第10話 最強による最恐育成メゾット
『英傑』グラディウス、『賢者』マーリン。
この二人は、ゲーム内では最強クラスの人物だ。学生のときに学園に進行してきた魔族をたった二人で追い払い、卒業後すぐにグラディウスは近衛騎士に、マーリンは宮廷魔法士になった。そこでも突出した才能を見せ、瞬く間にトップの座に着いた、国内外からも敬われるほどの人物。今は若手にトップの座を譲り、魔の森と言われている魔獣大量出現地に夫婦で隠居しているはずだ。
ゲーム内で主人公がこの二人に出会うには、長期休暇中限定で出る、「魔の森で戦闘訓練」という項目を選べば、極低確率で出会える。
そこで、残りの休暇ターンを全て消費して稽古をつけてもらえる。その稽古で上がるステータス値は尋常じゃない。俺も二人に会うために長期休暇ターンは毎回魔の森に行っていたくらいだ。ゲームでは訓練内容が細かく描写されていなかったから、どんな訓練なのか、俺はとても楽しみだった。
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父上とメイが退出し、俺の部屋の中には俺たち三人が残った。
「改めまして、メルギア公爵家が次男、ルキヤ・メルギアです。グラディウス殿とマーリン殿のお噂は兼ね兼ね。」
「わしらは現役を引退した身。そこまでかしこまる必要はないぞ。」
「ええ、元軍のトップと言えども、貴殿の方が爵位は上ですので。」
確かに爵位で見るなら、俺が二人にかしこまる必要はないのだが、やはりそれは違うだろう。
「いいえ、確かに父上はお二人より爵位は上でしょうが、私はまだ何も成していませんので、長年この国を守り続けてきたお二人を敬うのは当然のことかと。」
「ほほう、この歳でなかなか達観しておるの。」
「ほんと、うちの娘も見習って欲しいくらいです。」
「それで、私の剣術、魔法の指南役になってくださるということでよろしいでしょうか」
「わしらは構わんよ。公爵殿には軍にいる時に世話になったからな。学園に入学するまでの四年間、週四日稽古をつけてやる。これからわしらを呼ぶときは師匠と呼ぶがいい。」
最強の二人が師匠になってくれるということに俺は思わず笑みがこぼれる。
「よろしくお願いします、師匠!私のことはルキヤとお呼びください!」
「うむ。さて、稽古の内容だが」
(あの尋常じゃないほどステータス値が上昇する稽古、いったいどんなものなんだ)
俺は内心ドキドキだった。
「わしらとの模擬戦じゃ。手っ取り早く強くなるには、実践が必要だ。わしらと戦えば、自ずと強くなるだろう。」
(...は?えっ!?基礎とかなし!?いきなり実践!?)
俺は動揺しながらマーリン師匠の方に顔を向けると
「全く、あんたって人は...あぁ、安心してちょうだい。」
(おぉ、さっすが賢者!頼りになるぜ!)
「ルキヤが魔法を出せるようになってから、戦ってあげるわよ。」
(っておいー!そのいきなり最強と戦わせようとするのやめてくれよ!えっ、もしかして俺の心折りに来てる?あんたたちは敵なのか?っていうかゲーム内でもこんなことしてたのか、それならあそこまで強くなるのも納得だけど、まだ素人の11歳にそんなことさせるかね普通。)
苦笑いしながら頭の中で愚痴りまくったあと、俺は諦めて告げる。
「...お手柔らかにお願いします。」
(俺、四年後まで生きてられるかな。)
そう思い天を仰ぐ。
その日から、地獄の日々が始まった...?
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