ななくさたちのひとりごと~春の七草~

水涸 木犀

ななくさたちのひとりごと~春の七草~

人間は 生きる目的 問いかける 我はただただ そこに在るだけ



虫や蝶 二度と会わない 彼らだが 二度と会えない かもしれぬ



摘ままれて 種を引っ張り 下ろされて 身体はぐるぐる 目が回る



春過ぎて 土に潜りし 我が身体 所在を知るのは ミミズたちのみ



同じ日々 ただ繰り返すのは もうやめて 特別な日に 耳を澄ませる



横並び 皆と一緒に 咲きはしない 自分を待ってる あの人のために



我が世界 酸いも甘いも 関係ない 日々過ぎるのを 座して待つだけ



人肌は 夜風と同じく 生温い 我らの会話と きっと似ている



刈り取られ 横たえられたら 鳥が寄る 命なくとも 友は寄り添う



食べられて 我の寿命は 尽きれども 小鳥の中で いのち繋がる



雨上がり 土手に根を張り 見下ろすと ゆるく崩れた 田の字が見える



兄弟が 揃う日わずか 数日で 次に会うのは いつになるのか



人間は 身内の生死を 考える 影響があるのは 我らも同じ



予告なく ぱっとまかれる じょうろ水 雨よりずっと 冷たく感じる



食べるため 大きく育てと 言われても 自分はただただ 箱に座すだけ



刻まれて 味噌と一緒に お湯の中 次見る世界は きっと明るい



土を出て 同胞たちと 語り合う 土出るときは 楽なのか否か



子どもたち 白身切り切り 春を待つ 干されて食べ頃 迎える日まで



草除き 土を耕し 柔らかく 全ては我の 生活のため



霜に耐え 根を張り熱波をやり過ごす 人呼ぶ我らは 春の七草

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