盗賊・魔獣撃退スプレー

 店に着き、オレンジとシチューをランさんに「お昼にみんなで食べましょう」と、渡すと喜んでくれた。


 最近作れるようになったマジックバッグのおかげで重たい物もへっちゃらである。


 但し、私のマジックバッグは師匠が王宮に販売したバッグの十分の一の容量で、ジャガイモ袋大の二袋分だが。


 師匠だと、もっと容量も大きく、時間制御付きも出来るがあえて作らないらしい。


「便利すぎたり、容量デカすぎると、アホな事考えだす奴がいるんだよ。せいぜいそうだな、一番デカい容量で小さい荷馬車の荷が入らない位がいいな。で、売る奴は制限色々しっかり掛けとけよ。小賢しい奴は多いんだよ」と言っていたが、師匠が腰に付けている自分用の小さなポシェットは多分収納量が私の千倍以上はあると思う。


 私が仕事の準備をしていると師匠から声が掛かった。


「おーいロゼッタ。今日も魔力大丈夫か?ハイポーション作っとけ」


「あれー。今日も急ぎの注文来たんですかー?」と、ランさんが注文受けをガサゴソしていた。


「いや、ジルがな。東の森の辺りで魔物が湧いてるのを見たんだと。第三が伝令出したんだな。第四が出るみたいなんだよ。で、状況次第では第五も出るな。国中の警備も大変だな」



 私が錬金釜の横に注文書を並べていると師匠は煙草を点けながら話す。



「え、魔物が沸いて大丈夫なんですかね。第四って陸でしたっけ?第五は空ですか?」


「ああ。第六が海だな。湧いたらやばいだろ。この間、魔蝶でジロウを呼び出したのに詫びの魔鳩が来ただろう?ま、次あったらシメるがな。あいつ今、王都付近にいないんだよ。多分、東の森にもうむかってたんだな」



 師匠は煙草を一息吸う。ぷはーっと吐き出してまた喋る。



「東の森はどいつの土地だったかな。とにかく、腰抜け貴族が魔物抑えるの無理だったから第三に泣きついたんじゃねえか?で、お前助けたの、第五の副隊長なんだろ?副隊長が王都ウロウロするなんて変だもんな。呼び出しかかってんじゃないか。隊長は現地に飛ぶ準備してるかもな、副隊長が伝令もかねてこっち来てんじぇねえかな。第五も多分出るな」



 うわー。大変だ。大口緊急注文なんて来て潰れたくない。早めに在庫を作っておきたい。



「モチのロンです。いけますよ。作れますよ。バンバンいきましょう!!」



 私はふんっと腕をまくり腰の杖を取り出した。



「準備していらなくなっても、今なら王宮に文句言わせずこっちの言い値で売り付けられるしな。作っとけ作っとけ」


「師匠ー。魔物が湧きすぎたら、師匠も出るんですかー?」とランさんが心配そうに師匠を見る。


「ああー。第四と第五で抑えられたらいいんだがな。もし溢れたらな、腰抜け共から呼び出しかかるかもな。そうならないようにハイポーション作っておけ。なんか、こう、強くなる薬みたいなやつないかな。それ腑抜けに飲ませてどうにか出来んかな」



 師匠がふーむ。と腕を組む。


 え、師匠、東の森に行っちゃうかもしれないの。嫌だ。



「眠気覚ましの薬と精力剤とか混ぜたらどうですかねー。一時的に疲れ知らずみたいになるかも。それかー、筋肉アップが出来そうな材料に精力剤も混ぜるとか?その後は知りませんが」



 ランさんが恐ろしい事を言う。精力剤は絶対なのね。



「ああ。いいな。薬切れたらフニャンフニャンの役立たずに暫くなるだろうが、構わんだろ。よし、試しに作るか。ラン、それっぽい材料用意して奥の工房に持ってこい。虫系と草系が中心がいいかな。あ、海獣の玉は持ってきてくれ。ロゼッタは出来るだけハイポーション作れ。あと、消毒液も大量に作っとけ」


「「はい師匠」」



 ランさんと共に返事をし、私はひたすら薬を作り、ランさんは材料の確認や店番やらで忙しく過ごした。


 シチューを持って来ていて良かった。


 みんなで流し込むようにご飯を食べ、ひたすら作っていくと注文書が届いた。



「ほら、おいでなすった」



 師匠がヒラヒラしながら緊急印の着いた注文書を見せる。



「ハイポーション40本。ポーション100本。消毒液100本。傷用練薬100本。携帯食料200個。か。ふむ。こりゃ、長引くかな。ラン、在庫どうだ」


「はい、すぐに用意はできますが、次同じ注文が来たら足りない物もありますね。材料また二倍の発注掛けますか?」


「ああ。あと、お前のう〇こ練薬、あれ作れるか?」


「出来ますよー。あれ作っとくんですか?」



 師匠は悪い顔をして、ニヤニヤ笑う。



「ああ。使えるな。売れる。大量う〇こ練薬作っとけ」



 ランさんは、了解でーす。と言うと、在庫確認しに行った。



「ロゼッタ。ランが作ったう〇こ練薬、それ、霧状に出来るか?」


「霧状にですか?」


「ああ。香水の瓶みたいなやつでシュッとするイメージだ。液体からいければ簡単だろうが。ランの薬は練薬だからな。それを分解生成出来るか?」



 私はふむ。と考え師匠に応える。



「消毒液の応用でいけますね。専用瓶も作りますか?」


「ああ、一つが二リットルで作れ。とりあえず二十本だ。ヒヒヒ。う〇こスプレーだな。で、それに匂いの効果を変えずに辛子とか入れれるか。目潰しもついでにしたい」


「やってみます。痒みとかどうですか?痛いより、かぶれ系の草か樹液、魔物の毛とか入れましょうか。痒い方が地味に嫌じゃないですかね?」


「おー。ロゼッタ、お前もなかなかやるな。何パターンか作っとけ。で、余ったら。軍団に盗賊・魔獣撃退スプレーで売るか」



 流石師匠。



「はい。了解です」



 私は錬金釜に魔力を貯める。


 師匠が森に行く事になっても絶対無事に帰って来てもらう。


 その為に私は今、私の出来る事をする。


 最高のクサクサスプレーを作って見せる!!!

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