第2話 てんやわんや

 あまねはスクールバックを肩に掛けてスタスタと学校までの道のりを歩いていた。

 色とりどりの閑静な住宅街。郵便バイクがあまねの脇を通り抜けた。

 「おっぱい」

 郵便バイクのお兄さんがさり気なく、あまねに卑猥な言葉をかけた。20代ぐらいの髪をベタつかせたオタク風の若い男だった。あまりにも幼稚な言葉に、あまねは憤慨した。

 「どたまかちわんぞ、このどアホ」

 甲高い声であまねは郵便バイクに向かって暴言を吐いた。郵便バイクはそのままその場を立ち去っていった。郵便バイクが角を曲がるところまであまねはナメクジのような目で睨んでやった。

 てんやわんやな出来事があったが、無事あまねは学校へ到着した。それと同時にチャイムが鳴った。

 「やばっ、はよ教室行かなあかん」

 あまねは教室まで走った。はあはあと息切れがして肩で息をした。

 教室のドアを恐る恐る開けた。

 開けると同時にクラスの男子全員から「ぶぅぅっさいくやなぁぁ」と言われた。

 またかと思った。

 「お前らそれしか言われへんのか」

 「ぶぅっさいくやなぁ」

 男子がまた繰り返した。

 「おんなじこと何回もいうなよ」

 あまねは窓際の一番うしろの席についた。

 クラスの女子たちはあまねの方を見てクスクス笑っている。数人の男子たちはまだあまねに「ぶぅぅっさいくやなぁ」と言っていた。

 なんであたしこんなこと言われなあかんねん。

 もう最悪や。今日もまた最悪な一日が始まるんや。

 スクールバックから教科書を取り出して机の中に入れていると、隣の席の田中達也が、声をかけてきた。

 「今日なぁ、男の転校生が来るらしいで」

 「ほんまか」

 「さっき職員室で俺会ってん。担任の佐伯と校長と転校生の三人で話し合ってた」

 佐伯とはあまねのクラスの担任の先生のことだ。

 「めっちゃイケメンやったで」

 田中達也はそう言った。

 あまねは転校生がどんな子か気になった。

 仲良くなれるかな。ブサイクな自分に心をひらいてくれるかどうかあまねは心配した。

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夏の朝 久石あまね @amane11

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