きのぬけた歌とまのぬけた歌

君足巳足@kimiterary

そんなつもりじゃなかった日々の晴れ間と聴け

 間引かれてしまった方が好きだった 気の抜けたうたと間の抜けたうた





 見も知らぬ新入社員の処女作を謳うプライベートブランドを買う





 心意気は 買うけどちょっと きみのその 五歳の手には 過ぎた肉だよ





 贈られるつもりで生きてみたくなり、リボンを巻いて、とくべつになる。





「3000円ぴったりです!」と弾む声に 負けて受け取る有料袋





 0円のスマイルをここで取得して あいつに渡す そんな裏技





 小さじからこぼれた分が大さじにちょっと収まりきるかあやしい





 この香り、「  」みたいだねと喩えたら「循環参照です」とエラーが





 寝ぼけ目で縁を切る気で出た電話 縁者が死んだ? や、そんなつもりは





「『天国』に十時集合」と母の声 葬儀場には攻めた名前だ





「なんとなく仏教式で」と天国に怖いものなしの注文が飛ぶ 





「塩をして時間をおいて焼くだけで、なんでも美味い」と遺書が言うには





 百均で当座しのぎに買われてた茶碗が位牌の前が定位置





 線香らしい香りの線香 VS 紅白のアロマキャンドル @和室





 四分の五倍の速さで聴いた歌 時すでに遅しすでに涙は





 あのときのちょうど十倍 封をする 笑顔とあいつに祝儀袋を





《塩をして時間をおいて焼く》界の ベスト更新となりシェフを呼ぶ





「『天国に一番近い島』へとハネムーン」 おれひとりだけが吹き出す言葉





 いつぞやの五歳は逃したあの肉を手に取る(ただし「半額!」とある)





 さあみんな、好きなものひとつ選んでね。出来たらそれを奪いあってね。

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