18 ヴァーチャルオリンピック
その日曜日の朝、チーム緑ヶ丘のメンバーは、レインボービルの前の広場で集合した。それぞれに軽い運動ができるスポーツウェアを着て、イラストレーターの時子がデザインしたバッジを胸につけ、チーム意識を高めた。実はこのバッジは、ショーンさんの作った超小型のカメラとダークゾーン探知センサーが組み込まれているのであった。このセンサーで重要なものが発見されると控えているショーン刑事が出動することになっている。今度はこの緑ヶ丘の駅周辺の町おこしではなく、日本の各地から色々な代表が集まるということで自分たちはこの街の代表と言うつもりで、名前はチーム緑ヶ丘となった。今度のテーマはハワイと言うことで、ハワイの街を歩いたり買い物したり、グルメ体験だけでなく、ハワイの海に潜ったり、上空を飛んだり、溶岩の火口に近づいたり、まあ普通にできないような体験がヴァーチャルでできるのである。
さらにスマホの登録を全員がした。これをしておくと、バーチャル時に自分のスマホの画面がそのままつながり、買い物も自由にできるのだという。
逆にゲームに参加していなくてもプレイ中のゲームをスマホで見ることもできるのだ。
各種目にそれぞれ参加チームがあり、技を競うが、ネットではどの種目が面白かったとか映像がきれいだったとか、参加者を楽しませた開発会社やイベントグループに人気投票が行われるオリンピックでもある。
物語は、日本人に大人気のハワイが宇宙人に征服されるという荒唐無稽な話である。ただそのまま征服するのでは戦争ドラマになってしまう。宇宙人連合は、その超過額を使い、ハワイ総合観光会社HSKと言うのを作り、超過額でどんどん金を儲け、ハワイ全体の観光を裏から支配するという話だ。
最高級ホテルを宇宙人たちが貸し切りにしたり、プライベートビーチを占領したりするのだが、それは全部合法的なやり方で、軍も警察も手出しができないのである。また地球人の中にも宇宙人を利用して金儲けをするやからも現れ、事態はだんだん複雑に入り組んでくる。大量の資金が宇宙人に流れ、本当にハワイが乗っ取られるかもしれないのだ。チーム緑ヶ丘は怪人たちを倒しながら、宇宙人連合のハワイ本部に向かい、奴らの野望をつぶすのだ。
チーム緑ヶ丘はまず顔の画像を登録し、ヴァーチャルヘルメットを装着した。そしてプレイするときのコントローラーの希望が聞かれて、1人1人にぴったりのコントローラーが複数用意された。そしてまずは開会式。全国から集まった色々の競技のチームが集まってきていた。中にはサーフィンの競技でボードコントローラーで参加するチームや、崖のぼりのボルダリングの参加者もいた。すべてヴァーチャルで行うそうだが、一体どんな競技になるのだろう。
そしてRPG部門の3チームも集まってきていた。静岡県の清水市のチームツナ缶、そして新潟県の魚沼群のお米帝国である。
だが、そこのリーダーたちの間で出た話題はどうも何か見えない力に邪魔されているというおかしな話だった。このままではどのチームも最後まで行けないのではないかと言う不安に包まれていた。
本当なら8チームほど出ているはずのチームが3チームに減り、みんな途中で何か邪魔が入り、実力が発揮できず、どんどん脱落してしまうというのだ。タイゾウさんも、自分たちの予選でも妨害のようなものがあったと報告、みんなでどうしようかと話し合った。その結果、タイゾウさんが、最終面攻略メモをコピーしてみんなに配りだした。
「もし最終面まで行ったときにこれを見れば攻略がかなり楽になるはずだ」
「3チームが全部最後までクリアできるように頑張りましよ」
3チームのリーダーたちは意気投合し、がぜん盛り上がってきた。
「それではRPG部門、スカルマスク危機一髪の参加者の方、時間になりましたのでメンバーを確認の上所定の位置にお進みください。
皆の緊張が高まる。みんなはホールのスタートラインに立って時間を待つ」
「3,2,1,0スタート」
