『月命日』
𝑹𝒖𝒊
第1話
最近、目が覚めると枕が濡れている。夢を見て泣いていたようだ。詳しくは覚えていないが、大切な君の夢だと言う事は覚えている。ただただ寂しい。君に会いたい…。
今日は君の月命日。普段から、君の事を忘れたことはないが、月命日が近づくと頻繁に頭をよぎる。
きっと『そろそろだよ。会いに来て!』と合図しにくるのだろう。
『大丈夫。忘れてないよ。』
君の好きなスイーツと花を持って行くからね。何がいいかな。
そんな事を考えながらネットで近所のオススメのスイーツ店を検索してみた。君が「ここのは美味しい」と言っていた店ばかりだ。
『あ!このケーキ。告白した日に、付き合い始めた記念にって一緒に買いに行ったケーキだ。久しぶりに、食べたいな。』
君の好きなベリーと生クリームがふんだんに使われた甘酸っぱいケーキ。
ケーキが大好きな君は美味しそうに頬張って食べるから、必ず口の端にクリームが付く。それを『付いてるよ。』と指ですくってやると君は照れ笑いする。そのはにかんだ笑顔が大好きだった。
ケーキと綺麗な花を持って、君に会いに来たよ。ここは日当たりも眺めもいい高台。街の景色がとても良く見える。夜には夜景も綺麗に見えるだろう。
ここからだと多分…家はあの辺りだろう。君に見守っていて欲しいと思いそこに引越したんだ。
君の墓前で最近の出来事を報告する。風がそよそよと吹き、君が相槌を打っているみたいだ。
誰かが横に立った気がした。勿論、誰も居ない。怖いとか嫌な感じではなく懐かしいようなほっとするような…。
何も見えないけれど、きっとそこには君が居るのだろうと思った。
見えたらいいのに…。君にまた触れられたらいいのに。君の声が聞きたい。また名前を呼んでよ…。君を抱きしめたい。会いたいよ。
そっと頭を撫でられた気がした。きっと、少し困ったように笑っているんだろうな。そんな君の顔が簡単に想像出来てしまう。
きっと君の事だから『早くいい人見つけて幸せになってよ。』って思ってるんだろうけど…。分かってるでしょ?まだ無理だよ。君しかいないって思ってきたから、そう簡単に次へとはいかないんだ。
寂しくなって少し涙ぐんでいると、そっと抱きしめられた気がした。
『月命日』 𝑹𝒖𝒊 @ruicha_mori
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