せかいのしゅうえんでえろをわめくのけものの巻

エアギター(犬)

 死語になっているかもしれないが、エアギターなんて言葉が流行ったことがある。

 流行っているときは見向きもせず、腐りかけたあたりに手を出してドン引きされるのがおいちゃんおにいちゃんの嗜みである。

 この例に漏れず、私は最近エアギターを嗜んでいる。


 座っていると、膝の上に犬たちが座ってくるという話を以前書いた(注1)。

 我が家の犬たち、特に末っ子、次郎丸(仮名)は頭がでかいので、その頭をどこかに乗せて安定させたい。

 キーボードにアゴを乗せて、異言をつむぎだすこともあるし、私の腕に頭を乗せて仕事や執筆の邪魔をすることもある。

 

 ある日、YouTubeでアコースティックライブを見ていた。

 座ってギターを弾いている姿は真似できるんじゃないかと思った。

 ちょうど膝の上には次郎丸(仮名)が乗っている。

 こいつは、触るたびにぐふぐふと喉を鳴らす。

 (ちなみに触らなくても、嬉しいことがあるとぐふぐふと喉を鳴らす。好きな人に久しぶりにあったりすると、近づいていってしきりに「ぐふぐふ」とお話をしている)

 鳴るんじゃない? 俺たちの魂の音。

 そう思った私はためしに次郎丸(仮名)の腹をかき撫でる。

 ぐふぅーと音がする。

 私の頭の中では"Smells Like Teen Spirit"(注2)が流れはじめる。

 「じゃーんじゃん! じゃんじゃん!」

 頭の中だけでは寂しいので、口で前奏のマネをしながら、次郎丸(仮名)をかきならす。

 「じゃじゃーん!」「ぐぅ」「じゃじゃーん!」「ぐぅぐぅぐぅ」

 おいちゃんおにいちゃんおいちゃん若さあふれるマッチョ犬が音をかき鳴らす。

 俺たちがカートだっ!

 犬ではない方のおいちゃんおにいちゃんは間違いなくバカである。

 賢いと言われることが多い犬の方のおいちゃん若き賢人は、バカには付き合いきれないと早々に寝に入る。

 前奏も終わらないうちに私のギターからは寝息が漏れ始める。


 いつか、エアギターでサビまでたどりつきたい。


 そもそもエアギターではないだろ、それと思われた方もいるかもしれない。

 私も書いているうちに薄々違うのではないかという気はしてきているのだ。

 でもね、良い子は細かいことなんて気にしてちゃだめだぞ。

 おいちゃんおにいちゃんとの約束だ!


注1:「膝の上」、『立蝮貼』

https://kakuyomu.jp/works/16817330658925656472/episodes/16817330669078627788


注2:Nirvana "Smells Like Teen Spirit"

https://www.youtube.com/watch?v=hTWKbfoikeg

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る