を蹴る。セーレが炎の矢を出現させようとした瞬間、アルフレッドの
セーレは諦めて姿を消す。
現れたのはアルフレッドのすぐ後ろ。
「きゃはっ!」
セーレは、奇声を発して細剣を突き出す。だが、アルフレッドは身を捻って躱しながら
引き金を引いた瞬間、セーレは再び虚空に溶ける。
銃声が虚しく響き、銃弾は通路の奥へと消えた。
次に現れたのはルイスの背後だ。
だが、その瞬間を察してルイスは振り向きざまに短剣を振る。セーレは、かろうじて細剣で受け止めるが、反動で壁際まで吹き飛ばされた。
壁に背が当たったセーレはそれ以上下がれない。そこへルイスが短剣で追い打ちをかける。左右の短剣を小さく突き刺すように繰り出しながら徐々に追い詰めていく。
セーレも細剣で短剣を受けるが、ルイスの方が早い。
「もらったぁ!」
ルイスが会心の叫びをあげ短剣を突き出したが、セーレはかすかな笑みを残して虚空に消えた。
ルイスが振り返った時にはセーレは、ティトとカテリーナの横に姿を現していた。
「ティト!」
ルイスが叫ぶ。
セーレの細剣がティトへと突き出される。
その瞬間、キンという澄んだ音がして、セーレの細剣がはじかれた。そこには、細剣を手にしたカテリーナが立っていた。
「きゃはっ!」
セーレとカテリーナの細剣が激しく打ち合わされる。
両者の剣技は互角。攻守が目まぐるしく替わり、通路には打ち合わされる金属の澄んだ音が連続して響く。
「
いきなりカテリーナが力ある言葉を発した。
虚空から出現する炎の大蛇。
その炎の大蛇は、ちろちろと炎の舌を出しながら、自ら意志があるかのようにセーレへと向かう。
その間もカテリーナの細剣は止まらない。
「ちっ」
セーレは短く舌打ちすると、再び姿を消した。
次に現れたのは、通路の奥。
ルイスから50メートル以上離れた場所だった。
「きゃはっ! なかなかやるじゃない」
セーレは妖艶な視線をルイスに向けると、真っ赤な舌でゆっくりと唇を舐めた。その直後、セーレの目の前に炎の矢が10本出現する。
ルイスはセーレに向かって全力で走る。
アルフレッドは、ルイスの後ろからセーレの顔面を狙って
セーレはまるで銃弾が見えているかのように首をひねって躱すとさらに、炎の矢を10本追加する。
ルイスはまだ遠い。
さらに10本、炎の矢が増やされる。
合計30本の炎の矢。
セーレがパチンと指を鳴らす。
その瞬間に30本の炎の矢は一斉に虚空へと消えた。
「おおおおおおおおぉおぉ!」
ルイスが吠える。
両手に持つ短剣が紅い炎に包まれる。
その瞬間、ルイスを中心にした全方位に炎の矢が出現した。その矢が一斉にルイスに降り注ぐ。
「当たるかあああぁぁぁ」
ルイスは一気にスピードをあげると、前方の炎の矢だけをその紅く燃える短剣で切り払う。一瞬で数本の矢を切り払ったルイスは、後ろから迫る炎の矢を置き去りに、さらに加速した。
アルフレッドは
直接狙うにはセーレまでの斜線上にルイスがいる。だから
セーレとルイスの距離はもう10メートルも無い。アルフレッドは、
魔力を封じる金属で出来たその銃弾は、アルフレッドの狙い通りの天井にあたり、角度を変えて、セーレへと迫る。
ルイスの動きに気をとられていたセーレは、一瞬反応が遅れた。
銃弾は、セーレの肩をかすめる。
セーレの魔力が一瞬乱れた。
「おおおおおおぉぉ」
ルイスの短剣がセーレに迫る。セーレは、かろうじて細剣でルイスの短剣を受けた。だが、先ほどまでの余裕は無かった。
ルイスは舞うような動きでセーレを追い詰める。
防戦一方のセーレは顔を引きつらせながら、虚空に溶けた。
次の瞬間、銃声が通路に響いた。
「なっ……」
セーレは、アルフレッドの背後に現れた。だが、信じられないという表情で、腹を手で押さえている。
その先には、壁を背に座ったままのティトが
再び銃声が響く。
腹を押さえたまま、虚空に消えようとするセーレに、アルフレッドの
至近距離からのその攻撃はセーレを捉えた。
空間を渡ろうとしたセーレの魔力は乱され、再びセーレの体がはっきりとその場に出現する。さらに追い打ちをかけるように
セーレにはもう空間を渡る力は無いのか、よろよろとしながらアルフレッドから逃げようとする。
そこへ、カテリーナの炎の大蛇がセーレに襲い掛かった。
「きゃは……」
最後に、小さく奇声を発した気がしたが、炎の大蛇に包まれたセーレはその場に倒れた。
後には、黒い灰の山が残されていた。
それも、徐々に黒い
「倒したのか?」
「ああ」
半信半疑のアルフレッドの言葉に、ゆっくりと近づいてきたルイスが頷いた。
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