その瞬間視界がすべて入れ替わる。そこは衛生上の宇宙船の中になっているではないか。大きなスクリーンに、雲が渦巻く巨大な地球が見える。そこに船内放送が流れ、チーム緑ヶ丘は、船内のFルームに行くように指示される。みんなは普通にドアから廊下に出て4階の個室F室に向かう。だが、目に見える風景はすべて宇宙船の船内に置き換わっていて、仲間もすべて体操着ではなく、宇宙船の隊員の服に代わって見えている。なんかとても不思議な感じだ。
「それではチーム緑ヶ丘は小型降下艇に乗って地上に降下してください」
時子、幸花、タイゾウ、ホノカ、サトミ、シオリ、リン、キヌ、大河の隊員はそれぞれ操縦席の椅子に座る。思うに本当はバーチャルドリームランドのあの個室のいつもの椅子に座っているだけなのだが、目の前には宇宙空間と大きな地球、そして目の前には操縦席とたくさんの計器類が並んでいて、異空間に来たようである。
「では時間です、降下艇、母船より切り離し、地上に向けて出発します」
そのとたん、ドドーンゴゴゴーという発射音とともに、椅子が振動し、地球がどんどん大きくなってきた。
「ではこれからキャプテン方式でパラシュート降下を始めます。今から30秒以内に所定の位置に着きパラシュートバッグをきちんと背負ってください」
キャプテン方式と言うのは、全員が体験するのではなく、チームの代表が体験し、みんなはその映像だけを共有する方式である。
「ではキャプテン、進み出てください」
みんな顔を合わせて誰が出るのか様子を見ていた。さっき登録した顔の画像がもう使われていて、ヘルメットごしに誰かわかるようになっている。
でもスカイダイビングなんてさすがに誰もやっていない。仕方がないのでタイゾウさんや大河さんが手を上げようかと迷っていた。だが 度胸のある女子がちゃんといた。
「私が行きます。お任せください」
なんとすっくと立ちあがったのはメガネの女子、時子だった。自分はイラストのほかに特に特技はないので、いざとなったら自分がやるというその覚悟だけで立ち上がったのだ。
すると画面が動き出し、降下艇の端へと位置が変わり、そこの降下用ゲートがゆっくり開き始めた。ゲートの外は風がうなりを上げる。高度数千メートルだ。するといつからいたのかさっと乗組員が進み出て、時子にリュックのようなパラシュートを取り付ける。
「これがパラシュートを開く装置です、通信機の音声に合わせて開いてくださいね」
「このリアルな迫力、とてもヴァーチャルとも思えない。ここから飛び降りろっていうの?ええい、死ぬことはないんだから、やるだけやったるわ」
時子は乗組員の指示に従って所定の位置に着くと3、2、1、0のカウントダウンとともにゲートの外に飛び出した。
「ギョエー、な、なんなのこれ?!」
驚いた。脚が浮いた。ものすごい風が体にぶつかる。なんと床に取り付けた巨大扇風機の風が本当に時子の体を下から浮かせていた。そう、この部屋は巨大扇風機の仕掛けのある部屋だったのだ。そのとたん、時子の視界は本当に数千mを降下する画面に変わった。
「わあ、すごーい」
他のメンバーの視界も時子と同じになり、みんなの席にも風が吹きまくる。
「うわあ、すごい、海が、島があんなに小さいものがだんだん近づいてくる」
すると時子のヘルメットに姿勢をとるイラストが浮かび上がる。
「少し左に流されています。次のような姿勢をとって、少し右に移動します」
慣れてくると壮大な風景の中でだんだん気持ちがハイになってくる。ハワイ諸島の観光客がよくいく6つの島の中では飛びぬけて大きく5つの楯状火山があるハワイ島が見えてくる。この島は東風の貿易風の影響を受け、島の東側は降水量が多く、熱帯や亜熱帯の気候になり、西武は乾燥して砂漠もあり、斜面にはあの有名なコナコーヒーの農園もある。4000m以上の山も多く、高山機構の場所もある。熱帯から砂漠、高山、温帯に近い場所もある多様な気候を持った大きな島だ。
やがてハワイ島の5つの火山や都市がだんだんわかってきて、そのうち着陸地点の表示が点滅する。どうやら海岸沿いの広い、牧草地らしい。
