第3話 変化の影響



「あんたがルキヤ・メルギアかしら?割にあまり強そうには見えないわね。」


厄介な聖女に絡まれている俺に、キツめの口調で話しかけてきた赤毛の少女。彼女もゲーム本編でヒロインとして登場するが、メインヒロインではなく、特定の条件を満たしたときにのみ登場する隠しヒロインの一人だ。それも、絶大な人気を誇っている人気のヒロインである。


そして、本来ならヒロインでもある。それは、彼女と出会う条件が少し特殊だからだ。


「私はクローディアよ。まぁ、よろしくするつもりはないけれど、一応ね。」


「お、おい。あの赤毛の女・・・」


「ああ、俺は一度見たことあるから分かる。間違いない、彼女はAランク冒険者の・・・『天才魔剣姫』クローディアだ。」


俺たちの周りにいた野次馬が、クローディアを指さし呟いた。


この世界には、EランクからSSSランクまでのダンジョンがあるように、冒険者という職業にも同じランク付けがされている。冒険者というのは、このノーシアス学園も含めた教育機関を卒業し、その後王国騎士団などの国家機関に入隊しなかった者の多くが選ぶ職業だ。その他にも、生活に困っている平民達が、ダンジョンの物資を入手し売却して日銭を稼ぐために冒険者になる例が多い。


その中でもBランクより上は、一定の才能を持ったものでなければ到達することの出来ない領域とされている。つまり、15歳でAランク冒険者になったクローディアは、既に並の大人では相手にならないほどの実力を有しているということだ。ちなみに、グラディウスとマーリンはSSランクで、SSSランクはまだ一人も現れていない。


「ふん、そうよ。私はAランク冒険者。親の、『なんて、もう絶対に言わせない・・・」


クローディアは険しい顔で俯き呟くと、こちらの方をキッと睨み


「あんた、私の父様と母様に稽古をつけてもらっていたらしいわね。本来ならその四年間は私のものになるはずだったのに・・・父様と母様はあんたを認めているようだけど、私はあんたを認めないわ。」


そう言い放ち通り過ぎていくクローディア。好感度マイナス状態の隠しヒロインの様子に苦笑いを浮かべていると、隣に居たアイゼナが首を傾げ「マーリン様は優しい娘と言っていたのに・・・」と呟く。その隣に居る聖女の「私のルキヤ様になんてことを!」という声は無視するとして、アイゼナの疑問には俺も同じ感想だった。


ゲーム本編のクローディアは、クールではあるが、困ってる人を見たら自然と体が動く、とても優しい女性だったはずだ。しかし先程の彼女からは、そんな様子は微塵も感じられなかった。


シナリオの変化が、彼女の心をも変えてしまったのだろうか。



___________

《作者コメント》

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