新しい髪とこれからの作戦

 私が目覚めたのは夕時だった。身体のだるさは消え、すっきりしていたが喉が渇いていた。


 長く寝ていた気がして、ベッドの脇にある時計を見ると二時間程しか経っていなかった。


 部屋を出て客間に戻ろうとするとメイドの人と会い、食事の準備が出来ている事が伝えられた。メイドの人がランさんに頼まれ何度か声を掛けたらしいが、アルちゃんとフォルちゃんがドアの前でメイドさん達を追い返したらしい。



 御気分はどうですか?と言われ、問題は無い事とお礼を伝えた。



 心配だったが、使い魔の子達が私の側から離れず問題も無いようなので、そのまま寝かせて貰ったらしい。


 私はメイドさんにご心配をお掛けしましたと言い、喉が渇いている事を伝え、お水をお願いして夕食を取る為に食堂にむかった。


 食堂にはハワード隊長とランさんがいて、地図とメモを広げてお茶を飲んでいた。


 私が挨拶をすると二人は振り向き、私を見て驚いた顔をした。



「すみません。もう大丈夫です」



 私がそう言うと、ランさんの口がパカっと開いた。



「ロゼッタ。髪。どうしたのー。蜂蜜色が混じってるー!」



 ハワード隊長も頷かれ、驚かれたのか目が丸くなっている。



「具合が悪かったのは魔力の流れのせいだったようです。寝てる間に色々分かりまして、魔力の流れを戻しました。そのせいで髪の毛の色が変化しました。変ですかね?まだ、自分では見てないのですが」


「いいよー。可愛いよー。似合ってるー!前の暗い紺色も好きだけど、蜂蜜色が混じっても可愛いよー。驚いたけど、無事なら良かったー。この子達も心配してたよー。途中から落ち着いてたみたいだけど。何か分かったのかな?いい子だねー」



 ハワード隊長も頷いて、とてもお似合いです。と言ってくれた。


 良かった。


 ジロウ隊長はダンツ男爵と各施設を回っているらしい。ホーソンさんは先程までいたが、飛竜の世話に裏の倉庫に行ったと聞いた。


 二人と話をしているとメイドさんがお水と私の食事を運んできてくれた。喉が渇いている事を伝えたからか、ジュースやワインも置いてくれた。


 ランさんに食事を取ったのか聞くと、お腹空いててもう食べたー、と言われた。ハワード隊長もまもなく王都に戻るので、もう食べたらしい。今は私を待ちながら東の森に撒く薬の相談と店までの往復の相談をしていたと言われた。



「ジェーン嬢、薬は早く撒きたいのだが、一度魔物の調査もしないといけない。今、冒険者達に話を聞きにジロウ隊長がギルドに行っている。普段の様子を知る者が欲しいので、何人か冒険者を雇う事になると思う。薬は魔物の調査後に撒こうと思う。また、領内の病院、教会等にファン草患者の症状の者がいないか調べを出した。そちらの薬は各所に届ける事になると思う」



 私は水を飲み、食事をとりながら二人の話を聞く。



「ロゼッタ、私達は冒険者の人と一緒に魔物の状態を見に行こう。師匠から貰った魔物のお土産、私が鑑定した時はファン草の事は出なかったんだよねー。死んで時間が経ったから分からないのか、私の鑑定では分からないのか。ただ、名前が分からない魔物を鑑定した時に、混乱が出てたんだよー。それがファン草の事なら魔物鑑定に使えるからねー。師匠のお土産の物、調合に使って大丈夫かも気になるしねー」


「師匠からのお土産は、部位ばかりが多かったですから、そのせいもあるかもしれませんね。一体丸ごとは無かったですよね?」


「ううん、一体だけね、蛇みたいな魔物がほぼ残ってるのがあって、名前を知りたくて確認したんだよー。それが混乱が出てたー。私は魔物の確認が終わったら一度店に戻るねー。もう一度、お土産も確認したいし。何か必要な薬なんかがあったら持ってくるよー」



 私は肉を食べながら頷く。



「使い魔便でもいいし、魔蝶でもなんでも飛ばして教えてー。ロゼッタはここで薬作れるなら作って。ダンツ男爵が、薬師協会に話をしてくれるらしいから多分使えるよー。錬金釜使わせて貰って、店に送ってー。私、注文書送るからー」



 私はパンをもぐもぐしながら頷く。凄くお腹が空いている。魔力枯渇していたのは本当らしい。メイドさんがパンのおかわりを持って来てくれ、私は目だけでお礼をした。このパン、すごく美味しい。



