雪が溶けるように。

青い世界

序章

雪が降っている。白い宝石は道路に落ちた途端に灰色の水へと変わってゆく。

私は、窓に駆け寄って下を見た。目に映る茶色と白が混じったグラウンドがひどく遠く感じられる。

ここから落ちたら死ぬだろうか。死んだら開放されるだろうか。

家族は悲しむだろうか。友達は、世界は、自分の死を悲しんでくれるだろうか。

それはないな。やや自嘲気味な乾いた笑いが口からもれる。ただ、死が自分を楽にしてくれるということはわかっていた。

足音が近づいてくる。つまらない人生だった。目をつぶる。ドアが開く音がして、足音がゆっくりと、しかし着実に近づいてくる。

目を開ける。

ねぇ、私達――。


いつの間にか雪がやんでいる。誰の声も聞こえない。まるで時が止まったように静かな夜だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雪が溶けるように。 青い世界 @K_bluewater

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る