第3話
「社長ごめんなさい」
頭を下げた。
「まゆさんが無事で良かった」
行政センターからの帰り。信号待ちをしていたら後ろからワゴン車がノーブレーキで突っ込んできた。弾みで軽自動車は横転。まわりに車がいなかったのが不幸中の幸いだった。康介に電話をしても出るわけない。家族より大事な人たちと一緒にいるんだもの。運転席から救出された私は近くの総合病院に緊急搬送された。
社長に電話を掛け車をぶつけられたことを説明すると、社長の奥さんの亜沙子さんが一人で留守番をしている娘を迎えに行ってくれた。
「まだ連絡がつかないのか?」
「はい。何度も掛けたんですが仕事中なのか繋がらないんです」
「仕事先は?私が代わりに掛けてあげるよ」
「あ、でも……」
仕事が休みだということがバレる。一瞬そう思ったけど、康介の会社には私の知り合いもいる。私たちが結婚したとき仲人をしてくれた上司は常務取締役になっている。康介が仕事だと嘘をついて何をしていたかあとで追及することが出来るかも知れない。康介のことだから最後の最後まで認めずのらりくらりとシラを切るだろうから。
社長が電話を掛けるためにいったん廊下に出た。
あれだけの事故でもスマホは無事だった。
康介はあてにならない。こうなったら実家の両親に頼るしかない。メールをしようと画面を操作していたらふと気付いた。無意識のうちに私は康介と女性を撮影していた。
私たち家族にも見せたことがないような笑顔の康介。結婚指輪も外してあった。
包帯でぐるぐる巻きになった足を見ながら、
康介は私と女性、どっちを選ぶんだろ。ふとそんな疑問が生まれた。
住宅ローンに税金に、光熱費や水道代を払うのが毎月精一杯で食費を切り詰めなんとか生活している。
私が働けなくなったらいまよりもっと生活が苦しくなる。どうしよう。そんなことを考えていたら、
「ママ」一華が来てくれた。
「良かったママが無事で………」
「ごめんね、心配を掛けて」
片手で一華を抱きしめると二人して声を出して泣いた。
そうだ私には一華がいる。
一華と二人で生きる道がある。
私は康介と離婚することを決心した。その前に康介とあの女性をぎゃふんといわせてやらないと気が済まないけど。
最悪の一日 彩矢 @nanamori-aya
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