道端ハーレム

 学校の帰り道、夕日が頭だけを見せて田んぼを照らしていた。ぼんやりしながら畦道を歩いていると、左脚に何かがしがみついてきた。驚き、田へ背中からダイブすることは免れたが、バランスを崩して倒れ込む。

 

 その者の正体は一人の少女、と言うのかは人それぞれな年齢の、女の子が足に擦り寄っていた。手を回して抱きつき、危ない膨らみもしっかり太ももに密着している。すぐそばの顔から甘い吐息がかかってくすぐったい。どんなシチュエーションなんだこれは。


「………んっ…」


 一言も発さず、いきなり太ももに薄い桃色の唇を押し当てた。柔らかいものが当たったり、動いたりする。少女は脚に回す腕を離さず、身体をよじらせる。初体験の感覚は僕を思考停止させるのに十分すぎた。この時間が何時間も続くように思えた。


「………んぅ……」


 その感覚も、再び訪れた幸福の感触で上書きされる。今度は右腕に少女の唇が触れていた。もう動こうなんて思わない。


 結局五分ほどそのままだった。



 

 その日の夜、興奮冷めやらぬまま寝床についたのだが、気を休める暇はなかった。耳元で優しい息が吹きかかった。身体の力が抜けてゆく。


「……ぁ…」


 首にまた、あの感覚があった。くすぐったい。首元を舐められながらそのまま夢を見るために、瞼を下ろした。




 次の日、トーストを齧りながら朝の情報番組をみていたら、豆知識を紹介するコーナーでこんな声が流れた。


「夏の時期に増える蚊ですが、血を吸いにくるのは全部メスなんです。一方、オスは優雅に花の蜜を吸っているんですよ。」


 左足と右腕と首元に、赤く膨らんだ痕があった。



    


             見る角度次第

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【短編】ショートショート集 りぶ @pinkribu

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