第14話 さらに一年後



俺が覚醒してからさらに一年が経ち、学園入学まであと一年になった。この一年の間に、とある辺境の村では『勇者』が発見されて王権派の公爵家が保護し後ろ盾になったり、で『聖女』が発見されたりと、色々なことが起きていた。


俺の方は、懸念していた派閥作りがアイゼナのおかげでなんとかなりそうになっていた。


アイゼナは様々な貴族令嬢を誘って、メルギア公爵邸でお茶会を開いている。本来なら絶対に来ないような王権派の令嬢も来ていたのは、アイゼナを信用しているからだろう。中には向こうの重鎮、王権派の公爵令嬢なんかも来ていて、さすがの俺もこれには驚いた。さすがはメインヒロインというところか。


ただ、このままでは俺の周りには女子しかいなくなるのでは?と思い始めて、俺は迷っていたとあるキャラをこちらの陣営に引き入れることにした。まぁその話は後でいいだろう。






俺は今、公爵邸の訓練所で大の字に寝転がっていた。疲労で全く動かない体を回復すると、俺は立ち上がり再びグラディウス師匠と対峙する。


覚醒から一年経ち、レベルも50になって師匠の七割には互角に剣を打ち合えるようになったが、本気を出した師匠には未だに勝てる気がしない。


そもそも、普通なら人間と戦っても上がるのは技の練度だけでレベルは上がらないのだが、何故か師匠と戦うとレベルが上がる。


ゲームの仕様なのかバグなのか分からないが、師匠があまりにも強すぎて、システムが師匠を魔物と誤認識しているのかもしれない。



「よし、次は目隠しした状態でかかってこい」


さも当たり前のように告げてくる師匠。まぁこれは前から何度もやっている事だから俺も当然のように目隠しをつけるのだけど。


もちろん、最初に言われた時は驚きもしたが、師匠は子供の頃に目隠しをした状態で魔の森を彷徨いていたらしい。


これは本当にありえないことだ。俺はまだスキル『干渉インターフェア』があるから、周りに干渉して周囲を把握できるが、師匠は力がものすごく強い代わりに、魔法が一切使えない。つまり、己の野生の勘だけで生き抜いてきたということだ。師匠魔物説もあながち間違いではないのかもしれない。


スキル発動『干渉インターフェア


周囲の魔力に干渉して俺の世界を作り、その中に師匠も入れる。


「『領域干渉エリア・インターフェア』」


視力を奪われた視界に、俺の世界が広がる。目隠しをしていてもはっきりと分かる。この稽古はスキルの練度を上げるのに最適だ。


「行くぞ」


ただそれだけを告げて、グラディウス師匠が動く。すぐに背後から師匠の気配がしたが、振り向いた時にはもう俺は吹き飛ばされていた。


「まだまだだな。戦場ではその一瞬のが命取りだぞ。」


「くっ、心得ております。」


そう、これが今の問題点。どうやっても現実と俺の視界に送られてくる映像にはラグが生まれてしまうのだ。


現在レベル50の俺は、既にこの国でも上位。学生としてはありえないほど高いものだ。だが、これではまだ足りない。このゲームは、入学してすぐの一つ目のイベントの時点で、クソゲー要素が一つあるのだ。それを乗り越えるためには、レベル50ではまだ足りない。もっと強くならなければいけないのだ。



額の血を拭い、俺はまた師匠と対峙する。





___________

《作者コメント》

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