エピローグ

 あれから一年半の時がぎ去った。現在げんざい、僕たちは高校二年生だ。

 かみとの最終決戦が過ぎ去り、皆はそれぞれの生活せいかつに戻った。とはいえ、人工島アメノトリフネが実は超高度な技術を利用して建造けんぞうされた宇宙船であるという事実は各国にかなりの衝撃しょうげきを与えた。

 あの事件以降、日本本土の警察や政府から介入かいにゅうがあり大きなさわぎにもなった。

 けど、その事件もそろそろ下火したびになりつつある。それも、僕たちが揃ってアメノトリフネの長である支上剛三さんをかばったからだ。

 割と強引な話だが、僕たちの身に何も問題もんだいは無かった。支上剛三は今後、日本本土にゆっくりと技術を提供ていきょうしてゆく。そんな協定きょうていが本土と結ばれたようだ。

 ああ、それから神域しんいきの話だが。現在神域は無貌むぼうの管理下にある。どうやって管理者としての資格を持たない無貌が神域を掌握しょうあくしたのかといえば、異能者全員の持つ異能の因子いんしをすべて無貌が徴収し、徴収した伊能の集合体を疑似的に管理者としての資格としたという。

 本当の意味での裏技うらわざというわけだ。或いは、バグ技と言っても良いだろう。

『まあ、其処そこは存在そのものがバグのような■だし?』

 というのは、本人のだんだ。

 さて、そんな訳で現在僕たちは異能いのうを持っていない。本当の意味でなんの変哲もない普通ふつうの人間になっている。

 あと、僕とアキは数日前に剛三さんから正式に交際ゆるの許しを得た。とはいえ、それ以前から既に許しをていたようなものだけど。剛三さんと長い話し合いの結果、ようやく交際の許しを得たのだ。

 と、いうよりも半分剛三さんもノリで話し合いを引きばしていた部分があると僕は思っている。

 剛三さんのあんなたのしそうな顔、絶対ぜったいにあのノリを楽しんでいただろう。

 まあ、い。それよりも現在僕とアキはアパートにある僕の部屋へやで旅行鞄に荷物を纏めている所だった。

 何をしているのかだって?僕の実家じっかに、アキを紹介しょうかいしに行くんだよ。

「あ、おちゃはたくさん持っていった方が良いよ。今年のなつはかなり熱いし、脱水症状になったら大変たいへんだと思うから」

「うん、ああそうだね。それから着替きがえにお金、両親へのお土産みやげも必要だな」

「あんまりめ込みすぎてもあれだし。荷物にもつは必要最低限にしておいた方が」

「うん、じゃあ電車でんしゃの時間もあるし、そろそろようか」

「そうだね」

 そう言って、僕たちは荷物をまとめてアパートを出た。

 あれからごたごたして、結果挨拶がかなりおくれたけど。今から僕の両親に会いにアキと一緒に行くんだ。緊張きんちょうしないと言えばそれはうそになるだろう。けど、同時にわくわくもしている。

 それはきっと、彼女と一緒なら何処どこにだって行ける自信じしんがあるからだろう。

 そう、アキと一緒なら何処にだって行ける。だから、僕たちにもう異能なんて必要ないんだ。もう、僕たちは異能に振り回されなくても良い。

 こうして、僕たちはたたかいを終えて新たな物語ものがたりを紡ぎ始める。

 僕たち二人で、新たな物語を紡ぐんだ……

 僕たちの、新たな人生じんせいという物語を……

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クオリア~万華鏡の如き世界~ kuro @kuro091196

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