第6話 教会



結局、登校初日は色々なことがあったものの、それ以外は特筆するようなことはなく、1日目は終了した。



翌日。俺は教皇様に右腕を治してもらう約束をしていたので、アイゼナとともにトーマが操縦する馬車に乗り神殿に向かっていた。


「ありがとね、アイゼナ。君のおかげで教皇様にアポが取れたよ。」


「いいのよルー君。あなたに喜んでもらえて嬉しいわ。」


最近アイゼナの正妻感が半端ないんだ。目を見ただけで言いたいことがだいたい分かるって言われたときはさすがに嘘だと思ったけど、もしかしたら本当かもしれない。


そんな他愛のない会話をしながら馬車に揺られること数十分。どうやら着いたようだ。先にトーマが教会のシスターさんに話しをしに行った。


「ルキヤ様、どうやら教皇様は本日急用でいらっしゃらず、代わりの者が治療を担当するようです」


「えっ、まじ?でもこの怪我を治療できる人なんて他には...」


頭の中に何かを企んでいる表情をした銀髪の少女が浮かび上がる。


「よし、帰ろう。治療はまた教皇様の手が空き次第依頼すると「あら、ルキヤ様。ようこそいらっしゃいました。」」


どうやら少し遅かったようだ。教会の中からシスター服に身を包んだ銀髪の少女、聖女マナが現れた。


「や、やあ聖女殿。昨日ぶりだね。」


俺は今引きつった笑みを浮かべているのだろう。だが、何としても彼女に治療させるわけにはいかない!


「うふふ、ルキヤ様、わたくしのことはマナとお呼びください。」


「いや、そういう訳には」


「マナとお呼びください」


「えっと、だからその...」


「マナとお呼びください」


「マナ...さん」


「マナとお呼びください」


「ああもう分かったよ!マナ!」


「うふふ、それでいいのですよ」


やべえ、やべえよこの子。満面の笑みなのに目の奥が全然笑ってないんだけど。これ以上続けたら何されるか分かんねぇよ。


(俺だとマナより身分が低いからここはアイゼナに上手く治療を断ってもらうか。頼んだぜ、自称目を見ただけで全てを理解する婚約者様!)


俺はアイゼナの目を見つめアイコンタクトをとる。すると彼女は頬を赤く染めて


「も、もうルー君ったら。そんなに私に見惚れてるの?」


「違うわ!」


いや可愛いけど今は違うわ!




___________

《作者コメント》

ヤンデレ聖女、ポンコツ王女

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