&α UloveE.

 E like U.

 なぜか彼女がいつも、眠りにつく前に呟く言葉。アイライクユーの、アイをうまく発音できていない。アイがない。そのかわり、口を横にするだけで簡単に発音できる、E。

 彼女には、名前がなかった。だから、自分が彼女の名前を作った。エリーク。Elikeu。眠る前の言葉、そのまんま。今更だけど、アイはあったほうがよかったかもしれない。

 その名前を決めて。そう呼ぼうって決めてから。彼女は、目覚めなくなった。名前を決めてしまったことで、これまで曖昧だった感情が、化物に狙われる、人としての感情になってしまったから。彼女に、名前を与えてしまったことを。

 ずっと。

 ずっとずっと。

 後悔していた。


 自分に、名前はない。必要だと思わなかったから、組織内でも名前を持たなかった。彼女に、名前をつけてもらえるのなら。

 どんな名前が、よかっただろうか。


 そんなことを考えていたら。


 目が。


 醒めた。


「おはよう?」


 ベッド。

 彼女。

 なんか。夢で見たよりも。


「え。わたしが、ふけてるって?」


 そっか。お互いのことが、なんとなく。分かってしまう。感じてしまうから。


「ごめんね。若くなくて」


「いや。大人の女性だなって」


 たぶん彼女は、初めて会った8才とかそこら辺の辺りを差して若いとか言ってるんだと思う。子供かよ。


「あなたの名前、考えたの」


「ちょっと待って」


 ここは。

 現実か。


「生きてる?」


「生きてるよ」


「街は」


「ここは駅前のホスピス。街は今日も平和。わたしは任務帰り」


 そうか。彼女が。自分の任務を引き継いだのか。


 起きた。生きている。彼女が、側にいる。さわれる。左頬。


「ねぇ。あなたの名前」


「おはよう」


「おはよう」


「おはようとかがいいなぁ、名前」


「だめ」


「名前にラヴが入るのははずかしい」


「だめ」


 どうやら、この名前は確定事項らしい。


「Ulovee.」


「Elikeu.」


 お互いの名前を、呼んでみる。違和感はない。


「おはよう」

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Elikeu. (Hi-sensibility) 春嵐 @aiot3110

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