98. 真野魚尾、叡智と向き合うの巻【番外編】

真野魚尾(まの・うおお)です。先日、1年余り連載していた長編小説を完結させたのを機に、一度考えを整理してみようと思い立ちました。



◆変化する読者の意識


当エッセイでは様々な創作物を取り上げていますが、そんな作品のレビューや感想をネットでながめていて気付くことがあります。


過去の作品・連載期間の長い作品ほど顕著けんちょな傾向なのですが、読者・視聴者の評価が、近年になるに従い、目に見えて厳しくなってきているのです。


理由の一つとして、当時は許されていた表現――特に性表現・ジェンダー表現――が、現在の読者には受け入れづらくなっているであろうことが思い当たります。


重要なのは、こういった意識の変化が、表現者の端くれである真野にとっても他人事ではないということです。作者としては勿論、読者としても。




◆自作をかんがみる


例として、真野が初めてWEB小説サイトに投稿した和風ファンタジー『マレビト来たりてヘヴィメタる!』を挙げます。


★【旧版】マレビト来たりてヘヴィメタる!

https://kakuyomu.jp/works/16817139557298762741


★マレビト来たりてヘヴィメタる!〈鋼鉄レトロモダン活劇〉※改訂版

https://kakuyomu.jp/works/16817139558812462217


公開前・公開後と改訂を繰り返している作品ですが、ベースとなっているのは2018年初頭に書き始めたプロットです。


今読み返してみると、人物のヘイト管理や脇役の余分な掘り下げ、ストレス展開の処置など、未熟な部分が多々あります。ですが、それらはこの際、脇に置いておきます。




◆エロスはどこまで許容範囲?


問題は前述した、性表現・ジェンダー表現についてです。


後者に関しては、とあるシーンの「女々しい」という表現が1箇所。旧版では日和ひよって別の表現にしましたが、やはりこれ以上に相応しいニュアンスはないと思い直し、改訂してあります。


そして前者。性的といっても、直接行為があるわけでもなし、描写的にも全然大したことはないと思うのですが、所詮は作者の主観です。



◇ボーイズサイド


まず、主人公の少年が脱ぎます。4箇所ぐらい。うち3箇所はお風呂場なので、むしろドレスコードは適切です。ただ、事故とはいえ少年の少年がご開帳してしまうのは問題かもしれません。


残り1箇所は冒頭、強制的に全裸です。これには異世界転移の根幹に関わる設定があるので、容易に変更はできません。改稿の度に悩まされました。


他にも、味方男性キャラとの入浴シーンやら、マッチョキャラ数名が半裸になったり……肌色成分の9割は男性です。



◇ガールズサイド


対する女性キャラ、まあ脱ぎません。ヒロインの(自発的)太ももチラリぐらいでしょうか。かなり切迫したシーンなので錯乱気味です。


このヒロイン、チャームポイントの品乳&巨尻を強調したいばかりに、いじりと取られかねない表現が度々ございます。作者の歪んだ愛フェチが暴走した結果です。これもまた独善であることを否定いたしません。


巨乳ネタはほぼ無しです。作者の不得意分野につき……悪しからず。ワンシーンだけラキスケ的なものがありますが、相手は敵キャラです。巨乳は敵(語弊)。




◆それっぽくまとめてみる


たかだか数年の間に、世の中の価値観は目まぐるしく変化しています。それは人類史上未曾有みぞうのスピードであり、真野のような凡人かつ前時代の人間がついていくのは至難の業です。


「価値観のアップデートは必要だよね」という意識と、「しゃらくせえ! 好きにやらせろ!」という気持ちがせめぎ合うアンビバレンスは、常に悩みの種です。


ですが、真野が目指すところは、最初に小説を書き始めた中学生の頃から変わっていません。

「作者には表現の自由を、読者には選択の自由を」。結論はこれに尽きます。




◆最後に宣伝です


ちなみに冒頭で触れた完結作は、上記『マレビト来たりてヘヴィメタる!』の後日譚です。


★くにつほし九花烈伝〈レトロモダン活劇 第二幕〉

https://kakuyomu.jp/works/16817330653807506663


前作の反省を活かし、性的な描写はほぼありません。わずかに匂わせがあるぐらいです。これは別に日和ったわけではなく、作風の違いを考慮した結果となります。


とはいえ、お硬い雰囲気ではありませんし、コメディパートもございますので安心してお読みいただければと思います。

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