「ではパラシュートを開きます、3、2、1、0」
パラシュートを開く音がして風が弱まる。時子はしばらくして無事に床に足が付き、やがてみんなも一緒に海風の吹く牧草地に着陸する。船内放送がまた聞こえる。
「それではこれから海辺の秘密基地に向かい、敵の目をごまかすため、潜水艇で別の海岸に上陸します。皆さんは別の部屋に移動です」
みんなはまた立ち上がり、部屋を出て、別の部屋に移動する、廊下を進んでC室に行くのだが、ここもきちんと海岸の小道を通り、あやしい黒いドアを通って秘密基地に入っていく。中には人数分の1人乗り小型潜水艇が並んでいてみんな椅子に座る。全員が座ると、透明な防水カバーが後ろからかぶさってきて、エンジン音とともに静かに海へと進んでいく。そして潜水、波しぶきに逆らうように進んでいたのが、突然2m、3mと潜っていく。すぐにスピードをあげて沖へ沖へとまっしぐらだ。横を見ると仲間の潜水艇が編隊を組んで一緒に進んでいく。もうすぐに海底は見えなくなり、真っ青な世界だけがそこに広がる。
「上陸までの10分間、好きな番組をご覧になれます。1番組は5分ほどです」
画面に選べる番組のリストがざっと出る。1分の間に選ばなくてはならない。
1;敵の基地までの移動方法と戦闘場所の地形。
2;予想される敵の怪人の概要。
3;ハワイの海の生き物、巨大生物からサンゴ礁の生物まで。
4;ハワイの観光、観光名所、特産物、フルーツからナッツ、コーヒーまで。
5;ハワイの観光、歴史、カメハメハ大王物語。
6;ハワイの自然、火山編。
7;ハワイの自然、固有種や貴重な生き物。
するとすぐにタイゾウさんから1番と2番は俺がよく見て覚えておくから、あとは各自好きな番組を見ていいよ、と連絡が入る。
だがまずほとんどのメンバーは3番のハワイの海の生き物を見る。なぜかと言えば、さきほどから潜水艦について小型のイルカの群れが泳いでいるのだ。そちらに目をやると、詳しくは3番のハワイの海の生き物で解説という文字が出てくるからだ。
早速海の生き物を見ると、すぐ横で泳いでいるのは小型のハワイアンスピナードルフィン、ハシナガイルカだということがわかってくる。海の生き物にしておくと、画面の端を時々通りかかる大きな生物の方にぐっと近づき、大迫力の画面でそれを解説してくれた。
「あ、細長い魚がいる、あれは何だ」
ハワイでマヒマヒと呼ばれているおいしい魚、シーラだ。
今度は潜水艇のそばにイワシの大群がやってくる。
「うわ、は、速い」
そこにものすごいスピードで飛び込んできたのは、口にフェンシングのような剣を持っているイシグロカジキ、ブルーマーリンだ。剣によって傷ついた小魚は食べられてしまう。と、頭のすぐ上を巨大な影が通り過ぎる。
「うわ、マンタだ。こんなにでかいの?」
さらにその後ろから最大の魚類、ジンベエザメまでやってくる。思っていたよりさらにでかい。水族館ではあまり大きな個体では飼えないので2~3mの子どもの個体が多く展示されているが、ヴァーチャルな海は制限なしだ、マンタは横幅5mから8mの個体、ジンベエザメは12mの個体が頭のすぐ上を通り抜けていく。
次に来た巨大魚類は、ジンベイザメよりは小さかったが、その迫力にみんな声を失った。ヴァーチャルなのに体が震えた。そう6m以上あるそれはホオジロザメ、ジョーズだった。そいつは威圧感を持ってゆっくり近づき、こちらをじろっと見ては、ゆっくりと去っていった。巨大で鋭い牙が見え隠れする、本物じゃなくてよかった。
やがて見せ場のザトウクジラだ。深いところで、数匹で泡を吐き、泡に驚いた小魚を1か所にまとめて、今度は数匹のザトウクジラがいっぺんに浮かび上がってヒゲクジラの大きな口ですべて飲みつくしていく。どの個体も15mほどある、こっちまで飲み込まれそうだ。普通ならこんな近くから見ることは出来ないのだが、ヴァーチャルだから大迫力の光景がすぐ目の前で繰り広げられるのだ。
