第9話『プロットあるのに? こうなんの!?』

 前回のお話では超簡易のプロットを紹介しました。


 ですが、前回のお話で長々と書いた通り、自分はプロットを基本的には書かず、プロットの言う事を聞けない人間です。自分で書いておきながら!


 なので今回はそれを踏まえて、僕が書き出した時の前回のプロットの第一話を乗っけてみようかと思います。


 一話しか書いていないので勿論続きは無いし、書く予定も今のところは無いです。もし前回のお話のプロットを読んでくれた人なら、記憶が新しいうちにこのお話を読んでみてくれると「あぁ、こういうタイプのヤツもいるんだなぁ」って思ってもらえると思います。


 創作論とはズレますが「こういうヤツもいる」という意味ではもしかしたら役に立つの……かも? 何が正解って事はないんじゃないかなぁなんて思って、筆を取ってくれたら嬉しいなって思います。


では本編どうぞ。タイトルとあらすじから行きますね。


仮題『月出つきいでたりしHAPPY DT(OWN)』

キャッチコピー『狂気吸い込めど陽気な街で』


------------------『あらすじ』------------------

 合法も違法も辞書には乗っていない『無法国家ブロクテミス』は、退屈を嫌う街だった。


 ブロクテミスでは、ハッピーを叫びながら短刀で自分の首を掻っ切る人間についても、絶望の縁で無差別殺人を起こす人間についても、概ね次の日の新聞で「現場を見たかった」と嘆く奴らが集まっている。


 頭が割れそうな程に賑やかだと思えば、本当に頭が割られていた『スイカ割り』

ブームはすぐに過ぎ去り、バッドを大量に仕入れた業者は大損したように見えて、その木の粉でトベる事まで計算尽くし。


 物音一つ無い程に静かだと思えば、子供が闇の中に連れ去られていた『かくれんぼ』

 そのブームもすぐに過ぎ去り、身代金を払わない親ばかりだったせいで、怖い思いをしただけで子供は解放された。


 命すら軽いそんな暇潰しとも言えるブーム達は、陽気で狂気な街の中で、今日も思い出し笑いのように語られている。


 だから、いつものように『人狩ひとがり』と呼ばれたソレもブームで終わるのだと思われていた。決められた人を殺すという遊び、少々行き過ぎていると思った人間もいたかもしれない。


 だが、もう既に街の狂気と陽気のバランスは崩壊していた。


 人を狩り、心臓を抜き、それを調理し、食す事によって寿命が伸びるという思想が街に生まれ、それはいずれ宗教じみた物に変わった。ブロクテミスの金持ちが『人狩り』を仕事とした日、『人狩り』は単なる危ない暇潰しでもブームでもなんでも無く、単純な仕事と化した。


 今日も、ブロクテミスでは陽気に影を落とすのを避けるような馬鹿笑いが聞こえている。そんな街では、もう暗がりを避けても意味がない。


 そんな狂気を吸い込みながら、『D』と呼ばれる青年は、乾いた血の付いたナタを持って太陽の下をブラブラと歩いていた。


------------------『ここまであらすじ』------------------

第一話『タイトルは考えてなかった』


 ナタは良い。切れ味を気にせずとも鈍器としても丁度良いからだ。

それに、余程切れ味を"良く"しない限りは一撃で四肢を断裂させる事も無い。勿論剛腕の持ち主なら話も別で、手加減の必要はあるが、俺の場合は多少強く振るった所で相手がすぐに死ぬ事も無いから好きだ。精巧な刀で一刀両断なんて考えるだけで心臓が悪くなる……いや、痛くなる。


――だから俺の獲物は鉈で良いし、鉈が良い。


「タゲ被り、か……」

 それに、人狩り同士の抗争に於いて、面倒な殺しをする必要も減る。

 一週間に一回、時間はランダム。このブロクテミスなんていう街の中にいる人間の中からターゲットが選ばれる。

 それは街在住の人間かもしれないし、この街の住民よりも頭が悪いであろう観光目的のカモかもしれない。

「今回は鴨、カモ。ネギはいらねえしなぁ」

 そのカモが今回のターゲット、あえて外に出るという選択をしたのは正しい。この街じゃ観光客の居場所なんてそうそう決まっている。頭は悪いが馬鹿ではない、そんなターゲットを狙う人狩りなんて、そりゃ俺以外にもいるだろう。

「しっかし今回は一番乗りかと思ったが」

 俺はカモを殺そうと獲物を隠しながら近づいていく同業者の人狩りの後ろ姿を追う。この場合は先に排除すべきは同業者だ。その間にターゲットを全く別の同業者にやられたとしても、先傷センショウがあればこちらの所有となる。

「足が早いだけでトーシロちゃんだ。とりあえず先傷っと!」

 俺はポケットから鉄串を出してターゲットの背中めがけて放り投げる。聞こえた「ギャッ」という声を聞きながら、俺は自分の獲物を大きく斜め上に振り上げた。


 目の前にいる同業者が、更にその前のターゲットの異変を見て、こちらに振り返る事は分かっていた。だからこそ俺は同業者の背中を、鉈の逆刃で叩きつける。

 同業者は女性だったが、関係無くそのまま足を払い転ばせた上で鉈の逆刃でアキレス腱を思い切り打った。

「悪いな、トーシロちゃん」

 おそらくしばらく歩けない程度で済むはずだ。人狩りとして生きていく上で、同業者は殺してでも減らすべきだが、それではあまりにもつまらなすぎる。それに顔を見る限り美人のお姉ちゃんだったから尚更、この一件で確実に恨まれるから食事を誘う前に殺しにかかられるだろうけれど。