「薬を撒き終えたら魔物の様子を見に私も一度こちらに戻るよー。薬師長にお願いされてるしねー。で、魔物の状態のチェックをする。で、また店に戻るー。それを続けようかなー。ロゼッタはどうするー?」


「私は飛竜で何度も往復するのはきついですね。ここで東の森を見たり、コロン領を見ようと思います。しばらくここにいてもいいですか?」


「うん、師匠にも連絡したら、好きにしろって。王都よりも安全かもなって言ってたよ。私達が別れて仕事する事もいいんじゃないか?って。あ、師匠がジルちゃんで何か感じたのかな。ロゼッタに悪りい、忘れてたって伝えてくれ、あと、この間のアドバイス、使えたぞー、だって。何なの?まあ、第四の人が多くいるし、ジロウ隊長もいるしね。コロン領も安全じゃないかな。警護の事もタウンゼンド宰相に魔鳩飛ばしておくよー。じゃあ、そんな感じで動きましょー、ハワード隊長宜しくねー」


「ハワード隊長、宜しくお願いします」


「問題ありません」



 ハワード隊長は私達に頷いた。


 悪りいと言ってくれた師匠にはコロン領の特産品なんかも送ろう。心配掛けたかな。このパンも送ったら喜びそうだな。



「ロゼッタ、今日はもう、ゆっくりしたら?本当に具合良くなったの?大丈夫?」



 私が食事を食べ終わるとメイドさんが食器を下げ、お茶をお持ちします、と言ってくれた。至れり尽くせり癖になりそう。



「魔女になったばかりで調子が悪かっただけですよ。もう大丈夫です。アルちゃんも、フォルちゃんも心配掛けてごめんね。ウェルちゃんも心配してるかも。貴方達からも心配ないってウェルちゃんに伝えてね」



 私が頷く二匹を撫でながら言うと、ランさんはちょっと疑った目をしてたけど、無理しちゃダメよ。と言うだけだった。


 ハワード隊長も、今日は早く休まれた方が宜しいのでは?と言ったが、私は首を振った。



「目も覚めてるので、ちょっと散歩がてら、飛竜さん達に会いに行きます」



 私がそう言うと、ハワード隊長が着いて来てくれる事になった。



「大丈夫ですか?宜しければ支えましょうか?」と手を出され、心配もされたけど、「支えは不要ですよ、病人ではありませんから」と言うと、頷かれた。



 すぐそこだけど、一応警護なんでしょうね。


 ランさんが、ハワード隊長は無口って言ってたけど、話し掛けたらそうでもないよう。



「王都でライラさんと偶然お会いした時に、メリアに旅立たれる事を聞きました。お別れの挨拶はしたのですがこちらに私が来たのでもう本当に会う事がないのかな、と思うと寂しく思います。ライラさんお元気ですか?」


「元気に過ごしているようですよ。メリアに行く準備が大変だと手紙を貰いました。ジェーン嬢、魔鳩を飛ばされたらどうですか?学園の事務方に飛ばせば届きますよ。今月一杯は届くはずです」


「良い事を聞きました。ライラさんに魔鳩を飛ばしてみます。メリアに付いたら手紙を送る、と言われたのですが、無事を祈る手紙とお守りを送ろうと思います」


「姉も喜ぶと思います」



 その後、街で会った時にライラさんに石鹸をあげた事を話したら、ハワード隊長も興味を持たれたので、第五で使ってる物とは違う香りの物を渡した。気に入ったら第五で購入して下さい。と言うと、頷いてくれた。


 話をしていると私が躓きかけてしまい、本当に具合は大丈夫かと聞かれ、結局、ハワード隊長の腕を持つように言われて倉庫迄介助して貰った。チェリアさんから降りた時に足に力が入らなかったな、と思い素直にお礼を言った。それからは、凄くゆっくりハワード隊長は歩かれた。


 石鹸もこれで色々な注文が入るかも。ジロウ隊長にも同じ物をあげよう。第四からも注文入ったらランさん喜ぶかな。


 飛竜が休んでいる倉庫に着くと、ホーソンさんがチェリアさんを撫でていた。私が挨拶するとにっこりと微笑まれ、チェリアさんもこちらをみてウインクをしてくれた。


 私がホーソンさんとチェリアさんに挨拶をしているとアルちゃんがペッと舌を出して後ろを向いてるので、振り向くとハワード隊長がご自身の飛竜のネーロさんにかむかむと髪の毛を食べられていた。


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