第8話 推し
俺の右腕が完全に回復したのを見て、その場に居た皆が安堵した。しかし、マナの体から金色の光が消えた瞬間、彼女は顔を真っ青にし、激しく息を切らした。
「おい、大丈夫か!?」
「え、ええ。いつもより多く力を使ってしまったので、想像以上に疲れてしまっただけです」
俺たちは慌てて駆け寄るが、マナはこちらに心配かけまいと無理に笑顔を作る。
だが、俺にはマナの苦しみが分かる。プレイヤーとして知っていたというのもあるが、それ以上に自分も力の代償を味わったことがあるからだ。
マナのシステム
「それよりルキヤ様、傷の方はどうでしょうか」
「ああ、こっちはマナのおかげで完全に回復した。だからもう無理するな、あんたの代償は―」
「ふふ、先程も言いましたがわたくしのはただの疲労です。ルキヤ様がお気になさることではありませんよ。」
自分に代償は無い。あくまでも疲労だといい切るマナ。自らの寿命が代償だなどとは決して言うことはない。こちらに責任を感じさせないためにも言っているということが、苦しみながらも作り笑いを浮かべる彼女の表情から容易に感じ取れる。
(ああ、やはりこの子は強い。他人のために自らを犠牲にできる優しい子。最近はゲームでの彼女の性格と全然違っていたから忘れていたが、やっぱり俺は――)
「うふふ、ルキヤ様がいつもよりわたくしに優しく接してくれて嬉しいです」
「う、うるさい!今回は助けてもらったんだから当然だ。・・・ありがとうな。」
マナの不意打ちの言葉に俺の顔が真っ赤に染まる。
(やっぱり俺は――マナが推しなんだな)
主人公が重症を負い、マナが神の力を行使して助ける。このシーンはゲーム本編でもあったイベントだ。その後のマナの行動に完全に心を奪われた俺はすっかりマナ推しになっていた。
この世界で俺が彼女の治療を避けていたのは、俺がまた彼女に惚れてしまうのでは無いかと恐れていたからだ。まあ、そうなってしまったんだが。
結局この日はこれで解散になったが、帰りの馬車の中でも、俺はマナのことをずっと考えていた。今後彼女とはどう接すればいいのだろうか。
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《作者コメント》
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