第9話 師匠



アイゼナと婚約した日から三日が経ち、毎日遊びに来る彼女は、すっかりこの家に馴染んでいた。今も俺の部屋でメイと一緒に遊んでいる。優しく面倒見のいいアイゼナは、メイにとって最高の義姉になったようだ。


仲良さそうに遊んでる二人を見ながら紅茶を飲んでいると、父上が部屋にやってきた。


「ルキヤ、魔法と剣術の指南役の候補を見つけてきたぞ。」


「さすが父上。相変わらず仕事が早いですね。早速教えてもらえますか?」


「ああ、剣術指南役が近衛騎士のアリフレット。魔法指南役が宮廷魔法士のナーザだ。」


ゴホッゴホッ!


(やっべむせた!いやいや、さすがにそれはダメだろ!なんたってその二人は主人公の指南役になるはずの人たちだぞ!?アイゼナの件は仕方ないにしてもさすがに戦闘方面で妥協はできないし却下だ!俺も強くならなければいけないが、主人公にも強くなってもらわねば困るし。)


「父上、大変申し訳ございませんが、その二人以外の方でお願い出来ませんか?」


「むっ、そうか...この二人でダメなら、あの方たちに頼んでみるしかないな。よし、俺は数日間家を空ける。必ず許可を取ってくるから待っていなさい。」


そう言って父上は出ていってしまった。


「えっ、ちょ、父上!?一体誰に...行っちまったな。」


「ルー君、あの二人私が推薦したんだけど、迷惑だったかな...」


気がつくと後ろにアイゼナがいた。ちなみにメイは奥の方で幸せそうに寝ている。


(そ、そんな悲しそうな顔するなって、罪悪感ハンパねぇよ!)


「そ、そんなことはないぞ!これは俺の事情というかなんというかその、つまりお前は悪くないんだ!」


必死に言い訳を述べると、アイゼナは「知ってるよ」と笑っていた。


(メインヒロインだけあって破壊力がやばいんだよ。心臓に悪いからやめてくれ...)


そして、その日から三日間父上は帰ってこなかった。





父上が出掛けてから今日で四日目。今日も今日とて、俺は甘えてくるメイを盛大に甘やかしていた。大きなぬいぐるみを抱えながら椅子に座ってお菓子を食べているメイを微笑ましそうに見ながらお気に入りの紅茶を飲んでいると、再び父上がやってきた。


「ルキヤ、今度こそお前にふさわしい指南役を連れてきたぞ。」


森の中にでも行っていたのだろうか、服に所々土がついている父上。


(森の中に住んでいて、現近衛騎士や宮廷魔法士よりも優秀な人...って!それってまさか!)


父上が「入ってくれ」と言うと、50代後半くらいの老夫婦が入ってきた。


(見間違えるわけがない、この人たちは)


「元近衛騎士団長のグラディウスと、元宮廷魔法士筆頭のマーリンだ。」


(ゲーム内最強の『英傑』と『賢者』じゃねぇか!!)


入ってくるなりメイのことを抱きしめた二人が俺に向かってサムズアップしてきた。


「どうだルキヤ、これならお前も満足だろう。」


やりきったと言わんばかりのドヤ顔をキメる父上。


「あ、あはは...これからよろしくお願いいたします...」



(大陸でも屈指の強者を指南役につけるとか親バカにもほどがあるだろぉ!!!)




___________

《作者コメント》

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