読書

11. アイヌ文化を知りたくて【書籍紹介】

真野魚尾 (まの・うおお)です。前回の話題は、主に北海道を舞台とした漫画『ゴールデンカムイ』でした。その冒頭で、自分とアイヌ文化との出会いについても少し触れていました。


『サムライスピリッツ』のナコルルがきっかけだともお話しましたね。前々回のゲーセンの話題ともリンクします。1990年代、真野が中高生だった頃です。


その頃にはすでに小説を書いていて、参考資料に世界中の神話や宗教、言語や文化などの本を読み漁るのが習慣化していました。途中からは作品に反映されるか否かよりも、知的好奇心の方が優勢になっていた節もありますが。


今回はそんな中から、真野がアイヌ文化を知る助けとなった本を5冊ご紹介しようと思います。




◆『アイヌ神謡集』知里幸恵


明治~大正を生き、二十歳を待たずして夭逝した著者が、その瑞々しい感性を通してカムイの伝承〝ユカㇻ〟をうたっています。ローマ字表記のアイヌ語と日本語訳が併記。生き生きとしたアイヌの世界観を肌で知るには必読の書です。




◆『アイヌ語入門』知里真志保


副題「とくに地名研究者のために」にそぐう内容。著者は知里幸恵氏の弟。出自ゆえの矜持もあるのでしょう、他の研究者への批判も目立ちますが、論は的確で用例・用法も充実しています。アイヌ語を学ぶ第一歩に相応しい名著です。




◆『アイヌ民族』本多勝一


初回で紹介した『日本語の作文技術』の著者でもあるルポライターの作。500年前の北海道を舞台にハルコロというアイヌの女性の一生を追体験する形で描かれた物語は石坂啓の漫画『ハルコロ』(※)の原作にもなっています。




◆『アイヌ歳時記 二風谷のくらしと心』萱野茂


アイヌ出身者として文化を伝え継ぐことに生涯尽力した著者が、自らの体験を元にアイヌの暮らしや宗教観を丁寧に綴っています。平易な文章、写真・図版も多数あり。自叙伝的内容の『アイヌの碑』も合わせて読むとより理解が深まります。




以上は真野が当時読んでいた本が主なので、現在では入手のしやすさはまちまちです。


知里幸恵『アイヌ神謡集』は青空文庫で読めるようです。

本多勝一『アイヌ民族』は現在未電子化ですが、長らく絶版だった漫画『ハルコロ』は近年復刻され、電子書籍化もされているようです。

萱野茂『アイヌの碑』は完本として復刻・電子化されています。




新しめの本ではこちらがおすすめです。




◆『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』中川裕/野田サトル


著書は『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修者。漫画のコマをそのつど引用し、内容に沿って語られているので、原作読者には最適のアイヌ文化入門書です。内容は広範に渡り、寄稿コラムも合わせて読み応えも充分です。




ここまで書いておいて何ですが、真野はアイヌ関連の要素を自作に直接反映させたことはなかったりします。強いて言えば、作中のオリジナル言語を作る際に参考元の一つとしてアイヌ語を選んだぐらいでしょうか。


ですが、それ以上にアイヌの人生観・宇宙観からは多くの大切なことを学びました。今回取り上げた著書を読むだけでも、彼らが伝統を重んじるのと同時に、時代に応じた柔軟な考え方を持っていたことが分かります。


書籍を通して間接的ではありますが、アイヌ文化の一端に触れた者として、謙虚さと他者への敬意、そしてユーモアを常に忘れず生きていきたいものです。




(※2024/01/24追記)


以下に漫画『ハルコロ』の感想を書きました。


★72. 気まぐれ積み本崩し(5)『ハルコロ』『やが君』アンソロほか【漫画】

https://kakuyomu.jp/works/16817330658975712480/episodes/16818023212371078528

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