魔女の髪は特別な物
私が倉庫に入ると驚いた顔のホーソンさんが礼をされた。
「もう、御身体の具合は宜しいですか?」
「はい、魔力のせいでした。御心配をおかけしました。髪の毛の色が変わりましたが身体に問題はありません。チェリアさんも運んで頂き有難うございました」
私がそう言うと、チェリアさんは頷いた。
「チェリアさん、触らせて貰っても宜しいですか?」
私がチェリアさんに聞くと、優しく羽を撫でやすい様に降ろしてくれた。
「ジェーン嬢がお元気になられて良かったです。髪も素敵ですよ。飛竜は見えない所を撫でられるのは嫌なようなので、チェリアが見える範囲でチェリアが降ろした羽なら撫でても大丈夫です。固いので、強い力でも問題ありません」
「失礼しますね」
私がチェリアさんに声を掛け、羽を触ると、思ったよりも暖かくて、硬かった。ゴムとも違う、石とも違う、不思議な感触だったが、触ると魔力がふわりと動いたのが分かった。
「チェリアさん、大丈夫です。私も魔力が多いので、気になさらないで良いですよ」
私がチェリアさんに話しかけると、チェリアさんはウインクした。
飛竜は魔力が多いのか。朝は気付かなかった魔力の流れが分かる。
本当に魔力垂れ流しだったのね。
チェリアさんは魔力で色々な感知もしているようだった。私が倉庫に入って来たから調べたのかな。魔力を遮断してくれたのが伝わった。
きっと師匠の転移や、ランさんの鑑定、アルちゃんの探知に近い事をしていたようね。
私がチェリアさんと話していると、ホーソンさんが驚いていた。
「ジェーン嬢はチェリアの言葉が分かるのですか?」
「いいえ、魔力の流れが分かるので、それでなんとなく分かるだけですよ。チェリアさんはとても賢い方なので、私が話しかけると魔力の流れを変えて返事をしてくれるのですよ。チェリアさんは凄いですね」
私が言うと、ホーソンさんは嬉しそうにチェリアさんを撫でた。
「チェリアはとても賢いし、強いのですよ。美しい色ですしね」
「そうですね。良かったら、帰りはまたチェリアさん乗せて頂けますか?」
私がそう言うとチェリアさんから、良いと言う返事が来たので、有難うと言って優しく撫でた。
暫くそうやって話しをしていたが、魔女になったばかりで何が起こるか分からない。
私は早めに館に戻ることにした。
帰りもハワード隊長と一緒なのかな?とハワード隊長を見ると、ハワード隊長はネーロさんにずっと噛まれてて忙しそうだった。ハワード隊長に挨拶をすると、もうすぐ王都に戻られると言う事で、別れの挨拶をした。
「ポーション袋を試しに作ろうと思ってます。店の警護に付いてくれた方に渡そうと思ってますが、ハワード隊長も宜しかったらいかがですか?飛竜の刺繍をいれようと思ってますが、黒のポーションバックに黒のネーロさんは変ですかね?」
「是非欲しいです。紺色で縁取りしていただけませんか?」
ネーロさんを見ると瞳の色は紺色だ。
「解りました。縁取りをすれば目立ちますね。では、お気をつけて」
私は杖を出し、魔力を辺りに散らした。ネーロさんは頷いてくれ、チェリアさんはクルルと鳴いてくれた。
ハワード隊長は礼をされ、私は館に戻る事にした。
館までの戻りは一人かと思ったが、ホーソンさんが送ってくれた。
戻りの道で、ホーソンさんに魔女になった事で髪の毛の変化が今起きた事を説明すると納得された。
ホーソンさんのお婆さんが魔女に会った事があり、魔女の髪は綺麗だったと話しをされた事があるらしい。
「ジェーン嬢の元の髪の毛も美しい色でしたが、お婆さんが言っていた意味が解りました。魔女の髪は特別なのですね。変化した所が夜道では光っていますよ。うっすらとですがね。とても美しいです。お婆さんもきっとこういう風に見られたんでしょうね」
「その魔女の名前は分かりますか?」
師匠の知り合いかしら?
ホーソンさんは首を振った。
「名前は伺ってません。幼い頃に聞いた話ですし。お婆さんも幼い頃に見たようですので六十年は前の話かと。お婆さんは、魔女の緋色の髪が炎の様に揺らめいていて綺麗だったと言われていました。ジェーン嬢の髪は星の様ですよ。夜、飛竜で飛ぶ時に星を目印に飛ぶのですが、星も揺らめくのです。お婆さんがお会いした魔女様は緋色の髪と言う事なので、ホグマイヤー様とは違うのでしょうね。絵本ではホグマイヤー様の髪の毛はプラチナブロンドですが間違いないですか?」
「はい、そうですね、師匠の髪は長いプラチナブロンドです。ただ、師匠は髪の毛一色なんですよね。私みたいに二色では無いんですよ。私の髪もまた元に戻るのかもしれませんし、また違う色に変化するんでしょうかね?ホーソンさん、行きでは情けない姿を見せてすみません。ホーソンさんが礼をされた事、誇りに思えるような魔女になります」
「情けない姿は見てないですが。私も礼をさせて頂いた事を恥じないような隊員となります。ジェーン嬢の髪はどちらも素敵ですよ。ホグマイヤー様にいつかお会い出来れば嬉しいです」
館に戻ると、ホーソンさんはまた倉庫に戻って行った。
食堂にいたランさんに、早く寝ます、と挨拶をして私は部屋に戻った。
シャワーを浴びすっきりし、ゆっくりと自分の髪を見た。本当に変化してる。
髪から魔力が流れているのが見える。それが揺らめいて見えるのね。暗い所の方が私の蜂蜜色は目立つから綺麗に見えたのか。
私はフォルちゃんとアルちゃんと一緒にベッドに座りお話をする事にした。
モラクスさんに聞いた話をすると二匹は頷いた。魔力を貰う事は好きで、大きくなりたいらしい。
「今日は疲れてるから魔力を上げれないけど、魔力が落ち着いたらあげるからね。ランさんが店に戻ったらウェルちゃんもこちらに呼びましょう。皆で大きくなりましょうね」
二匹は頷くと私の側に来た。
「フォルちゃんはそういえば何か得意な事はあるの?アルちゃんは闇魔法、ウェルちゃんは水魔法が得意だったの」
私が言うと、フォルちゃんはベッドをトンとおり、ワオンっと鳴いた。
一瞬耳がキーンとしたが私が辺りを見回すと部屋の中が薄い膜につつまれていた。
「成程、フォルちゃんは物理防御が得意なのかしら。物理攻撃も得意そうね、強そう」
私が撫でると、もう一度、ワオンっと鳴くと膜は消えた。
「三匹ともとても頼もしいのね。私も頑張らないと。魔女になったのに、変な二つ名貰うだけなんて嫌だものね。師匠みたいな二つ名もちょっと遠慮したいけど」
私は二匹を撫でながら、いつの間にか眠っていた。
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