泣き言は気付いた後が恥ずかしい

チェリアさんとホーソンさんとの空の旅は続いた。



私は、落ち着くと恥ずかしくなった。



泣き言なんて情けない。弱音を吐いて。強くあると決めたのに。



師匠に笑われてしまう。師匠がいなくて、弱気になってしまったのかな。



色んな事が溢れ出てしまった。気持ちがドキドキして落ち着かない。泣きたくなったり、怖くなったり、綺麗な景色で感動したり。浮気された事を思い出して怒りが湧いた。




何故だろう。




アルちゃんや、フォルちゃんが心配しているのが分かる。ごめんね、もう大丈夫。と、二匹に話しかけ、私は前を向いた。



何を怖がっているんだろう。自分で決めたのに。



私は魔女だ。守る側になるんだ。ホーソンさんに甘えてしまった。泣き言を聞く方はたまったもんじゃない。



私はゆっくりと深呼吸を繰り返した。








ホーソンさんは飛び越えていく街の名前や、チェリアさんとの戦いの話をしてくれた。


私は深呼吸でサードマスクが曇ったけれど、返事が出来るほどに落ち着いていた。



「ホーソンさん、先程のポーション袋なんですが、刺繍のサイズは大きい物と小さい物、どちらが良いとかありますか?」


「ああ、大きくチェリアが刺繍されてる物も良いですね。でも、小さくワンポイントされている物も綺麗ですね。好みではないでしょうか?これから多く作るのであれば、手間がかからない方が宜しいのでは?それに、隊員は汚します。綺麗な刺繍が大きくあると引っ掻けたりしそうですね。小さな物の方が実用的だと思います」



私は頷く。



「成程。ホーソンさん、キムハン副隊長や他の方の飛竜の色も教えて貰えますか?皆さんの刺繍は皆さんの飛竜の色にしようかと思います。あ、ハワード隊長にもお世話になってるし作ったら貰ってくれますかね?でも、黒に黒の飛竜の刺繍は駄目ですね」


「ああ、ネーロは黒ですからね。しかし、皆喜ぶと思いますよ。キムハン副隊長の飛竜は濃い青ですね。ピットマンとボンジョウの飛竜は緑ですが、ピットマンの飛竜の方が明るい緑で若葉の様な色ですよ。ボンジョウの方が暗い色ですね、深い山の緑色です。あ、ほら、左側に見えるのがゴザ河です。国一番の大きな河ですよ。もうすぐ行くと正面にアルマ山が見えます。一度休憩は入れますが、もうしばらくは飛び続けます。体調等悪くなったら言って下さい」



私は色を覚えながら頷く。暫く穏やかに飛竜の旅は続き、草原が続いた辺りで、ホーソンさんから休憩の合図が出ました。と言われた。


地面に降りるのをホーソンさんに手伝って貰ったが、足に力が入らなかった。乗ってるだけって思ってたのに、身体中がふらふらだった。



「ロゼッター。大丈夫ー?」



防護マスクを外したランさんが来てくれた。



「はい。大丈夫です。ただ、足に力が入らなくて。すみません、ちょっと座ってもいいですか?あと、指にも力が入らなくて。ランさん、マスク外すの手伝って下さい」



ランさんはマジッグバッグからブランケットを出すと広げてくれた。



「慣れないとキツイよねー。足伸ばしてー、ゆっくりほぐしたらいいよー。マスク外したら少し楽になるかなー?で、元気になったら歩いたりしたらー?」



ランさんは元気だ。



「ランさんは凄いですね。飛竜に乗るの初めてですよね?」


「うん、初めてだよー。でも、馬に乗った事があるからねー。それでロゼッタより慣れてたのかな?」


「成程。あ、ランさん、この防護マスクの欠点を見つけてしまいました」



マスクを外し、少しすっきりした私は足を延ばしながらランさんと話す。腕も、指もまだこわばっている。



「えー、なにー?」


「飲み食いが出来ません。後、吐いた時が地獄です」


「あ!!確かに!!ロゼッタ吐きそうになったのー?大丈夫ー?」



私はゆっくり首を振った。



「いえ、自爆は免れましたよ。ホーソンさんと楽しくおしゃべりして、酔う暇もありませんでした。景色も綺麗で驚きました。チェリアさんも優しいし、楽しかったですよ。ただ、飴食べようと思って気付いたんです。うん?なんかコレ使えそうですね。ゲ〇自爆アタック・・・うーん、どうしたらいいのかな」


「ロゼッタ・・・それは売れないと思う。美味しい保存食とか良い香りの石鹸を考えましょー。でも、ホーソンさん、楽しそうー。いいなー。飴食べれないねー。自爆は忘れましょー」


「ふむ、少し考えます。まあ、なので次は普通のゴーグルを試します。飴食べれますし」



ランさんも頷く。



「私も次は普通のゴーグルにしよー。ねー次は、ハワード隊長の方にロゼッタ乗るー?無口なのかな。楽しくおしゃべりなんてできなかったよ。私もホーソンさんがいいなー」


「ホーソンさん、素敵でしたよ。景色の説明もして下さいますし。私はハワード隊長でもいいんですけど、皆、どうかな?」



私がフォルちゃんとアルちゃんをみると二匹は首を振った。



「ランさんダメみたいですね。二匹ともホーソンさんが好きみたいです」


「そっかあ、ホーソンさん大人気だねー。了解。今度は私もゴーグル変えるから、ハワード隊長と話してみようかなー、なんとなく会話の糸口は分かるんだよねー。でも、こっちから話すのもなー。あ、でも給料とか気になるな。教えてくれるかな?」


「ランさん、給料は話題に上げない方がいいと思いますよ。少し気分が良くなりました。甘い物を食べましょうか」



私達が話をしていると、少し離れた所でハワード隊長とホーソンさんが飛竜の世話をしているのが見えた。


ハワード隊長の飛竜は優しくハワード隊長の頭をむしゃむしゃしていた。ホーソンさんはチェリアさんに何か話をしていた。ハワード隊長は後ろ姿だからよくわからないけど、ネーロさんと話をしているんでしょうね。


黒の袋に黒の飛竜ってどう刺繍したらいいのかしら?私はふむ、と考えながら、ランさんとお茶セットを出しお茶を始める事にした。


ランさんが、お茶ですよー、とハワード隊長とホーソンさんにも声を掛け、皆で休憩をした。






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