第16話 アリス・イン・ワンダーランド
この世界ではゲームシステム通り、魔族や魔獣を敵と認識した時に、その敵の名前とレベルが表示される。
先程のアリスの言葉から、アリスは魔族だと認識した俺には見えるようになっていた。
『アリス・キャロル』
〈レベル:1〉
(レベル1・・・殺れる!)
アリスのレベルが1だと分かった瞬間、俺は腰に差した剣を抜き斬りかかった。しかし、アリスの純真無垢な笑顔を見て、一瞬躊躇ってしまう。故にスレスレのところで躱されてしまった。
「おっとっと、チャンバラごっこかな?ルキヤお兄ちゃん♪アリスはあんまり得意じゃないから、お友達を呼ぶね!みんなおいで!『
アリスがそう言うと、ダンジョン内に変化が起きる。地鳴りが響き、足場が少し上昇している。
「これは・・・チェス盤か?」
「上を見ろ!」
師匠の指示通り上を見ると、周りの本が何冊か浮いていて、その本が急に光ったと思えば、そこから大きな何かが現れた。目の前に降り立ったのは3m程のチェス駒。
『赤の
〈レベル60〉
『赤の
〈レベル50〉
(なるほどな。おとぎ話の鏡の国のアリスってことか。いや、それだけじゃない。本当にここがSSS級ダンジョンなら、この程度で終わるはずがない。)
「わしが女王二体を狩る。お前は騎士を倒せ。できるな?」
「もちろんです。誰に戦い方を教わったと思ってるんですか?」
軽口を言って笑い合い、戦闘に入る。
『身体強化』
心の中で唱え、体内の魔力を操作する。自分の体に作用する身体強化の魔法は、外の魔力を使うより中の魔力を使った方が効き目がいい。
動きが遅い騎士を翻弄するように走り回り、背後から攻撃を仕掛けるが、光沢のあるボディに剣が跳ね返される。
「くっそ硬ぇ。強度は見た目通りってことかよ。んじゃ、こっちはどうだ?」
『
騎士の周りに魔法陣を展開して、複数の爆発を起こす。かなりの高火力だが・・・
「ちっ!これでもだめかよ。」
騎士の反撃もあるが、レベル差のおかげで身体強化した俺の筋力で十分押し返せるからそれほど問題では無い。
「まだ終わっとらんのか」
「師匠!?あっちはどうしたんで・・・もう終わったんですね」
見ると真っ二つに切られた女王二体が床に倒れていた。
「ハッハッハ!まだまだレベル60程度のやつには負けんよ。手こずってるようじゃな、手をかそうか?」
「クッ、大丈夫です。この程度の障害、乗り越えてみせます!」
(思い出せ・・・何かこいつらの弱点が・・・あ、あれか!)
「表面は硬くて攻撃は通らないが、中身はどうかな?」
騎士二体の周辺に複数の魔法陣が展開される。
「喰らえ、土属性中級魔法『
騎士に多方向からの振動が襲いかかる。すると・・・やがて完全に活動を停止し、崩れ落ちた。
俺がやったのは、多方面から一気に振動を与えることで騎士を内部から破壊する共振破壊の一種。なんとかそれが成功し、倒すことが出来た。
(だが、この程度で喜んでは居られないな。本当にSSS級ダンジョンなら、ここからが本番だ。)
「おぉ〜すごいすごい二人とも!じゃあ、次はもっと強い子出しちゃうね♪」
『-システム
チェス盤に変化していた足場が、今では周りがマグマに囲まれた断崖絶壁のような場所になっていた。
ギャオォォォォズ
大地を震わす咆哮と共に、マグマの中から二体の竜のような生き物が風を切って飛来する。
(やばい、ヤバすぎる。さっきまで戦っていた奴らとの差がデカすぎる。SSS級の本気ってことかよ・・・)
竜のような体を持つが、昆虫のような触覚、デバネズミのような顔をしていて、竜であると断言できないような見た目。体長20m程の巨体。それは間違いなく不思議の国のアリスに出てくる化け物。
『ジャヴァウォック』
〈レベル:100 〉
そして、それ以上に圧倒的な存在感を放つもう一体の化け物。漆黒の体、30mはありそうな巨大な翼、三つの竜のような頭、体長は50mを優に超える超巨体。
《アジ・ダハーカ》
〈レベル:100 over(計測不可)〉
(あ、思い出した)
幻想図書館というダンジョン名を聞いたとき、どこかで聞いたことがあるような気がした。そして、アジ・ダハーカという名前とレベル100を超えてるのを見た瞬間思い出した。
それは、何度も見返した公式設定集のボツ案のページに書かれていたものだ。『成長する迷宮』。そう言われており、説明書きではダンジョンマスターが空想上のモンスターを召喚して戦うダンジョンで、ダンジョンマスターのレベルが上がる毎に召喚されるモンスターの種類が増えていき、レベル20で既にラスボスの魔王がいる『魔王城』よりも難易度が高くなるというとんでもない場所。
死にゲーの運営ですら実装を諦めたダンジョン。それがこの『幻想図書館』である。
間違いなく絶体絶命のピンチだ
(だが、まだ学園に入学してすらいないんだ。死ぬわけにはいかないな。)
覚悟を決めて剣を握りしめた。
絶望の第二ラウンドが始まる。
___________
《作者コメント》
面白い、続きが気になる方はぜひ☆とフォローをお願いします!
♡や誤字報告、感想などもいただけるととても助かります!
戦闘シーン描く度に思うけど、戦闘描写下手すぎないか?実はかなり不安です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます