第10話 模擬戦



「あくまで模擬戦だから、大怪我になるような攻撃は避けるように。始め!」


サイラスの声により、俺とクロエの模擬戦が開始するが、俺は動くことなくクロエを待ち構える。


必然的に先に動き出すのはクロエだ。


「先手を譲ってくれるなんて、流石になめすぎだよ!炎よ来たれ、成すは火の矢『ファイヤーアロー』」


その鍵言語キースペルを唱え、クロエは右手に魔力を集中させ、火の属性を付与し、形を矢にし、俺に向けて放ってくる。複数の炎の矢を放つ火属性の中級魔法だ。



クロエが中級魔法を放つ姿を見て、観戦していた生徒たちから感嘆の声があがる。入学したばかりの生徒からしたら、中級魔法も憧れのひとつなのだ。


対する俺は特に焦ることは無い。スキル干渉インターフェアを発動し、クロエの魔法に干渉する。


「ふむ、魔法の威力はそこそこ高いが、それだけだ。そのようなものでは俺には通用しないぞ。『魔法干渉マジック・インターフェア』」


俺が唱えた瞬間、クロエのファイヤーアローが全て消え去る。


「お前の力はそんなものでは無いはずだ。見せてみろ。お前の本気を!」


俺はあえてクロエを挑発してみる。


(あの魔法の威力的に現在のクロエのレベルは恐らく30程度。ならば何かしらのスキルは取得しているはずだ。数あるスキルの中から奴は何を選んだのだ?)


「そう言われたら、本気を出すしか無いみたいだね。このスキルが君にどれだけ通用するか、試させてもらうよ!炎よ来たれ、成すは火の矢」


(さっきと同じ鍵言語キースペル?いや、恐らく何かがある。クロエの狙いは一体なんだ?)


「ファイヤーアロー『増幅ブースト』!」


その瞬間、直前までただのファイヤーアローだったものが急に巨大化し、威力を増してこちらに向かってきた。


俺は先程と同じように魔法干渉マジック・インターフェアでその魔法に干渉しようとしたが、先程とは違い何かしらによる妨害を受け、干渉することが出来なかった。


それでも俺は冷静に、レベル70の驚異的な身体能力を活かして回避する。


(なるほど。今のは奴のスキルが籠った魔法、恐らく奴のスキルは増幅ブースト。初級魔法を中級魔法に、中級魔法を上級魔法にといった感じで、魔法を1段階上に引き上げる、シンプルだが強力なスキルだ。スキルの力には干渉出来ないという俺のスキルの弱点を明確に突ける、言うなれば天敵と言うやつだ。だが!)


「そんなスキルひとつでは、この絶望的なレベル差は埋まらない!」


俺は自身に身体強化魔法を掛け、瞬時にクロエの背後へと移動する。まさに風のような速さで移動した俺に気づき、慌てて後ろを振り返ってももう遅い。


「終わりだ」


俺は既にクロエの首筋に剣を当てていた。


「そこまで!勝者ルキヤ!」


サイラスの宣言の後、どよめきにも似た歓声が上がる。


「あ、あはは。完敗だよ。まさかここまで差があるなんてね」


「フッ、いくらスキルが強くても使用者のレベルが低ければ脅威にはなり得ない。」


「っ!そ、そうだよね!僕、頑張ってレベル上げるから、いつか絶対君に追いついてみせる!だからそれまで僕以外に負けちゃダメだからね!」


(煽り口調で言ったのになんでこいつは嬉しそうなんだ?はぁ、やっぱりこいつは鬱陶しいが・・・嫌いじゃないな。)


「フンッ、俺は誰にも負けるつもりは無い。お前にもな。」


そんな感じで、俺はカッコつけながら訓練場から退出した。





___________

《作者コメント》

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絶対なる悪の美学〜親友キャラに転生した悪役に憧れる青年の場合〜 エレオノール @ryougah

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