やがて潜水艇は少し浅い方に方向を変える、今度は海藻の生える砂地やサンゴ礁も見えてくる。
ここでまた先ほどのメニューが選べる。時子はちょっと考え、ついまた生き物系にしてしまう。
7;ハワイの自然、固有種や貴重な生き物。
するとサブメニューが指定できる。
1;ハワイの海の哺乳類。
2;ハワイのサンゴ礁の熱帯魚。
3ハワイの海のカメ。
時子は迷ったがハワイの海のカメを選択、わくわくしながらサンゴ礁の近くに進んでいく。
ハワイでは海ガメはホヌと呼ばれ、昔から神聖な動物として保護されてきたので、平気で人間のそばにやってくる。あの観光客でにぎわうホノルルのワイキキビーチでも野生の海カメを見ることができるのだ。ウミガメは全体に雑食性だが、餌を食べ分けて、棲み分けしている。カメによって好物がある。
まずはアオウミガメ、砂地に生えている海草をよく食べている。それから頭の大きなアカウミガメ、かむ力が強いのか、岩場のエビやカニを好んで食べている。
「なるほど、近づくと餌をとる様子なんかが映るのね」
少し小型のタイマイはサンゴ礁を何度も突っついている。なんとサンゴや海綿を食べていると解説が出る。
ハワイにはほかに、アオウミガメによく似たクロウミガメや貝やヤドカリなどをよく食べるヒメウミガメもいるという。
「え、このカメは大きい」
最後に出てきたのは世界最大のウミガメ、オサガメだ。皮でできた流線型の甲らは2mあり、両方のヒレを広げると3m近くになる。 オサガメは海に浮いているクラゲを見つけるとさっと近づきどんどん飲み込んでいる。クラゲ好きのようだ。
シオリちゃんやサトミちゃんは海の哺乳類を見たらしく、世界で唯一熱帯に住むアザラシモンクアザラシがかわいかったね、などと話が盛り上がっていた。
ちなみにハワイアンモンクアザラシは、皮膚の日だが修道服のフードに似ているのでモンク(修道士)アザラシと言うらしい。
みんなは海岸の道を歩いてまた別の部屋に移動だ。すると今度は椅子ではない、あの立ったままハンドガンコントローラーで戦うプレイベースだ。そう、ついに怪人との戦いなのだ。
見てみれば、プレイベースに立った途端、みんなのコスチュームが瞬間で変化した。なんとタイゾウパパがあこがれのスカルマスク、
娘のホノカちゃんがスカルマスクの相棒スカルジェニー大河さんが第2シーズンの最強のライバルにして今は味方になった死神貴族オルパだ。銀髪の二枚目で、驚異的な射撃の名人だ。そして時子が、防衛力が高くてなかなか死なない、アイアン刑事ブロッケン、サトミとシオリがセクシーな女忍者ヌエと忍者道具を作るカラクリ師の黒猫博士、リンが格闘家アルティメットリリー、キヌがスナイパーのセシルボウマン、幸花がギャラクシア女王の戦闘体だ。すべてこの第3シーズンの最終話のころの宇宙刑事のメンバーだ。
「タイゾウさん、なんで宇宙のSFに忍者が出てくるの?」
サトミとシオリは言われてみれば日本的な忍者軍団のコスチュームを着ている。
「ははは、実はこのドラマをやっている頃に妖怪や忍者が大ブームでね、急遽忍者や妖怪がテコ入れで第3シーズンにねじ込まれたんだよ。忍者の名前がヌエだろ、この2人は忍者かつ妖怪なんだよ。しかも、所属は宇宙警察だから、黒猫博士が発明した科学忍法も使う現代風忍者でもある」
するとシオリが「日本妖怪パノラマ図鑑」を、バッグからそっと取りだした、原作と同じだと妖怪を操る忍術も出てくるので、一応学習してきたらしい。
今度はみんな、白いビーチに続く道とビーチの裏の林に続く道の分岐点で立ち止まる。このままだと美女たちがフラダンスのイベントをやっているビーチの方に進みがちだが、早速タイゾウパパと大河さんが顔を見合わせうなずく。
「やはりここは林の道だね」
「そっと近づいて、林の中から奇襲攻撃だ」
その頃ビーチの奥では、海の怪人たちが集まっていた。隊長のクラッシュパンチカイザーの異名をとるシャコ怪人が尋ねる。
「宇宙警察の奴らはいつになったら来るのだ。逃げられたのではないのか」
