第二章 元主人公と元親友
第1話 登校初日
「ルー君、準備出来た?」
部屋の扉の向こうから、ここ数年で聞きなれた声が問いかけてくる。
「ああ、行こうか。」
俺は立ち上がり執事のトーマに鞄を預けて扉を開ける。するとそこにはソワソワした
「心配しなくても似合っているよ、その制服。」
アイゼナは頬をほんのり染めて「もう・・・ルー君もね」と返してくれた。
婚約したばかりの頃は、アイゼナはゲーム本編の主人公のメインヒロインということで違和感があり俺自身はあまり打ち解けられていなかったが、四年間一緒に居たことと、積極的に話しかけて来る彼女に根負けし、俺は彼女を受け入れることにした。未だ右腕を動かすことが出来ぬ俺を献身的に支えてくれている彼女の姿は、今ではとても魅力的に映っている。
共に歩き出すと、無言で俺の右に立つ。これは、彼女が俺の右腕の代わりになると言って、一緒に居る時はいつもそうしている。とても助かるし、彼女が俺を慕ってくれているのを感じ、嬉しかった。
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「では父上、母上。行ってまいります。」
「ああ、二人とも気をつけてな。」
「寮生活は大丈夫?忘れ物はない?やっぱりうちから通う?」
父と母で真逆の反応が返ってくる。
「母上・・・私はもう15歳です。右腕が使えないのは多少不便ですが、アイゼナが支えてくれますしトーマも居ます。心配無用ですよ。」
そう告げて馬車に乗り込み、公爵邸を後にする。学園まではあまり離れていないため、意外とあっさり到着した。
(ゲームで見た時も思ったけど、実物は想像以上だな。)
ゲーム本編の舞台『ノーシアス学園』。それは、主な出資をクロイツ王国が行い、そして大陸中の様々な国々から支援を受けて建てられた世界一の学び舎。元々クロイツ王国の王城だった建物を改修して作られただけあり、見た目は完全に巨大な城だ。
内心では驚きながらも平静を装い、右隣にアイゼナを、後ろにはトーマを控えさせて歩き出す。
これから始まるゲーム本編のストーリー。既にイレギュラーが多数生じているが、歩みを止めることは無い。
(まぁ、今のところ懸念点はアイゼナ以外のヒロインだけど、関わらなければいいだけだが・・・)
「あの・・・」
不意に後ろから声をかけられ、振り返る。
(なっ!?)
そこには
「私を覚えていますか?数年前にスラム街で貴方様に助けられた、マナと申します。」
二年前に俺が師匠の代わりに助けた少女が、長く美しい銀色の髪を
(早速来たな、メインヒロインその二。『聖女』マナめ・・・)
いきなりのイレギュラーから始まる学園編。最初に接触してきた『聖女』の思惑は・・・
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《作者コメント》
第二章開始です。よろしくお願いします!
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