何でなんだよ ダレン視点
(畜生!!なんで!なんでなんだよ!!)
俺は連れていかれた詰所から解放され、第二軍団の寮に戻りながら毒づいた。
(いつバレたんだ?なんでロゼッタは別れるなんて言うんだ!!あいつは俺の事好きなんだろ!今まで上手くいってたじゃないか!)
寮までの道が遠い。
(ロゼッタはリリーの事も知っていた。二人で住む予定の家も解約されていた。ずっと前から知っていたのか?実家にも連絡入れたと言っていた。両親はロゼッタの事を気に入っていた。どこまでバラされたんだ?まずい。まずいぞ)
俺は寮に着き、はっとした。
(俺の部屋がなくなる!!)
急いで寮の事務所に行き、退寮手続きのキャンセルをお願いしたが、もう遅く、一か月後には一度出てくれと言われた。二か月後に空きが一部屋出るからそこに入れるようにするから、一ヵ月は部屋を別に探すように言われた。
(なんだよ。なんでなんだよ。なんで突然別れるなんて言うんだ)
俺がトボトボ部屋に行こうとすると、リーゼン班長に呼び止められた。
「ウッドマン。ウー副隊長がお呼びだ。来い」
俺は「はっ」と敬礼したが、心の中は大荒れだった。
もう、詰所の話が来てるのか。
リーゼン班長に連れられ副隊長室に行った。
「第5班、リーゼンです。ウッドマンを連れて参りました。入室許可をお願いします」
ドアの前で告げると中から、
「許可する。入れ」と声がかかった。
敬礼し、中に入ると書類をポンッと落としたウー副隊長がいた。
「リーゼン班長ご苦労。このままお前も残れ」
「は」
「ウッドマン、第五のハワード副隊長より報告書が緊急で届いた。内容の確認をしたい」
(まずい)
「は」
汗がツーっと流れる。
「本日、17:15頃王都、スミス通りとスペンサー通りの交差点付近で軍団隊員が婦女子を暴行しているとの通報を受け、偶然通りかかった第五軍団ハワード副隊長が現場に急行。現場では通報通り、軍団隊員が婦女子の左手首を掴み揉めていた。話を聞く為近くの詰所に行くと、腫れは酷く治療が必要だった為近くの治療院より治療師を呼び診断書を作成。診断書によると左手首の骨にひびが入っていたとある」
一度ウー副隊長は息継ぎをした。
「そして、その隊員とは第二軍団のダレン・ウッドマン、そして被害女性はロゼッタ・ジェーン。その婦女子は君の恋人とのことだが、彼女は君の浮気が原因で別れを告げ、それに激高した君に襲われたとある。彼女からは君の接近禁止希望も出ている。骨にひびがあった事、大通りで目撃者が多かった事、また軍団の隊服を着ていた者が一般市民に暴行を働いた点から副隊長権限で仮の接近禁止を出したとある」
ちらっとこちらを見られる。
「何か申し開きはあるか」
(やばいやばい。何を言っても言い訳だ。第五まで巻き込んでる。接近禁止ってなんだよ。畜生ロゼッタの奴のせいだ!)
「ケガをさせるつもりはありませんでした。申し訳ありません」と答える。
「他はすべて認めるんだな?」
「浮気ではありません、俺は話し合いがしたかっただけです」
ちらっと、リーゼン班長を副隊長が見る。
「リーゼン、お前は何か知ってるか?」
「浮気かどうかは当事者同士の事ですので私が決める事ではありませんが。私もこの件を聞き、急いで自分の班の者、又他班の者にも話を聞きました。ダレンが恋人がいながら複数の女性と関係があり、それを仲間内に話しているのは他班の者数名から確認が取れました。私の班の者は知らず、私も監督が出来ていませんでした。私の価値観からすると、規律、信頼を重んじる軍団隊員が恋人を裏切るという行為はありえない事でもあります」
リーゼン班長はゆっくり息継ぎをした後、
「また、ダレンの恋人は王宮に出入りを許されている者でもあります。私が調べたところ、ロゼッタ・ジェーン嬢の出入りの薬局ですが、その薬局は「名無しの薬局」。師匠の名はジュリエッタ・ホグマイヤー。ロゼッタ嬢はホグマイヤー様から最後の弟子と言われている者です」
副隊長は頭を抱えた。
「ホグマイヤー様はこの件は?」
「その場に姉弟子がいたようですし、もうご存じでしょう」
「あいわかった。隊長には俺から報告する。すぐにホグマイヤー様に会わなければ。大隊長にも連絡が必要かもしれん。ウッドマン。お前は処分が決まるまで謹慎だ」
「え。あ」
「聞こえなかったか。部屋に戻り処分が決まるまで謹慎だ、行け」
俺は敬礼をし、部屋を出た。
なんだ。どういう事だ。
ロゼッタと付き合ってると言うとみんなが羨ましがった。
それは可愛いからじゃなかったのか。
王宮出入りの薬局で、薬の融通がきくからじゃなかったのか。
稼ぎがいいのが羨ましいんじゃなかったのか。
そんなみんなが羨ましがるロゼッタが俺に惚れていて、俺は遊んでもいい、惚れられてるから。と自慢していた。
何が悪かったんだ。
なんだロゼッタの師匠ってすごいのか?ロゼッタってすごいのか?
なんでこんな事になったんだよ。ちょっと遊ぶくらい誰でもやってるだろ?
なんで俺だけこんな目に遭うんだよ。おかしいだろ。男ならみんな遊んでんだろ。
軍団の隊服を着ていると女がすぐに寄ってきた。
ちょっとつまみ食いくらい、みんなしてるだろ。
それに好きなのはロゼッタだけだ。遊びと恋人は違う。
なんだよ。みんな面白可笑しく俺の話を聞いてただろ。
ロゼッタだって今まで普通にしてたじゃないか。
急になんでこんな事になるんだよ。
誰かが言いふらしたのか?リリーの事をロゼッタは知ってたな。あいつが言ったのか?
くそ。遊びだって言ってたのに。
なんでこんな事になったんだ。
俺が部屋に戻る間、寮は静かで誰とも会わなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます