雑煮考
民俗学系の雑学本にかなりの割合で採用されるのに雑煮という食事がある。その手の話題も取り扱ってというとてもありがたいリクエストをいただいた(注)ので、しばらく前から雑煮雑煮と考え始めた。
しかし、雑煮と文化圏の話は案外難しく、例によって、ここから先はだらだらと私の話が続くことになる。
雑煮、中部辺りを境に東が角餅、西が丸餅という文化圏である。
ちなみに黒石家は数代前に三河の辺りから東京にのぼってきた分家(私は本家を全く知らない)らしい。
祖母は東京弁を操る生粋の東京っ子で結果として、雑煮は東京オーソドックスになっている。
東京オーソドックスはすまし汁で鶏肉と三つ葉、ナルトが入っている。
母方は丸餅文化圏なのだが、すまし汁であることは共通している。
結果、正月に出てくるものは、すまし汁に鶏肉かブリが入ったものであった。
鶏肉もブリも嫌いではない(というかブリは名前からして私好みだ)が、いかんせんパンチが効いていない。
おせち料理は若者にはどうしても物足りない。
すまし汁に鶏か魚あたりでは、あまり嬉しくなかったのだ。
考えてみれば、私がバカとバカをやっていたバカの魔窟は、それなりに色々なところから人が来ていたはずなのに、雑煮会的なものをやらなかった。
正月はさすがに実家に戻るものも多かったというのも大きな理由であるが、雑煮を食べるような時間帯に大抵の場合二日酔いで倒れていたからというのもあるだろう。
私も修士論文の締切数日前だというのに、年末に10分おきに電話で酒を飲もうという誘いがくるという地獄を体験したことがある。
電話がなる。
「黒石くぅーん! 今ね、近くの居酒屋で飲んでるのっ!」
「論文書いてるんで、いけません」
電話がなる。
「黒石くぅーん! カウントダウンだよ。みんなでカウントダウンだよー!」
「年明けすぐに締切なんです。また留年したくないです」
私は前年度に修士論文が書けなくて留年していた。
電話がなる。
「黒石くぅーん! ほーら、もう後15分で今年が終わっちゃうよ。会いたいなぁ、黒石くんに会いたいなぁ。今から走れば間に合うよ!」
通話相手は男性である。
おっさん、彼女が帰省中だからといって、周囲の後輩に片っ端から招集をかけるのやめろよ。
「カウントダウンしたら帰りますからね!」
私は走る。
カウントダウンをし、初詣をしないといけない伝統は大切だと皆で心にもないことを叫びながら夜中に走り出し、ところどころでガソリンをいれているうちに記憶がなくなるわけだ。
ああ、先輩への恨み言になってしまった。
このような感じであったので、バカの魔窟では雑煮にありつけなかった。
ずっと気になっているのは香川の雑煮だ。
白味噌ベースの汁にあんこ入り丸餅、ぜひとも食べてみたい。
そう思って探してみたら、今は通販でも買えるらしい。
機会があれば、食べてみたいなぁと思いながらも、いまだ食べていない。
確かカウントダウンしたときも香川出身のやつがいたのに……もったいないことをした。
ここでチラチラをあたりを見回していると、皆様が雑煮の話を教えてくれるに違いない。
そう念じて、このお話はおわる。
(注)「おでんバトル」、『立蝮帖』のコメント欄
https://kakuyomu.jp/works/16817330658925656472/episodes/16817330664987640415
追記
最近はこういうウェブサイトもあるので、それを見て楽しんでもいる。
絵に描いた餅は取り出して食べられないのが難点であるが。
うちの郷土料理
https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html
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