第3話 ルキヤ・メルギア
『New World Story』というゲームにおいて、メルギア公爵家というのは、ストーリーの舞台であるクロイツ王国の一貴族である。
ゲーム本編のルキヤは、実家であるメルギア公爵家が嫌いだった。なぜなら、彼らが『悪』であるから。
クロイツ王国の貴族は、王権派・貴族派・中立派の三つに分けられていた。爵位が高いメルギア公爵家が纏めている貴族派は、ほかの派閥や民から、王を失脚させるために裏で悪事を働いていると言われている。
そのメルギア公爵家の次男であるルキヤは、とても心優しい少年だった。ルキヤは当然悪である家族を嫌っていた。しかし、どれだけ冷たく接しても、家族愛だけは強い彼らは優しくて、そんな彼らに冷たくするのは間違いなのではないかと、心優しい彼に迷いが生じていた。
そして、そのまま迎えた学園入学の日、ルキヤは運命の出会いをした。
主人公 である『勇者』と。
迷いに押し潰されそうだったルキヤは、勇者という正義に迷いを打ち明けた。
それが一つ目のチュートリアルクエスト『ルキヤの苦悩』
無事クリアすると、チュートリアルガチャが引けて、そこの確定枠としてルキヤが出てくる仕様になっている。いわゆる初期キャラだ。その後一度戦闘になるのだが、ルキヤのステータスを見て誰もが驚いただろう。
その低さに。
レベルは一で、能力値は全て最低値。故に、その戦闘後に受け取れるログインボーナスや事前登録キャンペーンの報酬でもらったガチャ石で引いた、レアリティが高いヒロインなどがパーティー枠を埋めるので、全てのプレイヤーがルキヤを全く使うことがなく終わってしまうのだ。
御堂聖河だった頃の俺も、当然そうしていたのだが、ゲーム中盤に、何度戦っても倒せない敵が現れた。様々な編成で、様々な戦法で挑んでも攻略不可能な敵。攻略サイトを見ても、全てのプレイヤーがここで詰んでいるという。
あまりの鬼畜さに、辞めてく人が後を絶たない。俺も辞めようと思っていた。しかし、一つだけ気になったことがあった。
何度も読み直した、公式資料のキャラ説明。ルキヤ・メルギアの枠に、「昔、神童と呼ばれていた時期があった」と書かれていたことだ。
そこでようやく俺は、ルキヤを使っていないことを思い出した。一縷の望みに賭けて、俺はルキヤを育成することにした。
まぁ、そこは鬼畜ゲー。育成するには最初からやり直さないといけないのだが。
育成開始から数日後、レベルが30を超えた時、変化は起きた。
『覚醒』
その表示と共に、チートではないかと思うほど上がる能力値。
通常では考えられないだろう。最低レアリティ、最低ステータスのキャラが、実は最強のチートキャラだったなんて。
その後はもうヌルゲーだった。ルキヤは全クリするには必須のキャラだったのだ。
やっぱりクソゲーだと思う。ほんと製作者はいい性格してるよ。
話を戻そう。原作のルキヤは家族を嫌っていたが、俺はそうは思わない。どちらかと言われれば好きだ。
確かに黒い噂の通り、殺人や諜報などもしているが、それは全て国のためなのだ。それは他国の間者やスパイを捕え尋問をしたり、不穏分子を処理したりと、多岐にわたる。
派閥が対立しているからといって、メルギア公爵と国王の仲が悪いなんてことはない。それどころか、学生時代の同級生で親友でもあり、今でも裏ではしょっちゅう酒を酌み交わしている仲だ。
▼
「いつもすまないな、メルギアよ」
「なに、気にする事はない。学生の時に言っただろう、お前が王になったら全力で手を貸すと。我々貴族派が力をつけたから、危機感を感じた中立派の連中も王権派と手を取り合ったんだ。結果的に国はまとまった、大いに結構。」
「...本当にすまない。」
メルギア公爵家は悪である。しかし、国を纏めるのに必要な、国という個に対する『必要悪』である。
故に俺はこの家が好きだ。
最強の力を持った最高の悪の家系。俺が望んでいた最高の環境で、存分に悪役ムーブをかましてやる。この世界はゲームではなく現実だ。ゲームでは何度も死なせてしまった主人公を守るために
『
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《作者コメント》
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