 おそらく同業者の彼女は俺が背中に入れた一撃で息が出来なくなったのだろう。返事かどうかわからないが、とりあえずうめき声を聞きながら俺は先傷を入れたターゲットへと近づいていく。


 ターゲットは観光客だ。であればどうかしているこの街の住人のように、足を鉄串で刺された経験など無いのだろう。痛みに喚きながら助けを求めているが、この狂った街ではそんな物は嘲笑の的にしかならない。

「大丈夫か?」

 俺はそんなターゲットに話しかける。

「あ、あぁ! 助けてくれ! 私はディン・ホフマン、何故だか知らんが急に新聞に素性が……」

 ああだこうだと話している。すぐに街から去ろうとしただとかなんとか。

人狩りはブロクテミス政府公認の仕事であり、そのターゲットにも生き延びられた場合報奨金が与えられる。だからターゲットになりたくないのならこの街に入らない事が一番なのだ。ターゲットに選ばれたならこの街からは次のターゲット発表まで逃げられない。そんなことも知らずにこの馬鹿は街に来たわけだ。

「ディン・ホフマン。間違い無いな」

 俺はターゲットの情報を確認して、なるべく笑顔を作った。

「なぁオッさん、ユーは何しにこの掃き溜めへ?」

「世界で一番のスラムを見……」

 言い終わる前に、俺の鉈が彼の喉を掻っ切った。

「そうかいそうかい、じゃあまぁ、目的は達成したわけだ。オッサンの目的も達成、俺の目的も達成。……ウィンウィンだな」

 パクパクと何かを言おうとしているディン……なんとか氏の両腕をへし折り、足の建を斬る。叫び声の代わりに喉から血が吹き出ている。血は吹けば取れるが、叫び声は耳について離れない、だからこそ聞かないに限る。この人狩りの狂った観客達は叫び声を聞きたいらしいから尚更だ。これは見世物では無く、仕事なのだから。


 ただし、綺麗なお嬢さんのうめき声なら大歓迎だ。

「トーシロちゃんさぁ、もうちょい頑張ろうね」

 殺意が出すぎているあまりに、背後のうめき声が届いていた。

俺が彼女の背後を取ったから彼女もまた俺の背後を取れると思ったのだろう。


 回し蹴りは当たりどころが悪いと殺してしまう。

 見えていない以上振り返って鉈で応戦してもその一撃の当たりどころによっては殺してしまう。

ならば躱すしか無いのだが、眼の前にはディ……オッサンが今際の際の泡を吹いている最中だ。

「ああもう仕方ねえなぁ」

 俺は背後からの何らかの攻撃を避けると同時にオッサンの手を引いたが、足だけは早いようで、俺が再起不能にしたであろう同業者の一撃は綺麗にオッサンの命を狩り取っていた。

「あぁ、こりゃもう……」

 同業者の獲物は短剣、オッサンは脳天を貫かれ即死。せっかく俺が新鮮な心臓を届けられるように殺さずに留めておいたというのに、鼓動を止めるのは迷惑にも程がある。


 俺はしたり顔の彼女の腹部に鉈の柄を当てて、膝を付かせる。

「人狩りは初めてか? トーシロちゃん」

「初めてで悪い? 狙ってたのは私なのに、良くもまぁやってくれたもがっ!」

 減らず口をなるべく無くして貰う為に、背中に肘鉄を入れる。

「実力差、経験不足、無謀、そんでこのターゲットの価値は激減。とりあえず近場の心臓モツ抜きにつれてくぞ、引きずんの手伝え」

「ケホッ、オェ……。何で……私が……っ!」

 俺は鉈の刃を彼女に向け、彼女の目を真っ直ぐに見据える。

 彼女の闇に溶けそうで鬱陶しそうな、だけれど艶がある長い黒髪と、凛々しげな目鼻立ちからは、こんな仕事をするようには全く見えない。それでも実際に茶々を入れられたのだから、責任くらいは取ってもらわなければ損というものだ。

「分かったわよ……。でもこの周辺に心臓抜きの人なんて……」

「お嬢様かよ、正規の心臓抜きに持っていける時間があるもんか。闇だっての。だから価値が激減なんだよ」

 観光を達成して天寿を全うしたオッサンを引きずりながら、俺と同業のトーシロちゃんは裏路地へと降りていく。

 

 狂気と陽気の入り交じる無法国家ブロクテミスでの、悪ふざけの真骨頂だ。

だけれど狩る側も狩られる側も金になる。だからこそ俺みたいな人間が食っていける、やっていける。

 だが、目の前にいるトーシロちゃんの震える手は、やっていける手では無いだろう。死への恐怖では無く、単純にオッサンが重いのかもしれないが、それだとしてもやっていけない。

「面倒な話は、この街じゃ一番嫌われるんだけどな……」

 自分が殺したのにも関わらず、死んだオッサンから目を逸してソロソロと歩く彼女を見て俺は小さく呟き、俺は馴染みたくもない馴染みの心臓抜きの元へと彼女を急かした。







 最後の方は書けていなかったので適当に加筆しました。

 本当に最後の数行だけです。多分本当に書くならもう少し加筆するかもしれませんが、とにかく、プロットから考えると全く言う事を聞いていません。


 ということで、プロットの言う事を聞かない人間の例だと思ってくださればと思います。


「で、あの女の子は誰なんだよ兄弟」

「知らねえ、ヒロインじゃねえか?」

「プロットには?」

「一切出てこねえな……」

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