だきまくら

 一時期、抱きまくらを持っていた。

 足の間に何かを挟むと落ち着くのだ。


 これはどうも私だけではないらしい。

 実家の貫太郎(仮名)が健在だった頃、太郎丸(仮名)を連れて帰省したことがある。

 子犬だった太郎丸(仮名)は貫太郎(仮名)翁に可愛がられた。

 寝る時、貫太郎(仮名)は太郎丸(仮名)の頭を足で挟んで寝ていた。

 貫太郎(仮名)の股に頭を固定されていびきをかいている太郎丸(仮名)はとても良い顔をしていた。


 このときの記憶があったのかどうかはわからない。

 ただ、数ヶ月後、次郎丸(仮名)が家にやってきたとき、太郎丸(仮名)は同じことをしていた。

 次郎丸(仮名)は無表情でひどく痩せていた(注)ので、何か思うところがあったのかもしれない。挟まれているときばかりは、無表情な次郎丸(仮名)も良い顔をしていた。

 

 次郎丸(仮名)は長じて太郎丸(仮名)よりも大きくなってしまった。

 次郎丸(仮名)の顔がでかくなりすぎたのか、太郎丸(仮名)は次郎丸(仮名)を挟むのをやめたがそれでもよく彼に尻を押し付けていたりする。


 次郎丸(仮名)は末っ子なので、父性愛的愛情(?)を向ける相手がいない。

 それでも何かを挟みたいという気持ちはあるらしい。

 彼はぬいぐるみを股に挟んで寝ていることがある。

 愛情を向ける相手がいない……そんなことを書いた後、私は次郎丸(仮名)と抱きまくらを抱えながら寝ていた自分を思い、少し涙した。


 それはさておき、どうして股に何かを挟んで寝たがる人(犬)がいるのだろうか。

 ふと気になってネットで調べてみた。

 何かを挟んで寝るのは、精神的に成熟していないとかいう解説が出てきた。


 うん、ネットの情報なんか信じちゃだめだね!

 なお、人は図星をつかれると怒りくるったり、否定したりするものであるということは本稿とは何ら関係のないことである。


注:次郎丸(仮名)が無表情で痩せっぽっちであった事情についてはこちらで書いているので、お読みいただければ幸いである。

「中トロ:笑顔」、『御痴走帖』

https://kakuyomu.jp/works/16817330657029655846/episodes/16817330658520206571

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