体色を変幻自在に変え、ミサイルのように長い腕足を打ち出すコウイカ怪人マジカルキャノンが答えた。
「少し前まで位置確認ができていたのは間違えありません、今確認中です。お待ちください」
こちらが作戦で小型潜水艇に乗って上陸場所を移動したのがズバリ当たったようだ。
体中に太い毒針をはやしたハリセンボン怪人ニードルキングが笑う。
「ブハハハ、俺たちに恐れをなして逃げたに決まっている、臆病者どもが」
「まだ奴らは俺たちの姿が見えないので油断している」
スカルマスクのタイゾウさんは敵の気を付けるべきポイントや攻撃の作戦を手短に全体に連絡して、いよいよ作戦スタートだ。
伸びる触腕や触手で敵をからめとるコウイカ怪人、強力な針を腕から打ち出し、針を逆立てて体当たりしてくるハリセンボン怪人、そして壁もぶち抜く破壊力のパンチを打ってくるシャコ怪人、この3人は一緒になると近距離中距離、遠距離のどこからでも攻撃が強力で、手に負えなくなるので、3人を同時に攻撃してバラバラにする作戦だ。
こちらの出場人数は、向こうの人数と同じか1人多いところまでは認められる。
まずはスナイパーのキヌちゃんのセシルボウマンが、ハリセンボン怪人をライフルで狙う。
「く、いたた、誰だ、すぐに後悔させてやる」
ダメージに怒り、林の中に毒針を飛ばし返してくるハリセンボン怪人。
「お前のパンチなど怖くない、オレと勝負しろ」
そう言って隊長のシャコ怪人を挑発しながら飛び出したのはなんと時子のアイアン刑事ブロッケンだった。超合金のロボットボディだが、他のキャラより2回り大きく2m近くあり、怪力でその上に両腕にシールドを持ち、ほとんどの攻撃は受け付けない。そして時子のすぐ後ろには大河さんのオルパが影のようにステルスモードでちゃんとついている。そしてタイゾウさんのスカルマスクはスカルガンを発射しながらコウイカ怪人に忍び寄る。
さあ、どうなる?
スカルマスクはコウイカ怪人のすぐそばまで行き、スカルガンを構えてバット飛び出た。
「コウイカ怪人、覚悟しろ!えっ!」
だがヤシの林から飛び出たスカルマスクの目の前からコウイカ怪人は消えていた。
「しまった」
コウイカ怪人はビーチの砂の色と同じに体色を変え、地面に伏して砂と判別しにくくなっていたのだ。そして下から触腕と触手でスカルマスクに絡んでくる…。
時子の方はとんでもないことになっていた。
「そんなに俺のパンチが欲しいのなら眼にもの見せてくれる」
腕の太い筋肉がキリキリと縮み、弓矢のようにさっと緩められた瞬間にものすごいパンチが発射される。シャコのハードパンチだ。 時子はタナトスの指示通りに両腕のシールドをクロスさせてパンチをガードしたのだが、
「どわあああー」
シールドでガードしたまま、重いロボットボディは吹き飛ばされていた。しかも気が付くとパンチを受けた腕のシールドは破壊されていた。
「俺のパンチの威力を思い知ったか!」
とどめを刺しに迫るシャコ怪人
だが時子の影に隠れて近づいた大河さんのオルパは、その瞬間、さっと身をかわし、シャコ怪人の真横から必殺のタナトスキャノンを炸裂させていた。
「グォッ!」
思わぬ大ダメージを追ったシャコ怪人はリタイアで、揺れながら消えていく。
さらに目の前のコウイカ怪人を見失ったスカルマスクは、触腕と触手にからみ取られる直前に、当然のように銃口を足元に向けて弾丸を発射していた。コウイカ怪人の形に地面が変色していく。さすがタイゾウパパ、怪人の能力をきちんとわかっていた。
「くそ、まさかコウイカとシャコがこんなにすぐにやられちまうとは、覚えていやがれ!」
ぶつぶつ言いながらハリセンボン怪人が姿を消していく。
するとすぐそばのビーチで水着の美女がフラの音色とともに、勝利を祝う踊りを踊りだす。
画面に大きく勝利が表示される。
「やったー、1回戦突破だ」
きらきらまぶしい、ハワイ島の白いビーチで戦いは始まったのだった。
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