第13話 チートスキル/責任と修正
スキル発動『
その瞬間、周りの空気が変わる
「最終警告だ。その子を置いて、大人しく俺にボコられろ。」
男たちも空気が変わったのを感じたのか、少女を置いて戦闘態勢に入る。
「ガキが、俺たち四人相手に勝てると思ってんのか?おい、鈴を鳴らせ!」
リーダー格の男が言い放つと、魔封じの鈴を持っている男が鈴を鳴らす。
「はっ、これで貴様も終わりだ。身なり的にお貴族様のようだし、有効活用させてもらうぜぇ」
勝ち誇ったような笑みを浮かべる男。しかし、俺は一向に鈴の影響を受けない。
「何故だ...何故お前は鈴の力が効かないんだ!」
鈴を持った男が焦って聞いてきたから、俺は答えてあげる。どうせ潰すんだし、問題あるまい。
「俺の周りは既に俺のスキル『干渉』によって掌握済みだ。故にここは俺の支配下、俺の世界だ。そのアイテムの効果は、俺の領域に入った瞬間に効力を失っているのさ。」
「っな!?はっ、ハッタリだ!レアアイテムの効果を簡単に打ち消すスキルだと?そうか、お前もレアアイテムを使っているんだな?ハッハッハ、それが分かればあとは簡単だ。野郎ども、やれ!」
リーダー格の男が勘違いをして仲間と共に魔法を放ってきた。
「無駄だ。『
そう唱えると、敵の魔法が全て霧散した。
「き、貴様!いったい何をした!」
今度こそ彼らの表情が恐怖に変わる。
「なに、貴様らの魔法に宿っている魔力に干渉して破壊しただけさ。」
(ふっ、師匠の魔法はまだ干渉出来ないが、この程度の相手なら問題無しか。)
「さてと。ボコボコにするところを衛兵に見られても困るしな。そろそろ終わりにしようか。なぁお前たち、この世界は空気中に無限の魔力が漂ってるって話は知ってるか?」
「何を言ってやがる、常識じゃねぇか!」
「そうだ、それ故に人間は体内の魔力だけでなく空気中の魔力を使う方法を長年考えてきた。しかし、それは実現不可能だった。人間は空気中の魔力に干渉することは出来ないからな。だが、俺には『干渉』というスキルがある。これがどういうことか分かるかァ?」
「っな!まさか!?」
「『
俺の周りに魔法陣が四つ浮かび上がる。
「ありえない!魔法の同時発動など、『賢者』ですら二つが限界なんだぞ!それを四つ同時になんて...」
「落ち着けお前たち!やつの話術に騙されるな、なにか仕掛けがあるはずだ!それにやつはまだガキだ、どうせすぐに魔力切れになる!」
慌てる仲間にリーダー格の男が冷静に状況を見極める。だから俺は、勘違いをしている彼らに教えてあげる。
「クックック、実に滑稽だね。魔力切れだって?そうはならないよ。だって、俺は体内の魔力なんて一切使ってないからね。」
「ま、まさか...」
ここでようやく気づき焦るリーダー格の男。
「そうさ、空気中の魔力は無限。いくら使っても俺には影響ないのさ」
そう言って俺は四つだけだった魔法陣を十倍の四十個に増やす。
「空気中に漂ってる魔力は、普段の生活の中で自然と発生しているものなんだ。例えば物を焼く時なんかは火の魔力が。最初から属性がついているから
俺は右手を顔近くまで上げて、人差し指に火の魔力を集中させる。すると、最初は小さな火の玉だったが、どんどん周りの火の魔力を吸収していき、最終的に大きさは俺の顔と同じくらいだが、十メートル先の男たちにもはっきりと伝わるくらいの熱量を持つ火の塊になった。
ピィィィィ
遠くの方で笛の音が聞こえた。おそらく、そこで倒れている衛兵が帰ってこないため、何かが起きていると思った衛兵の詰所からだろう。俺はため息を吐き、火の塊を霧散させる。
「少し長話をし過ぎたね。ということで、じゃあ、くらえ。」
巻き込まれないように少女を俺の領域に入れて、空気中に浮かんでいた魔法を放った。
「俺もお前たちも同じ悪だが、お前たちは見るに堪えない邪悪だ。我が名、ルキヤ・メルギアの名において、改心するがいい。」
そう言って俺は少女を連れてその場を離脱する。騒ぎを聞きつけた衛兵が集まってきたからだ。別に奴らが俺について周りに語ろうが問題は無い。どうせ俺は社交界に出ていないから、誰も俺がやったなんて思うはずがないだろう。
▼
その現場に完全に興味を無くした俺は、少女を抱えてとある場所を目指す。改めて少女を見ると、薄汚れた銀色の髪に汚れた服。お世辞にも可愛いとは言えない同い年くらいの女の子。
俺がこの子を助けた理由は、ゲームに登場していたキャラだからだ。本来なら彼女はあの場で賊に攫われて奴隷商に売られていた。そして隣国へ移送中に魔の森付近を通り、たまたま通りかかったグラディウス師匠によって助けられ、今俺の目の前にある孤児院に預けられた。そして色々あってゲーム本編に登場してくる。
わざわざ俺が出向いたのは、万が一ゲーム内でグラディウス師匠が彼女を助けた日に俺の稽古があった場合、シナリオが完全に破綻するからだ。
だからこれは、既に破綻しかけているシナリオを
少しでも修正するため。グラディウスを師匠につけた俺の責任を果たすためだ。
孤児院の職員に事情を話し金銭を渡すと、快く引き取ってくれた。別に職員は悪い人では無い。多くの孤児を養っていくために必要なだけだ。
引き渡しを終え、立ち去ろうとする俺に少女が声をかけてくる。
「あ、あの!助けていただきありがとうございました!私の名前はマナと言います、あなたは!あっ...」
俺は彼女の質問に答えずに立ち去る。これで彼女との関係は終わりだ。馴れ合う必要も無い。なぜなら...
(次に会うときは敵になるだろうからなぁ)
___________
《作者コメント》
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