第23話.怪盗ナバーロと封魂結晶③

 バルコニーから身を躍らせたルイスは、すぐに落下を開始する。

 右手にはアラクネの糸が握られていた。

 アラクネの糸はその伸縮性をもって、ルイスの落下速度をやわらげる。


焔玉ほむらだま


 ルイスの背を追うように、力ある言葉が解放された。

 反射的に上を見上げたルイスの目には、無数の赤く光る火球がバルコニーを超えて飛び出してくるのが見えた。

 それらは弧を描くように空中で方向を変えると、ルイスに向かってくる。


「やべぇ」


 その瞬間、アラクネの糸を放す。

 まだ2階分の高さはあったが、ルイスは軽やかに着地した。



 着地と同時にルイスは走り出す。



 次の瞬間、背後で爆発音がとどろいた。 


 爆風がルイスの背中を押す。

 加速したルイスは、なりふり構わず全力で走った。


 背後で、連続して爆発音が響く。

 同時に熱風が後ろから吹き抜けていく。音と爆風から、その威力が知れる。


 一つ一つの威力が高い。

 もし一つでも食らえば、逃げ切れない。

 そんな予感がルイスの脳裏を走る。


 背後、バルコニーの辺りからは、先ほどと同レベル。いやそれ以上の魔力を感じた。

 


「おいおいおいおい。まじか? 聞いてねぇぞ。これ以上は、やばいって」


 走りながら悪態をつくルイス。

 さらに、騒ぎを聞きつけたのか、周囲から兵士達と思しき怒声と足音が聞こえてくる。


「やべっ。これ逃げ切れんのか?」


 遠くで銃声が響いた。


「きゃっ、なに?」


 直後に後ろで小さな悲鳴が上がる。


 振り向くと、バルコニーから白煙が上がっていた。

 それで背後の魔力の気配は霧散する。


「さすがティト!」


 ルイスは、外壁の上に一瞬視線を向けると、弟に感謝する。


 さんざん追ってきた火球も、いつのまにか無くなっていた。


 後は集まりつつある兵士達だけだ。


 連続して、2回銃声が響いた。ルイスの前方、2か所から白煙が上がる。

 ルイスは、そのうちの一つに飛び込んだ。

 

 煙に身を隠しながら走り、煙の先にあった建物の影を利用して、近づいてくる兵士たちから身を隠す。


 さらに2回銃声が響いた。

 新たに、白煙があがる。兵士たちは、その煙に引き付けられるように煙を遠巻きに囲んだ。


 その隙にルイスは建物の影を伝って、その場を離れていく。


 しばらくして、ルイスは外壁のそば。先ほど、降りて来た場所に現れた。

 先ほどのワイヤーは、まだ残っている。


 周囲に兵士達の気配が無いことを確認すると、ルイスはワイヤーを伝って外壁を登った。

 尖塔の屋根の上に出ると長距離射撃用魔銃アキュラスを片付けていたティトが迎えてくれた。


「お疲れ様です。兄さん。それで、首尾はどうです?」

「ふっ、抜かりは無いさ」


 ルイスは、ニヤリとするとポケットから封魂結晶アニマ・クリュスを取りだした。


「さすが兄さん!」


 ティトは嬉しそうにルイスに向かって拳を突き出す。

 ルイスもそれに応じて、拳を重ねた。


「さて、追っ手が来る前にずらかるぞ」


 ルイスがオーティス男爵家の方を振り向くと、いくつもの松明たいまつの灯りが、せわしなく動いているのが見えた。


 集まって来た兵士が必死に捜索を開始したらしい。


 二人はワイヤーを回収すると、アラクネの糸の端を尖塔の屋根に貼りつけて、貴族街とは逆の平民街の方へと飛び降りた。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ここまで読んで頂きありがとうございます。


 封魂結晶アニマ・クリュスをルイスとティト。

 このままアミ―ラを取り戻すことが出来るのでしょうか?


 封魂結晶アニマ・クリュスを盗られたリリアーナはどうなっちゃうの?

 怪盗ナバーロかっこいい!!

 リリアーナの生着替えがもっと見たい!!!


 と思ってくださいましたら、

 ★評価やフォローを頂けると嬉しいです。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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