第152話 新規プロジェクトの提示と著作権交渉など(最終話)
あれから一週間経った。
ピーターが入れ替わった偽(にせ)パーチン大統領は、演説通り軍隊の撤退を進め、ラシアとエクライナの国境線は、(自称)特別軍事作戦開始前の状態まで戻った。
但し、その8年前にラシアがクリミアに侵攻したエリアについては、落とし所を探るため両国で今話し合いが行われている。
その問題に並行して、今回の侵攻に係るエクライナの損害についての賠償問題が、両国のオブザーバー立会の元、慎重に進められている。
ラシアのオブザーバーは中つ国、エクライナのオブザーバーはイメリカだ。
この政治問題がどう決着するか、俺には分からないし関与するつもりもない。
こんなことを考えること自体が
とは言え、この1週間、普通の高校生ライフを送って来て、週末には初めて沙織とデートをしたりして、あのスーパーマン的感覚はだいぶ薄れて来た。
もうラシア問題について俺が考える必要など無いのだ。
沙織とはデートもした位だし、交際は順調だ。
その後、しのぶとも、LINEの交流は続けている。
LINEで裸の写真を送れ、などといった馬鹿な行動や、それに類するハラスメントなども一切することはなく、考えたこともない。
恋人の妹としての良い関係を普通に築いている。
ともあれ、沙織は俺が要求もしてないのに、際どいポーズを自撮りした写真を送って来たりして、俺をからかってくる。
まあ際どいと言っても、ちゃんと一線を引いて、そこを超えないさじ加減が沙織の凄い所だと思う。
さて、先週の約束通り、今日も学校が引けてから、宮坂姉妹はおれんちにやって来た。
母さんも、女子を連れて来る俺に慣れて来たのか、からかうようなことも無くなった。
言ったとしても、コウタ、青春してるわね、くらいがせいぜいである。
今夜、エターナルから依頼されて、フライが最初に提示したのは、新規プロジェクトではなく、著作権の売買契約だった。
何でも、俺達が異世界に行ってる間の映像記録があって、エターナルでは特別番組として、それを編集してCM付きTV放送や、有料配信をしたいらしい。
映像は、あの特殊スーツによって自動記録されていた。
エターナルでは、今まで発見されてこなかった異世界について、異常なまでの関心が盛り上がってるそうで、異世界の生活スタイル、建築様式、政治制度などは、各方面から注目されているらしい。
特にエンタメ性が高いとされているのが、冒険者の存在、様々な魔法、魔物、ダンジョン、神獣である。
異世界探検物語は、シリーズ化できるコンテンツとして価値が高いと
特にいくつかの戦闘シーンについては、著作権、肖像権問題をクリアしないと番組制作が困難である。
そこで、俺達からこの前の異世界探検全般の著作権を買い取りたいという話になったのだ。
不足するシーンと派生するシーンは、エージェントを派遣して映像を新たに記録したり、CGを駆使すれば番組を作れるらしいが、人気の集中が予想されるマモタラとの戦闘、コボルトとの交渉、ウルデスとの心の交流などについては、出演者たる俺達からの権利譲渡が不可欠だと言う。
俺達は三人で話し合った。
番組が地球で流されることはないという条件で、俺達は異世界に関する著作権交渉に応じることにした。
権利譲渡の金額は、何と、一人当たり10億円!
三人で30億円!
そんな金額を一度に受け取ったら、税金もすごいし、とは言っても、税金を日本に対して本来払う必要は感じない、もし払わなきゃいけないとしたら、払う先はエターナルか、異世界に対してだろう。
若くして大金を得ることで、俺達の考え方や生き方が根底からおかしくなってしまいそうなので、金は老後の年金払いにしてもらうことにした。
これで、老後は安心、安泰w
学校卒業後の生活費は、エターナルとのプロジェクト契約の報酬で賄うことにするつもりだ。
両親に就職先や、仕事の内容について訊かれたらどう説明すべきかという、難しい問題はこれから考える。
一応そこそこの大学には進学して、在学中から新興の総合商社にでも就職したことにすれば良いか。
そして、エターナルからフライを介して提示された新規プロジェクトの幾つかは、こんなものだった。
●異世界との貿易
異世界の珍しい品を輸入する為に、現地にルートを作る。
これは、ロクシーやマイクと提携すればできそうな気がしたので、引き受けることにした。
●魔物の捕獲
エターナルでは、その世界に影響を与えない範囲で、鉱物、植物、動物の収集をしている。
それは地球においても、厳重な数量制限を設定した上で既に実施されている。
動物に関しては、人間は厳格に除外しているそうだ。
人間を除外しても、必要なら個人と秘密契約を結んで、報酬と引き換えに、その個人を招待して見世物にすることもやっているらしい。
これが
さて異世界の発見に伴い、異世界の魔物の捕獲に大きな需要が発生した。
もちろん数量制限の自主規制を掛けた上での収集が計画される。
これについては、相対的に危険度が低くて、ペット化が期待できる、スライムの捕獲だけを引き受けた。
●新たなダンジョン探検の番組出演
これは断った。
危険度が高いし、魔物とはいえ必要もなく殺したくはなかったからだ。
ダンジョンを探検すれば、命のやり取りをすることになるから
戦いのない、ダンジョン探検に需要があるとも思えないしな。
●異世界からのタレントスカート
これは、ぶっちゃけキャシーをタレントにして、娯楽番組に出演させたいということらしい。
ネコ系獣人族は、プロデュースのやり方によっては、人気が沸騰しそうだという思惑があるようだ。
この案件については、キャシーと話し合ってみないと分からないので、タイミングをこちらに預けてもらうということで、保留することにした。
これからも、また別のプロジェクトが提示されれば、その
また俺達三人は、エターナルと一致して交渉したり契約する為に、個人事務所を作った。
その事務所は、三人が共同経営者であり、それぞれが所属タレント、所属社員になる仕組みだ。
事務所の方針は、当然ながら三人の会議で決める。
こうして、俺達は今後も、地球の人に知られぬ所で、エターナルとの関係を続けていくのであった。
''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''「ハエと美少女」の物語、これにて完了'''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''''
長いストーリィをここまでお読みいただき、誠にありがとうございました。
千葉の古猫
ハエと美少女姉妹 千葉の古猫 @brainwalker
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