第2話 聖女マナ
登校して早々俺に話しかけてきた銀髪の少女マナ。彼女こそ二人目のメインヒロインの『聖女』である。俺が彼女を助け、孤児院に預けた数ヶ月後に聖女の力に目覚め、教会に保護され今ではこの世界最大の宗教、ルシフェル教の教皇の養子という、まるでシンデレラのような成り上がり人生を送ってきた彼女は、キラキラと目を輝かせながら俺の前に現れた。
(ちっ、助けてしまった以上こうなることは予測できていたのに、まさかこんなに早く出会ってしまうなんてな)
まぁ想定外のことが起きたとしても俺のスタンスは変わらない。アイゼナ以外のメインヒロインとは関わる気なんて無いんだ。
「悪いが俺には君を助けた記憶はない。人違いだろう」
そう言って立ち去ろうとするが
「貴方様が覚えていらっしゃらなくても、わたくしは今でも鮮明に覚えておりますわ。2年と3ヶ月、7時間38分15秒前、王都のスラム街で攫われそうになっていたわたくしを、颯爽と現れて救ってくださった貴方様のお顔を。」
と、うっとりした顔で過去を思い返す聖女。
(は?君そんなキャラだっけ?めちゃめちゃ清楚で癒し系のヒロインだったと思うんだけど、ただのヤンデレでヤバいやつやん。)
本編の彼女との差に絶句している俺を置いて、今度は隣にいたアイゼナが声を上げた。
「あらあら聖女様。私の婚約者になんの御用ですか?」
あからさまに婚約者の部分を強調したアイゼナ。その表情は笑っているが、彼女の背後に青色のオーラのようなものが見えるのは俺の見間違えだろう。うん、きっとそうだ。だからマナの背後に見える赤いオーラも見間違えだよな。
「くっ、アイゼナ王女・・・強敵ですね。いいえ、今日はご挨拶に来ただけですが、見たところ貴方様は右腕を怪我しているではありませんか。しかも・・・聖なる炎での損傷。その怪我を治せるのはわたくしか養父である教皇様だけですわ。」
「さすが聖女。見ただけで分かるとは恐れ入った。お前の言う通りこの怪我はお前か教皇しか治すことは出来ないだろうな。だから俺は明日教皇に治してもらう予定だ。」
「へっ?」
ポカンと口を開けた聖女。そして我に返ったように慌てて
「ちょっ、ちょっと待ってください!その怪我は、わたくし!と教皇様なら治すことが出来るのですわよ!」
自分を強調して言い直すマナ。
「ああ、だから教皇に治してもらうんだ。もう予約もしてある。」
「ガーン!」
(おいおいガーンって自分で言ってるやつ初めて見たぞ可愛いなおい。)
マナもメインヒロインだけあってやはり仕草などがいちいち可愛い。俺の決意が揺らぎそうになるが、そこを鋼の精神で押さえ込む。
「ぐぬぬ・・・はっ!フッフッフ・・・」
急に唸り声を上げたと思ったら、何かを閃いた表情をし、今度は不気味な笑みを浮かべた。
(やだこの子感情全部表情に出てて可愛い・・・じゃなくって、なんだか嫌な予感がするな。彼女は少し警戒しとかないと。)
そんなやり取りをしていると、再び後ろから別の女性が声をかけてきた。
「あんたがルキヤ・メルギアかしら?」
少しキツめの口調に嫌な予感がしながらも振り返り、赤い髪に凛とした顔立ちの女性を目にして、俺は悟った。
既にシナリオは俺の手に負えないほど破綻してしまっているということに。
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《作者コメント》
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